コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ネルノダイスキさんが描く『益虫の蜘蛛を助けたら超益虫になった話』をピックアップ。

【漫画】蜘蛛は自分が益虫だからずっと殺さないでいてくれたと思っていた…主人公の反応に「心が温まりました」の声

2023年12月23日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、8.3万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、ネルノダイスキさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

■家で発見した益虫の蜘蛛を殺さなかったら、“超益虫”に進化した

家の中で1匹の蜘蛛を見つけた。遊びに来ていた友人が「殺さなくていいの?」と聞いてきたが、“益虫だから”とそのままにしていた。益虫とは、害虫を食べたり植物の受粉を助けたり、いわゆる人間の役に立つ虫のことだ。家の中で蜘蛛は、ゴキブリやハエ、蚊、ダニなどを食べて減らしてくれる。

半年後――。

殺さずにいた蜘蛛は、益虫どころか“超益虫”に進化して現在も家にいる。主人公に向かって「もう少しで朝ごはんできますね」と話しかけている。蜘蛛はいつの間にか身体が大きくなり、言葉を話し、主人公の代わりに家事をこなしていたのだ。

蜘蛛が超益虫になって喜んでいる主人公だったが、大家さんは聞きなれない足音を感じて「許可もなくペットを飼い始めたのではないか」と疑い始めていた。大家が部屋に入って確かめに来たときには、蜘蛛は押し入れに隠れて凌いだ。

ある日、とあることがきっかけで蜘蛛が倒れてしまう。主人公は心配し、すぐに動物病院に連れていって入院させたが、すぐに帰ってきて忙しそうに家事をこなし始めた。蜘蛛は、主人公にとって自分が役に立つ存在だから殺さないでいてくれたと思っていた。そのため、倒れていたらここにはいられないと考え、焦って無理をしていたのだ。主人公は「バカなことを言うな」と言い、蜘蛛を布団で寝かせてしっかり休ませた。

蜘蛛の体調が回復し、また大家が家を訪ねてくるタイミングがあった。急いで隠れようとする蜘蛛。しかし、主人公はそれを止めた。そして一緒に玄関で大家を迎えたのだ。「やっぱりペットを飼っていた!」大きな声で責める大家。しかし、主人公はそれを否定して…

「こいつは俺の友達だ」

堂々とそう伝えたのだった。

投稿には、「最後感動しました」「涙がこみ上げてくる」などの反響コメントが多く寄せられ、物語に心を温める読者が続出した。

■作者・ネルノダイスキさん「ラストシーンの落とし方を強めに意識して考えて描いた」

――『益虫の蜘蛛を助けたら超益虫になった話』を描こうと思ったきっかけや理由などをお教えください。

詳細なきっかけは忘れましたが、描くよりずっと前から益虫とか害虫とか感情害虫、など名付けられた存在の昆虫になんとなく興味を持って見ていました。

虫という存在に対して人にとって「益」があるから益虫と呼ばれていることに何か憤りというか、自分がそう呼ばれる存在になったらどうなんだろうとか色々考えていたのが起点にはなっていたと思います。

描いた理由というのはそこまで何か強く訴える目的があったというよりは、前述した考えと「益虫が超益虫になったらどうなるの?」という飛躍したアイデアが気に入ってその益虫と暮らしたらどんなことになるのか色々考えていて描きたくなったので描いたという感じです。

――初めて蜘蛛を発見してから“超益虫”になるまでの途中経過が気になります。蜘蛛が少しずつ成長する中で、主人公は不気味に感じたり怖いと思うことはなかったのでしょうか?

途中経過も描こうか考えたりしましたが漫画の見せ方としてはいきなり大きくなってる方が驚きがあって面白いと思い省略しました。

そもそも僕の描く漫画は絵本の世界観に近く「動物も植物もモノも意思を持って話したりすることもある」というような感覚で描かれているものなので、主人公もある時突然蜘蛛が話すようになっても最初は「お前、話せたの!?」と驚くものの割とそのあとは変化も含めて驚きつつも普通に受け入れたりする感じだと思います。

――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフを理由と共にお教えください。

どのシーンもとても好きなので難しいのですがしいてあげるなら最後のページの「こいつは俺の友達だ」というシーンと言葉は気に入っています。

普段描いている漫画よりもラストシーンの落とし方を強めに意識して考えて描いたものなので。あと、蜘蛛と大家さんの顔も見せない演出も自分では気に入っています。

終始まんまるの目で表情のない顔の蜘蛛の顔が見えないことで色々想像を掻き立てられるものになったような気がします。

――X(旧Twitter)投稿には、多くの“いいね”やコメントが寄せられていました。今回の反響をどのように受け止めていらっしゃいますか。

私の漫画はほとんどが主人公が人間ではないし、今回出てくるキャラが表情もない蜘蛛という世間一般的にはちょっと気持ち悪がられたりしている存在でもある(虫というだけで苦手という人もいるし)なかで、読む人を相当選ぶものだと思っていました。

そんな変な世界観の漫画にも関わらず想像してたより遥かに多くの人が読んでくれて好意的な反応をくれたことには「こういう漫画も読んで楽しんでもらえるんだ」というすごく希望のようなものと驚きを感じました。

それと同時に漫画を読む人たちの受け口の広さもすごく感じました。

――今後の展望・目標をお教えください。

漫画も一枚の絵ももっとたくさん描きたいのですが、何かを見聞きして考えるという時間が最近あまりないなと感じているのでそれをもっと増やそうと思っています。

とりあえず今年から読書メーターをつけ始めて記録と感想をつけ始めてみましたのでそれをちゃんと続けていこうと思います。

――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。

この度は益虫の漫画を読んでいただきありがとうございます。これからもこんな感じのなんか奇妙な味わいのある漫画や絵を描いていきます。

現在新しい漫画や本や絵を準備していますのでまた読んでいただけたら嬉しいです。

※記事で紹介している作品名『益虫の蜘蛛を助けたら超益虫になった話』は、X(旧Twitter)投稿用のタイトルです。短編集『ひょんなこと』に収録されている正式な作品名は『夏の騒動』になります。

蜘蛛を殺さないでいたら、家事をしてくれる超益虫になった/(C)ネルノダイスキ/アタシ社