北朝鮮の首都・平壌の中心部のホテルで今年の1月1日、20代の女性が逮捕された。どうやらこの女性、年上の男性から金銭を受け取って付き合う、いわゆる「パパ活」を行っていたようなのだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

この女性は、市内中心部にあり外国人観光客が宿泊することもある解放山(へバンサン)ホテルで、何者かによる通報に基づいて逮捕された。女性は大学に通っており、パパ活を行い、市内のホテルで逢瀬を繰り返していたようなのだ。

「平壌市の力のある一部の幹部は、中央大学(一流大学の意)に通い、苦労して勉学に励む地方出身の貧しいな女子大生に生活費を渡し、彼女らを『妾』のように連れ歩いていた」(情報筋)

このようにカネと地位を持つ男性が、若い女性と不倫関係を築くのは、以前からあったことだ。しかし、平壌市安全局(警視庁)は、これを問題視した。

そして、平壌市内の超一等地にあるホテルや、大同江(テドンガン)を挟んだ東岸にある大使館が集中するエリアの半径5キロ以内に設置された監視カメラを、新品に替えよとの指示を下した。

周辺地域では年末年始、売淫行為で摘発される女性が相次いでいた。安全局と大同江区域保衛部(秘密警察)は、「革命の首都である平壌の中心部での好ましからざる行為は、国の顔に泥を塗るものだ」として、旧正月2月10日)にも、同様の非社会主義現象(社会主義生活様式にそぐわないとされる風紀の乱れ)が起きないように徹底的に取り締まれとの命令も付け加えた。

また、入れ替えられた監視カメラの映像を24時間モニタリングする要員と地域周辺で警備に当たる要員を常駐させ、不審者が現れればすぐに報告させるようにした。

そもそも平壌は、コロナ明け後も続いている外国人観光客の入国制限、また地方幹部の出張制限で、ホテルの利用者が少ない。そんな状況下で、これらホテルを頻繁に利用している平壌の幹部をすべてリストアップして監視対象とした。

平壌では、市内の周辺部で以前から、こうした現象が見られていた。平壌近郊の間里(カルリ)駅前などは「ピンク街」と化していた時期もある。また、トンジュ(金主、ニューリッチ)が経営するサウナの貸し切り部屋も、不倫の温床となっていた。

これらはいずれも、国の許可を得ていない宿泊施設などで行われるという共通点があったが、国の機関が経営している市内中心部のホテルも、パパ活や不倫の舞台になっている。

北朝鮮は、「行き過ぎた市場経済化」に歯止めをかけ、かつてのような国主導の社会主義計画経済体制に戻す試みを行っている。そのせいでコロナ明けにも経済不況が続き、多くの人が飢えに苦しんでいる。パパ活の横行にはそのような背景があると思われる。

取り締まりが強化されれば、市内中心部からは一掃されるかもしれないが、また周辺部に戻るか、隣接する平城(ピョンソン)市などに場所を移動してしぶとく生き残るかもしれない。

遼寧省丹東のレストランでインターンとして働く北朝鮮の女子大生(画像:デイリーNK特別取材班)