西島秀俊主演の日曜劇場さよならエストロ~父と私のアパッシオナート~」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)の第6話「さよならコンサート」が2月18日に放送された。同作は、“ある事件”で家族も音楽も失った父・夏目俊平(西島)と、そんな父を拒絶し音楽を嫌う娘・響(芦田愛菜)が、地方オーケストラを通して失った情熱を取り戻し、親子の絆と人生を再生させていく完全オリジナルのヒューマンドラマ。第6話では、ホールの閉館が早まるも、最後にそこでもう一度コンサートを行うことを計画する。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】バイオリンの腕がグングン上達している天音(當真あみ)の

■愛と魂の物語を彩る個性豊かなキャスト陣

西島、芦田の他、芦田演じる響の同僚のポジティブ思考で明るいトランペッター・森大輝役に宮沢氷魚、魔性のフルート奏者・倉科瑠李役に新木優子クラシックに恋する高校生・谷崎天音役に當真あみ、クラシックを諦めたチェリスト・羽野蓮役に佐藤緋美、プレッシャーに弱いティンパニー奏者・内村菜々役に久間田琳加を配役。

また、俊平の息子・海を大西利空、響と海の母親・志帆を石田ゆり子、晴見市の市長・白石一生を淵上泰史、コンサートマスター・近藤益夫を津田寛治、うたカフェの店主・小村二朗を西田敏行、俊平の元マネジャーで物語の鍵を握る男・鏑木晃一を満島真之介、市民オーケストラの団長・古谷悟史を玉山鉄二が演じている。

脚本は、「凪のお暇」(2019年)、「妻、小学生になる。」(2022年)などを手掛けた大島里美氏。劇伴は「テセウスの船」(2020年)、「日本沈没―希望のひと―」(2021年)をはじめ、多くの作品を手掛けている菅野祐悟氏が担当。

さらに、東京音楽大学教授であり、日本クラシック界をけん引している世界的指揮者の広上淳一氏が同作のオーケストラを全面監修。また、オーケストラの演奏部分は東京音楽大学が全面バックアップしている。

■ホールの閉館は3月末の予定だったが、1カ月繰り上げに

助成金が打ち切られたことで3月いっぱいで廃団することが決まっている晴見フィルハーモニー。練習場所として使用しているあおぞら文化ホールも3月末で閉館する予定となっていたが、1カ月繰り上がり2月29日で閉館されることを知らされた。

練習で団員が集まった時に、練習を見学に来ていた小村が「せめてさよならコンサートくらいできないものですかね」と提案。新規のイベント申請は受け付けてもらえないという状況だが、あおぞら文化ホール前で行われる“梅まつり”のフライヤーを見せて「こういったイベントを乗っ取っちゃったらいかがですか?」と具体案も伝えた。

団員も乗り気で、その計画が始動するが、市長に目を付けられているので“晴見フィル”の名前で出演申請をすると許可がおりないことは明白。そこで“HARU P”という名前でこっそり申請する。

響が申請リストの中の「HARU P」を不審がるが、大輝が丸め込んで、なんとか登録することに成功した。

■演目は第1回定期演奏会と同じビゼー作曲の「カルメン」組曲

さよならコンサート”の演目はジョルジュ・ビゼー作曲の「カルメン」組曲。俊平は、あおぞら文化ホールができた時に行った第1回定期演奏会での記念すべき演目が「カルメン」組曲だったと聞き、さらにその時からコンマスの近藤が晴見フィルに参加していたことを知り、演目を決定。

近藤は妻と娘をさよならコンサートに誘うが、「無理」「知らんし」と即答。「最後なんだよ。2人とも10年以上来てないじゃん。最後ぐらいパパの演奏聴いてくれてもいいじゃんよ」と笑顔と作って訴えるが、ノーリアクション…。

その後、ホールのステージにやってきた近藤は、誰もいないと思って指揮台に登るが、俊平に声をかけられ慌てて下りた。「学生の時の夢が指揮者だったんですよ。あの頃からレコードかけて指揮者のまね事をやってね。それを今もやってて」と、俊平に思い出話を語り、指揮者が大変なことはよく分かっているとも伝えた。

一方、恋多き女ということで“カルメン”と呼ばれる瑠季にとっても、あおぞら文化ホールは思い出のある場所。6歳の頃に両親が離婚し、それぞれ再婚しているが、父親と母親が年に一度、あおぞら文化ホールで行われる発表会の時だけ集まって“家族”に戻れた。その日のために瑠季はフルートを頑張っていたのだった。「生まれた時からあるホールだから、いざ無くなってしまうと思うと実家が無くなってしまうような気分」と、本音を俊平に漏らした。

コンサート当日、俊平は瑠季に「あなたの音色からイメージされる瑠季さんは、優しくてとても繊細で傷つきやすい人です。だからこそ、あなたのフルートは美しい」と伝え、「曲を変えましょう。もっと瑠季さんに似合う曲がありますから」と言って楽譜を手渡した。「どんな役を演じる必要はありません。あなたはそのままでとてもすてきな人です」と。

■最後のコンサートで、俊平が粋な計らいを見せた

その俊平の言葉通り、曲目を変更して行われたコンサートのオープニングは、瑠季の美しく繊細なフルートの音色が響き、ホール外の出店などにいた人たちもその音色に誘われるようにして会場に入っていった。瑠季の父親と母親も客席から大きな拍手を送っていた。

その後、演奏する中で俊平は「どうでしょう?この続きを指揮してみたい方?」と客席から指揮をやってみたい人を募り、何人かにタクトを振らせた。

そして最後に、「このホールと晴見フィルを40年間愛してきたあなたが振ってください」と言って近藤にタクトを渡し、「指揮者に必要なのは何だと思いますか?アパッシオナート、音楽への情熱。心に溜め込んできた情熱を、この瞬間、存分に爆発させてください」と背中を押した。

近藤の夢だった“指揮者”。まさに情熱を込めてタクトを振り、溜まっていたものを爆発させた。妻と娘は客席にいなかったが、満員の観客からの温かい拍手が鳴り響き、スタンディングオベーションさよならコンサートは感動のフィナレーを迎えた。

廃団まであと1カ月。さよならコンサートによって一つ心の区切りはついたが、残りの期間で何ができるのか、何をやってくれるのか楽しみだ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

ホールの閉館が1カ月早まったが、さよならコンサートを行うことを計画/(C)TBS