神戸市による新港突堤西地区(第2突堤)再開発事業の目玉、神戸アリーナプロジェクトの記者会見が2月8日(木)に神戸市内でおこなわれ、2025年4月に開業が予定されているアリーナの名称が「GLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)」に決定したことが発表された。

GLION ARENA KOBE 正面イメージ

GLION ARENA KOBE 正面イメージ

270度海に囲まれた日本初の「水辺のアリーナ」というロケーション性に加え、関西最大級の1万人を収容できる会場として、日本国内のみならず世界的なエンターテインメントシーンの発展に寄与する同アリーナへの期待はきわめて高い。また、神戸アリーナプロジェクトを推進するOne Bright KOBEの渋谷順代表取締役社長によると、GLION ARENA KOBEは客席にしっかり段差を設けるなどステージとの距離が身近に感じられる設計となることから、「かなり臨場感がある」という。つまりイベント鑑賞の面において、「観客ファースト」な内部構造になると予想される。

One Bright KOBE・渋谷順代表取締役社長(右)、GLION GROUP・菊地秀武代表取締役社長(左)

One Bright KOBE・渋谷順代表取締役社長(右)、GLION GROUP・菊地秀武代表取締役社長(左)

さらに8日に開かれた記者会見では、同アリーナの「三つの熱」を感じることができた。

GLION ARENA KOBE  夜景イメージ

GLION ARENA KOBE  夜景イメージ

一つは、街の熱。GLION ARENA KOBEが開業する2025年は、未曾有の被害となった1995年阪神・淡路大震災からちょうど30年目。神戸はその間、街と人々の心を立て直し続けてきた。同アリーナがエンターテインメントなどを通じてもたらす盛り上がりは、そういった長年の復興の成果になるに違いない。また、アリーナ周辺の港湾緑地エリアでも再開発が進められ、カフェをはじめとする収益施設があり、神戸の海と六甲山系の山並みが一望できる緑の丘のような建築も計画されていることから、観光面でも365日にぎわう場所へと生まれ変わる。開業の際は、三宮の各路線駅からフラワーロードを通って同所へ辿り着くまで人通りが絶えず、街全体が活気づくことになるだろう。

海から臨むパークエリアイメージ

海から臨むパークエリアイメージ

二つ目は企業の熱。GLION ARENA KOBEのネーミングライツを獲得したGLION GROUPは、神戸市を本拠地に自動車正規ディーラー事業を中心に、飲食、アパレル、食品製造などを幅広く展開。もともと丹波篠山の小さな整備工場からスタートし、2000年代神戸市へ拠点を移して成長を遂げてきたまさに「叩き上げ」として、兵庫県内、そして神戸市で存在感を放ってきた。一方でその実績は、企業努力とともに市や住民の協力があってのものだろう。今回、GLION GROUPは運営会社であるOne Bright KOBEの神戸アリーナプロジェクトにおける、Smartest Arena構想に賛同し神戸の地域活性化を目指す。GLIONの菊地秀武代表取締役社長が口にした「事業を通じて地域貢献、神戸へ恩返ししたい。地元のために力を注いでいきたい」というビジネス的な意味合いをこえたものを感じさせた。

神戸ストークスの道原紀晃選手(右)、中西良太選手(左)

神戸ストークスの道原紀晃選手(右)、中西良太選手(左)

そして最後は、スポーツの熱だ。GLION ARENA KOBEは、バスケットボールのプロリーグであるB.LEAGUEに所属(B2西地区)し、今季より神戸へ移転してきた神戸ストークスの拠点となる。神戸は過去にも、「がんばろうKOBE」を合言葉に街が一体となって1995年リーグ優勝と日本一を後押ししたプロ野球チームのオリックス・ブルーウェーブ(当時)をはじめ 、サッカークラブのヴィッセル神戸も2023明治安田生命J1リーグで優勝を果たすなどしている。フランチャイズチームのプレーが街全体を興奮と感動で包みこんできた。

神戸ストークスは、神戸のスポーツシーンの「新たな顔」として熱い視線が注がれている。記者会見に出席した神戸出身の道原紀晃選手と中西良太選手も、「このアリーナとともに大きなクラブになっていきたい」(道原)、「神戸ストークスユニホームを着て、アリーナでプレーしたいという選手が増えてくるような、憧れの場所にしていきたい」(中西)と意気込みを語った。

建設中のGLION ARENA KOBE

建設中のGLION ARENA KOBE

GLION ARENA KOBEの建設状況は2月8日時点で、その骨格がはっきり分かるくらいになってきた。記者会見後の工事現場の内覧では、「30パーセント」の進捗でありながらその巨大さに圧倒されるものがあった。工事も順調に進んでいるそうだ。「Regeneration (再生)」をテーマに、「Open(広場性)」「View(眺望性)」「Green(緑化)」「Symbolic(モニュメント性)」の4つの軸を念頭に、神戸ならではの海と山が身近に感じられるランドマークエリアとなるよう設計される。建築物の屋根上は開放感のある観覧席にもなり、建物内には飲食店や共用スペースを併設。アリーナのみでなく屋外においてもイベント開催を予定。とにかく完成が待ち遠しく思えた。

取材・文・撮影=田辺ユウキ