「ミニオンズ」シリーズのイルミネーション製作ミュージカル映画『SING/シング』が、今夜『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にお目見えする。倒産寸前の劇場を立て直すため、コアラの支配人バスター・ムーンが歌唱コンクールを企画するも、集まったのはそれぞれ事情を抱えたクセモノだらけ。劇場とバスター・ムーン、そして出場者たちはピンチを脱することができるのか!? 個性豊かなキャラクターの声を担当するのは、本国アメリカ、日本とも多彩で豪華な面々。キャラクターごとにボイスキャストを徹底比較してみよう。

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バスター・ムーン役 マシュー・マコノヒー/内村光良

 主人公のバスター・ムーンは、エンターテイメントを愛するムーン劇場のコアラの支配人。取り立てが来ても、失敗続きでも、とにかくポジティブ100%!

 歌声をたっぷり聞かせるシーンはないものの、ボイスキャストを務めるのは、それぞれ音楽に繋がりが深いマシュー・マコノヒーと内村光良オスカー俳優のマシューは、音楽の都テキサス州オースティンの出身。ロマコメからシリアスな作品まで幅広く出演しており、マイクを手にする役柄も多数。2021年のクリスマスにはトーク番組『ザ・トゥナイト・ショー』でミュージカル風コントを披露した。また2022年には、母校テキサス大学オースティン校の多目的アリーナ「ムーディ・センター」のオープニングに際し、楽曲「Bless The Mood」を発表している。

 一方、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」で知られる内村は、MCや俳優としても活躍。『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ系)で結成した3人組音楽ユニット「ポケットビスケッツ」で、昨年の『紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に出演を果たした。

ロジータリース・ウィザースプーン坂本真綾

 25匹の子どもたちの世話に追われるブタのママ、ロジータ。有能でクリエイティブ、革新的でもあるけど、とにかく多忙! そしてダンスが苦手。劇中披露した楽曲は、「Firework」(ケイティ・ペリー)「Venus」(ショッキング・ブルー)「Shake It Off」(テイラー・スウィフト)の3曲だ。

 彼女を演じたのは、ジャズで有名なルイジアナ州ニューオーリンズ出身のリース・ウィザースプーンと、歌手、声優、女優、ラジオパーソナリティとして活躍する坂本真綾リースは、実在の歌手ジューン・カーターを演じた映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)で歌声を披露。観客を前にしたコンサートシーンにも自ら挑み、アカデミー主演女優賞を獲得した。他の出演作でも度々歌声を披露している。

 一方の坂本は、2014年にミュージカルダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』に主演したほか、架空のロックバンドの興亡を描いた海外ドラマデイジージョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』でも、主人公の声を担当している。リースは女優らしく、フレージングもポップに情感たっぷり歌い上げ、坂本は英語で透明感のある伸びやかな声を披露。

ヤマアラシの少女”アッシュは、日米歌うま女優が声優を務めた

マイク役 セス・マクファーレン/山寺宏一

 ねずみマイクは、キャラクター中唯一プロのミュージシャン。実力やタフさは折り紙付きであるものの高慢で、性格にかなりの難あり。劇中では、「Pennies from Heaven」(ルイ・プリマ)「Let's Face the Music and Dance」「My Way」(フランク・シナトラ)というシブい3曲を歌い上げる。

 声を担当したのは、どちらも多才で知られるセス・マクファーレンと山寺宏一。セスはクリエイターを務めたアニメ『ファミリー・ガイ』でテーマ曲を歌い、エミー賞作曲・作詞賞を獲得。また、ホストを務めた2013年のアカデミー賞授賞式では、コーラスを従えバリトンボイスを披露した(曲のテーマは“おっぱい“)ほか、アルバムも多数リリース。

 片や、声優、歌手、司会者…とマルチに活躍する山寺は、長編アニメーション版『美女と野獣』の野獣、『リトル・マーメイド』のセバスチャン、『アラジン』では実写版・アニメ版ともにジーニーを担当し、それぞれの作品で歌声も披露している。変幻自在な声色で知られる彼は、セリフ回しは軽妙に、歌では大人の余裕を漂わせ、名曲を日本語でたっぷり歌い上げる。対して、低音ボイスに色気といやらしさを滲ませつつ、ダンディに歌うのがセス。どちらのマイクの歌声も、しっとり心に沁みる!

アッシュスカーレットヨハンソン/長澤まさみ

 ツンツンヘアと、圧倒的な声量が魅力のパンクロッカーヤマアラシの少女アッシュ。最低最悪な彼氏にフラれて悲嘆にくれるも、これをバネにオリジナル曲を制作、アンプのコードを抜かれても、観客の手拍子を誘って歌い出す見上げた根性の持ち主。「Call Me Maybe」(カーリー・レイ・ジェプセン)「I Don't Wanna」「Set It All Free」(映画オリジナル楽曲)の3曲をロックに歌う。

 英語版の声優を務めたスカーレットは、マーベル映画『ブラックウィドウ』で知られるが、『ジャングル・ブック』や『犬が島』などで声優としても活躍。AI型OSの声を演じた『her/世界でひとつの彼女』では、声の出演にも関わらず放送映画批評家協会賞等に候補入りするなど高い評価を受けた。ミュージカル出演はこれが初だが、2008年5月にトム・ウェイツの楽曲をカバーしたアルバム『レイ・マイ・ヘッド』で歌手デビューを果たした実力派。他の作品でも歌声を披露することが多い。

 日本語版の長澤は、主演ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレフジテレビ系)で歌声を披露したのが記憶に新しい。『セーラー服と機関銃』(TBS系)でも主題歌を歌い、役名の星泉名義でCDデビュー。2017年にはミュージカル『キャバレー』でサリー・ボウルズを演じたほか、2020年にもミュージカル『フリムンシスターズ』に出演しており、ミュージカル経験も豊富。本作でも、歌詞を日本語でセリフのように歌い上げるので感情移入しやすい。スカーレットハスキーボイスを響かせて、流れるようなフレージングで歌うので、一緒にノリたくなる。

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ジョニー役 タロン・エガートン/大橋卓弥

 ゴリラのギャングの御曹司ジョニー。父からは当然跡取りとなることを期待され、家業を手伝っているが、本当は音楽を愛する繊細な心の持ち主だ。劇中披露した楽曲は、「The Way I Feel Inside」(ザ・ゾンビーズ)「Stay With Me」(サム・スミス)「All Of Me」(ジョン・レジェンド)「I'm Still Standing」(エルトン・ジョン)。

 オリジナルのボイスキャスト、映画『キングズマン』で知られるタロン・エガートンは、伝記映画『ロケットマン』で吹き替えなしでエルトン・ジョンを演じきり、ゴールデン・グローブ賞を受賞、グラミー賞にもノミネートされた実力派。Netflixの『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』や『ダーククリスタル: エイジ・オブ・レジスタンス』、『ムーミン谷のなかまたち』などアニメシリーズで吹き替えも行っている。

 日本版ボイスキャストは、本作が声優初挑戦、音楽ユニット「スキマスイッチ」のボーカリスト大橋卓弥東日本大震災が起きた際はYouTubeにて代表曲「奏(かなで)」の動画を公開、閉塞感漂うコロナ禍には希望を込めた「あけたら」を発表するなど、メロディに思いを乗せてきた大橋は本作で、サム・スミスやエルトンが込めたメッセージを日本語の軽やかな節回しで歌う。クライマックスで歌う「I'm Still Standing」では、字幕と吹き替えのニュアンスの違いもあってか、大橋は抱えきれない思いを爆発させるように、タロンは喜びを抑えきれない様子で歌い上げる。

ミーナ役 トリー・ケリー/MISIA

 ゾウの少女、ミーナは、素質も意欲もあるのに、極度の恥ずかしがり屋で、なかなか人前に出られないという役どころ。劇中では、「Hallelujah」(レナードコーエン)「Don't You Worry 'bout a Thing」(スティーヴィー・ワンダー)で歌声を響かせる。

 オリジナルの声を務めたのは、歌姫トリー・ケリー。2015年にアルバムデビューし、第58回グラミー賞新人賞にノミネート。2018年のアルバム『Hiding Place』で、グラミー賞最優秀ゴスペル・アルバムと最優秀ゴスペル・パフォーマンス/ソングを獲得している実力派。声の出演はこれが初挑戦だ。

 対して日本からも国民的歌姫、昨年デビュー25周年を迎えたMISIAミーナの声を担当。演技の仕事のイメージのない彼女だが、16歳の時に『天使にラヴソングを2』でローリン・ヒルの歌声に魅せられたのがルーツだというので、本作出演は必然といえよう。甘く軽やかな歌声のトリーに対し、MISIAソウルフルなハイトーン・ボイスを響かせる。同じキャラクターなのに、歌声は全く別ものなので、両方聞いてみるのもおススメ。(文:寺井多恵)

 アニメ映画『SING/シング』は、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて2月23日21時放送。

映画『SING/シング』バスター・ムーン役の(上段左から)マシュー・マコノヒー(2021年撮影)/内村光良(2019年撮影)、アッシュ役の(下段左から)スカーレット・ヨハンソン/長澤まさみ (C)AFLO/クランクイン!