青色申告初心者が会計処理を行う場合、しばしばつまずきがちとなるポイントがあります。今回は、従業員の給料や外注費の支払いで源泉徴収した場合と、所得税などの税金や社会保険料を支払った場合の処理について見ていきましょう。※本記事は小林敬幸氏の著書『改訂2版 3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

従業員への給与や外注費…支払い・源泉徴収した場合

◆源泉徴収が必要な場合・不必要な場合

アルバイトや従業員に対する給与、デザイン料や講演料といった外注費、税理士や司法書士などに報酬を支払う際には、一部の金額を「源泉所得税」として預かり、それを納付する必要があります。

なお外注費や報酬に対して源泉徴収が必要になるのは、アルバイトや従業員を雇用して源泉徴収を行っている場合に限ります。従業員がおらず給与の支払いがない場合には、これらの外注費や報酬に対する源泉徴収は不要です。

入力方法は、それぞれ次のとおりです。

①支払時の入力処理

現金出納帳または預金出納帳を利用して、2段階で入力します。

②納付時の処理

現金出納帳または預金出納帳で入力します。

実際の入力方法は、下記の図表1~2の例を参考にしてください。

◆従業員への給与や外注費を払った場合の源泉所得税の入力方法

STEP 1

従業員にアルバイト代を15万円(源泉所得税2,980円を差し引き、14万7,020円を振り込み)、税理士に報酬を2万2,000円(源泉所得税2,042円を差し引き、1万9,958円分)を振り込みで支払った場合。

①預金出納帳の入力

通帳を入力する際、いったん支払額を「給料手当」「支払手数料」で入力します(図表1上)。

②預金出納帳の訂正

給料手当と支払手数料を訂正し、総額に置き換え、源泉所得税は「預り金」として、下記のように入力します。入力後、預金出納帳の残高が変わっていないことを確認します(図表1下)。

STEP 2

7月分の源泉所得税5,022円(2,980円+2,042円)を納付した場合は、預金出納帳を開き、相手勘定科目「預り金」として、図表2のように入力します。

源泉徴収税額の計算方法

 ★源泉徴収税額表の区分 

図表3を参照。

 ★従業員へ給与を支払っている例 

アルバイトに対し、毎月15万円の給与を支払っているものとします(社会保険料0円、扶養親族なし)。その際、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出してもらいます。

この例では、下記図表4の「149,000円~151,000円」の行に該当するので、甲欄のうち、扶養親族0人の欄の「2,980円」が、源泉徴収すべき税額になります。

所得税などの「税金」「社会保険料」を支払った場合の処理

税金には「必要経費にできるもの」と「できないもの」がある

個人事業者が支払う税金には、必要経費になるものとならないものがあり、それぞれ処理が違ってくるので注意が必要です。また社会保険料については、必要経費とならないため、事業用の口座などから支払った場合には必ず「事業主貸」勘定へ振り替える処理をしてください。

具体的な税金については、次のとおりです。

①必要経費となる税金

「事業税」「消費税」、事業に関係する「印紙税」、事業に使っている固定資産の「固定資産税」「自動車税」「軽自動車税」「環境性能割(旧自動車取得税)」などが必要経費として認められています。

これらの税金を支払った際には、預金出納帳・現金出納帳で「租税公課」勘定で処理します。

また、自宅兼用事務所の固定資産税などを個人の預金で支払った場合には、仕訳日記帳を使い、左側「租税公課」、右側「事業主借」で入力します。

②必要経費とならない税金

所得税」と「住民税」および「延滞税」などについては、必要経費になりません。個人の預金などから支払った場合なら処理は不要ですが、事業用の預金などから支払った場合には、「事業とは関係ない事業主個人の負担すべき税金を立て替えた」と考え、事業主勘定として入力する必要があります。

また、「国民健康保険料」や「国民年金」などの社会保険料も所得税や住民税と同様、必要経費にはなりません。そのため、個人の口座から支払った場合には特に処理は必要ありませんが、事業用の口座から支払った場合には、事業主勘定へ振り替える入力処理をしてください。

なお、社会保険料は必要経費にはなりませんが、確定申告の際「社会保険料控除」として所得から控除されます。

所得税社会保険料を支払ったときの入力方法

 ★必要経費となる税金の入力 

事業税2万円を預金から支払った場合、図表5のように入力します。

自宅兼用事務所の固定資産税を10万円、個人の預金口座から支払った場合(※事業供用割合50%)、図表6のように入力します。

 ★必要経費とならない税金の入力 

所得税を20万円、事業用の預金口座から支払った場合、図表7のように入力します。

 ★社会保険料の入力 

国民健康保険料3万円を事業用の預金口座から支払った場合、図表8のように入力します。

小林 敬幸 税理士、ファイナンシャル・プランナー