『ALAN Wake 2』は、Remedy Entertainment(以下、Remedy)より2023年10月27日に発売された。連邦捜査官サーガアンダーソンと、闇に囚われた作家アラン・ウェイクの二人が闇の世界と対峙するホラーアクションゲームであり、2010年に発売された『Alan Wake』の次回作にあたる。TPS(サードパーソンシューティング)に光を用いた戦闘ギミックと演出、そしてメタフィクションな物語。どれをとっても一線級のホラーゲームとして完成していたタイトルだ。現に『the game awards 2023』の「Game of the Year」にノミネートされているのが、その証明と言える。

参考:【画像】『Alan Wake 2』も世界観を共有する“Remedy Connected Universe”の作品たち

 前作『Alan Wake』をプレイした人ならば、今作での“懐かしい出会い”にさぞかし興奮したことだろう。が、それと同時にFBC(情報捜査局)やAWEなどの舞台設定に困惑したプレイヤーも同時にいたかもしれない。これらは、今作から新たに登場したものではなく、Remedyが2019年に製作した『CONTROL』ですでに登場している。つまり『CONTROL』と「Alan Wake」シリーズは世界観を共有しているというわけだ。

 これをRemedyは、“Remedy Connected Universe”と呼称している。

■Remedy Connected Universeと『CONTROL』

 Remedy Connected Universeについて記述していく前に、まずは『CONTROL』の概要を紹介しないといけない。

 『CONTROL』とは、Remedyが2019年に製作したアクションアドベンチャー。現実の法則を歪める異常な存在「変貌アイテム」の収容・研究・管理を行う機関「連邦操作局(Federal Bureau of Control・FBC)」の新局長となったジェシー・フェイデンが、FBC本部であるオールデスト・ハウスで巻き起こる超常現象との戦いに挑むことになる。この“現実の法則に反した異常な物品や現象などを管理する秘密組織”という設定は『SCP財団』から着想を得たものだ。

 本作では、VHSフロッピーディスクなどの日常的なアイテムが別次元からのエネルギーを取り込むことで生まれた「パワーオブジェクト」が登場。ジェシーは、それに触れることで能力を獲得し、戦闘で使用できる。また、同作は「Alan Wake」シリーズよりもややアクションゲームとしての要素が強いタイトルとなっている。

 この『CONTROL』には、『AWE』というダウンロードコンテンツ(DLC)が登場する。本ダウンロードコンテンツはRemedy Connected Universeにとって非常に大きな意味を持つ。なぜなら、『AWE』はいわば“『Alan Wake 2』の序章”に位置付けられるからだ。

 本DLCの主人公はジェシー。彼女はアラン・ウェイクに導かれ、闇の力によって変異した局員の対処を迫られる。ここで登場する闇の力とは、『Alan Wake』に登場したものと同一であり、アラン・ウェイクもまた同じキャラクターとなっている。

 『AWE』では、『Alan Wake』のエンディングで闇の世界に閉じ込められたアランが『Alan Wake 2』にいたるまでの様子が垣間見られる。『Alan Wake 2』をすでにプレイしていれば、すんなりと話の流れを汲むことができるだろうし、新しい発見などもあるだろう。逆に、シリーズ未経験だとかなり理解が難しい部分もあるかもしれない。だが『Alan Wake 2』の物語をより楽しむためにも、ぜひとも触れてみてほしい。

 これまでも、Remedy作品では過去作のイースターエッグなどが登場してきた。ここに『AWE』が登場し、作品同士に明確なつながりが生まれ、Remedy Connected Universeが結実したわけである。

 これはディレクターであるサム・レイク氏が10年以上の構想を経て実現させたものだという。Remedy Connected Universeの登場によって、ストーリーに定評があるRemedyのストーリーテリングが 、もう一つ上のステップに進んだと言えるだろう。 さらには『CONTROL 2』などの後続作の開発が決定していることも分かっているため、Remedy Connected Universeのさらなる広がりが期待できる。

■今後のRemedy Connected Universeの注目点

 先述したようにRemedy Connected Universeは『AWE』によって形となり、それをさらに広げているのが『Alan Wake 2』。ならば、今後のRemedy Connected Universeではなにが巻き起こるのだろうか?

 ここからは、Remedy Connected Universeをより深く理解するための注目点を紹介しておこう。主に注目すべき点は、政府の極秘組織「FBC」と主人公たちの道先案内人「管理人アーティ」の2つだ。

 『Alan Wake 2』では、連邦捜査官のサーガのパートにおいてFBCがたびたび登場する。13年前のブライトフォールズ事件(『Alan Wake』で起こった一連の事件)を捜査している様子で、物語の中心地であるコールドロンレイク周辺や街のいたるところで彼らの痕跡を見つけられる。それだけでなく、物語中盤では、FBCサーガの間で一時的な協力関係を結ぶなど、メインストーリーにも大きく関わる組織となっている。FBCが今後の作品にたびたび顔を出してくることは想像に難くない。Remedy Connected Universeを理解するうえで、FBCという組織は今後重要なものとなるだろう。

 Remedy Connected Universeにおけるもう一つの重要なポイント。それが『CONTROL』でおなじみの管理人アーティだ。

 『CONTROL』では、FBC本部であるオールデスト・ハウスの管理人として登場した彼は、主人公・ジェシーの道先案内人のような立ち位置にいる。

 彼は、主人公・ジェシーのことを管理人の助手だと勝手に考えているようで、なにかと面倒ごとを押し付けてくる少し面倒な側面がある。しかし、ジェシーが助けを求めた際にはなんやかんや言いつつも手を差し伸べてくれるところもあり、なかなかに憎めない男でもある。

 そんな、愛すべき変人・アーティだが、”変人“という言葉だけでは片づけられない異質な特徴がある。彼は、厳戒態勢が敷かれているはずのオールデスト・ハウスを自由に移動でき、オールデスト・ハウスにまつわることや巻き起こる事件などについて意味深げな発言をすることもしばしばだ。その意味深げな言動と印象的な登場シーンなどを含め、彼は作中屈指の人気キャラクターの一人となっている。たとえ本編をクリアしたとしても、どういった存在なのかは、断片的な情報しか得られず、その全体像を掴むことができない。そんな謎めいたキャラクター性も、彼が人気な理由の一つだ。

 そんな彼は、『Alan Wake 2』にも登場する。『Alan Wake 2』での彼は、単なるカメオ出演にとどまらず、主人公たちを真相へと導いてくれる謎めいた存在となっている。主人公サーガの前にたびたび登場したかと思えば、闇の世界に囚われているアランの前にも突如現れる。それまで、オールデスト・ハウス内に限定されていると思われていた彼の能力は、現実世界や闇の世界でも通用することが明かされたことになる。

 しかしながら、彼の素性はいまだ謎に包まれている「彼は、一体何者なのか?なぜ、主人公たちを導くのか?」。彼の正体は、Remedy Connected Universeの今後を占う重要なポイントだ。

■Remedy作品の未来

 『AWE』では、アラン・ウェイクというキャラクターを『Alan Wake2』に向けて掘り下げているが、逆に『Alan Wake2』にて配信予定のDLCでは次作への布石が準備されているようだ。

 現在、公開されているDLCは、シリーズファンならばおなじみのテレビ番組「ナイトスプリングス」をテーマにした『ナイトスプリングス(Night Springs)』とサーガアランの現実が再び混じり合う『レイクハウス(Lake House)』の2つだ。

 とくに後者の“レイクハウス”というタイトルからはオールデスト・ハウスを連想させる。公式FAQの紹介文では「“レイクハウス”はコールドロンレイクほとりにある謎の施設で、政府の独立組織が秘密の調査を実施するために設置された」と記載されている。政府の独立組織とは、おそらくFBCのことを指す。アランサーガ、そしてFBCの3者が入り乱れる物語が展開されることだろう。

 前述したとおり『AWE』が『Alan Wake 2』の序章という立ち位置であると考えると、『レイクハウス』は『CONTROL2』の序章という形になるはずだ。

 また、『CONTROL2』以外にもコードネームVanguard』という4人協力PVEタイトルの開発が発表されている。こちらも『CONTROL』の世界観を拡張するようなタイトルとなるようだ。

 まだまだ広がり続けるRemedy Connected Universe。『Alan Wake 2』によって開かれた新たなユニバース作品が、今後どのように展開していくのか。次回作に向けて、いまからRemedy作品を追ってみることをぜひともお勧めしたい。

(文=失野)

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