レオン』(94)から早30年、リュック・ベッソンが実際の事件から着想を得て脚本、監督を務めたバイオレンスアクション映画『DOGMAN ドッグマン』が3月8日(金)より公開となる。本作では孤独な主人公“ドッグマン”を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの怪演はもとより、彼の家族である犬たちの名演技にも大いに心を揺さぶられる(犬は無事なのでご安心を)。そこで適材適所にて絶妙な名脇役として登場する犬たちの魅力を、efrinman、じゅん、ヨシモフ郎ら人気イラストレーターたちによる描き下ろしのわんこイラストと共にご紹介!

【写真を見る】可愛すぎ…人気おいぬイラストレーター、じゅんによるジャック・ラッセル・テリアの描きおろし

“ドッグマン”と呼ばれる主人公のダグラスは、犬小屋で育てられ、その後壮絶な人生を歩んできた。彼は犬たちの愛に何度も助けられつつ、生きていくために犬たちの手を借り、犯罪にも手を染めていた。主演のジョーンズは、『ゲット・アウト』(17)や『スリー・ビルボード(17)など話題作に出演してきた若手演技派俳優で、今作では愛を渇望する孤独なダークヒーローになりきった。第80回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門で上映された今作は「リュック・ベッソン監督、完全復活!」と呼び声も高く、往年のファンからも大きな期待が向けられている。

■愛嬌たっぷり!ジャックラッセル・テリアの“ミッキー

最初にご紹介するのは、ジャックラッセル・テリアのミッキーキツネ狩りを得意とする狩猟犬として作出された犬種で、小さい身体と活発で賢い性格が特徴的だ。

飼い主の命令に忠実な“ワンマンズ・ドッグ”としても有名。小回りがきく小型犬なので、主人であるダグラスにとっては小さいながらも実に頼りになる相棒的な存在である。積極的に場の安全を確認する役を務めるミッキーの健気さには胸がキュンキュンするし、庇護欲をかきたてられそう。

劇中では犬たちが、ダグラスのケーキ作りをサポートするシーンが最高だ。犬たちは、ダグラスから小麦粉や無塩バター、卵などの材料をリクエストされると、それぞれに言われた食材をピックアップし、ちゃんとご主人のもとへと運んでくる。最後に砂糖を持ってくるのがミッキーだが、うれしそうにスキンシップをするシーンにもほっこりする。

■律儀で凛々しいベルジアン・シェパードドッグ・マリノアの“ポリー”

敵にダメージを与える特攻隊長として登場するベルジアン・シェパードドッグ・マリノアのポリー。マズル(口から鼻先)が黒いのが特徴的なこの犬種はベルギーで誕生した牧羊犬で、とても賢いだけに飼い主のコントロール力も必要とされる。活発で運動能力が高く、与えられた任務に従うことに喜びを感じる犬なので、警察・警備犬や麻薬探知犬としてもおなじみだ。

凛とした立ち姿がとてもクールで、ダグラスからも「律儀」だと形容される忠誠心にあふれた大型犬だ。ポリーが悪の親玉に“痛すぎる”一撃を与えるシーンはコミカルかつ痛快で、観ていて思わずガッツポーズをしてしまうほど。また、ダグラスにとっての積年の恨みを代わって晴らしてくれたポリー率いる犬チームの名場面もお楽しみに。

■機敏な動きでドッグマンをサポートするボーダーテリアの“モビー”

見た目がキュートな小型犬ながらも、その機動力を生かし、ダグラスの手となり足となり素早く彼をサポートするクレバーなボーダーテリアのモビー。世界最古のテリア種で、友好的かつ穏やかな面と、警戒心が強く攻撃的な面を兼ね備えている。命懸けで闘うことを惜しまないたくましい性格なので、いざという時にとても頼りになる存在だ。

ダグラス少年時代には、命の危険にさらされたご主人の大ピンチを、超ファインプレーで救うのがかなり胸アツだ。

■“ドアマン”としてどっしりと鎮座するドーベルマン

ダグラスと犬たちが住む廃校の廊下で、冷静な“ドアマン”として随時、状況をダグラスに伝達する役割を果たしているドーベルマンドイツで誕生した護衛犬で、光沢のある引き締まった体が特徴的。侵入者への警戒心と防衛意識が強いので、門番的なポジションにはぴったりだ。とはいえ、屈強なイメージとは裏腹に友好的で穏やかな性格も持ち合わせているので、家庭犬としても人気が高い。

劇中では、人間顔負けの悲壮感や哀愁が漂う表情を見せている演技派犬で、個人的には“助演賞”をあげたい。また、鑑賞後に深い余韻をうながす存在でもある。

スレンダーなボディならではの見せ場があるエレガントなサルーキ

風に揺れる長くてエレガントな被毛と、スレンダーなボディラインのサルーキ。サルーキは古代から人々に愛された犬種で、狩りのお供を務めることも多いせいか、飼い主には忠誠心が強くて従順である。その反面、見知らぬ相手には警戒心が働いて、感情をあまり表に出さないクールな一面もあるとか。知的で落ち着いているし、気高くて威厳があるという、すべてにおいて洗練されている犬種といえそう。

劇中では、ここぞという場面でスリムな体型を活かし、大活躍するという大きな見せ場も用意されている。サル―キのように、あまり日常生活では見られない珍しい犬種を堪能できるのも、本作の大きな魅力の一つと言えるだろう。

■ベッソン監督の愛犬、チョコラブラドールも登場!

これだけの犬たちを率いたベッソン監督はもちろん愛犬家に違いないが、なんと劇中では愛犬のチョコラブラドール、スヌープ(役名ではなく実際の名前)も出演している。ラブラドールといえば、世界的に人気の犬種であり、非常に温和だが活発で、泳ぎが得意なことでも知られている。元々は魚や鳥を回収してくる狩猟犬で、とても賢く俊敏で脚力もあり、嗅覚も鋭いので、警察犬から介助犬まで幅広く活躍している。

スヌープは監督から直々にオファーを受けたのだろうか?ダグラスとスキンシップをする仕草はバッチリ板についている。

■ベッソン組を支えたスタッフ陣の総合力も秀逸!

ご紹介した6頭以外にも、様々な個性あふれる犬たちが、名演技を見せている本作。観終わったあと「犬は愛に対してウソがない」というダグラスの言葉が心のなかでこだまする。また、マチルド・ドゥ・カグニー率いるドッグトレーナーチームをはじめ、犬が噛み付いた際のあごの力をコントロールさせる“バイト・トレーニング”の専門家や、“ドッグ・リリース”と呼ばれる殺陣を手掛けたスタントコーディネーターらスタッフ陣の結集力もすばらしい。

すでにダグラス役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが、『ジョーカー』(19)のアカデミー賞俳優ホアキン・フェニックスに匹敵するほどの熱演だと高い評価を受けているが、きっと彼も犬たちと共演したことで、ほとばしるような感情が引き出されたのではないだろうか。また、音楽は監督の盟友エリック・セラが手掛けているが、往年の名作へのオマージュや、エディット・ピアフの名曲などが、衝撃的かつエモーショナルな物語をより盛り上げていく。

ベッソン監督が、「ドッグマンが受けた苦しみ、受け入れ難い痛みを、ご自身の心で感じてほしい」と、熱い想いを投影した本作。『ニキータ』(90)や『レオン』など、ベッソンが初期に手掛けた話題作を彷彿させるような原点回帰的作品にもなっているので、映画ファンの方々はぜひ大スクリーンで彼らの勇姿を観ていただきたい。

文/山崎伸子

『DOGMAN ドッグマン』に登場する犬たちをイラスト付きで紹介!/イラスト:じゅん/ヨシモフ郎/efrinman