指原莉乃がプロデュースするアイドルグループ・=LOVE(イコールラブ)のメンバーであり、アニメ好きの野口衣織が「神セリフ」からアニメの魅力をひもといていく連載企画。第28回では、“癒やし系”兄弟の四人暮らしを描いた「柚木さんちの四兄弟。」について語る!(※この記事には、作品のネタバレが含まれています)

【写真】=LOVEの野口衣織

■「柚木さんちの四兄弟。」ってどんなアニメ?

数年前に親を亡くした長男・隼(はやと)、クールだがブラコン気味の次男・尊(みこと)、元気で兄弟思いだが空回りをしがちで不器用な三男・湊(みなと)、しっかりもので“仙人”と呼ばれるほど達観している四男・岳(がくと)の四兄弟。彼らが時にケンカもしながら仲良く賑やかに暮らす日常を描く、優しさや温かさ、感動が詰まった癒し系アニメ!

■兄弟といえども、みんな性格も考え方も全然違うのが面白い

作品を見始める前に“親を亡くしてしまった兄弟が4人で暮らしているお話”というのをあらすじで見て、「もしかして暗いところもあるお話なのかな…?」と思ったんです。でも見てみたらすっごくほのぼの系のあたたかい作品で、最初に四兄弟を見た時に感じた可愛らしくて癒やされるイメージ通りのお話だったなと思いました。

そして、ところどころから人間味が感じられるのも好きです。兄弟といえども、みんな性格も考え方も全然違っていて。人間なら当たり前のことなんですけど、兄弟だから見た目の雰囲気が似ているということもあり、その違いがなんだかとても面白く感じられました。共通点があるからこそ、それぞれのキャラクターの個性が生きている感じがしたというか。だからアニメを鑑賞するというより、もはや四兄弟を観察する気持ちで見ていました(笑)。

■隼には絶対に幸せになってほしい!

長男・隼は、親が亡くなってから「3人の弟たちを守らなきゃ」っていう責任感がとにかく強く、一家の大黒柱として仕事も家事もこなす苦労人です。四兄弟それぞれにフィーチャーする回があって、隼の回では、自分の今の状況を顧みて感情が揺さぶられるシーンがあります。それまでは自分が頑張って弟たちを守らなきゃって無我夢中だったけど、同窓会で同級生と会って話してみて、みんなは年相応の経験をして楽しんでるのに、自分は周りと違うかもってハッとするんですね。

弟たちがいなければって思っちゃう瞬間は確かにあるし、これからだって思うかもしれない。でも、やっぱり俺は弟たちが可愛いし愛おしいんだっていう結論に行きつくので、本当に愛に溢れた人なんだなと感じました。とにかく人柄の良さがずっと出ていて、そんな隼には絶対に幸せになってほしい!と心から思います。

でもちょっと…節々から、結婚は遠そうだと感じることも(笑)。かなりのブラコン気質で、弟たちが仲良くしてると興奮して「動画撮っていい!?」とか言っちゃうし、弟たちの親代わりとして生きてきたからか、オカンっぽいんですよね。

あと、湊が隼に「デートの時に彼女がどんな服を着てきてくれたら嬉しい?」と聞く場面があるんですけど、その時の隼の饒舌さたるや!(笑)そんなに早口で喋れたの!?ってなりましたし、「レース多めがいい」とか「ズボンだったらスリム系かショートパンツ系」と注文が多めで(笑)。「好きな子が着てたらなんでも似合うし嬉しい」みたいに言ってくれるタイプだと思ってたので、想像とはだいぶ違いました(笑)。でも、そこのギャップもよかったです!

■嫉妬や不満といった尖った心を表現する時のアニメーションが面白い

尊と湊は双子じゃないのに同学年という兄弟で、その関係性だからこそ、歳が離れている兄弟とは違った葛藤を乗り越えた過去があります。そんな2人を描いた二話は一番人間味を感じて、すごく印象的でした。

尊は湊より11ヶ月早く生まれたので、基本的には湊よりなんでも先にできるようになるんですね。絵を描くのも、字を書くのも、身長が伸びるのも尊の方が早かった。湊はそれがうらやましいし、悔しい。逆に尊からしたら、自分が一番年下として可愛がられていた期間はすぐ終わって、湊に両親を取られちゃったことに対する劣等感がある。でもお兄ちゃんだからしっかりしなきゃっていう葛藤もあって、2人が絶対に理解し合えない理由でぶつかりあってたんですね。

友情だとそういう感情ではあまり続かないだろうし、家族ならではの愛の形がいいなって思いました。尊と湊が11ヶ月差というタイミングで生まれて、あのタイミングでケンカして、あのタイミングで仲直りしたからこその今の関係値っていう、すべてが必然なところが本当にエモい!ちなみに、今となっては尊が釈迦の境地に達して、湊のことが大好きなブラコン兄になってます(笑)。

あと、尊と湊が抱く複雑な感情を描く時の、アニメの映像がすごく好きで!真っ黒の画面に白いペンでごちゃごちゃって殴り書きしたような絵柄になったりするんですけど、嫉妬とか不満って、一つの感情からは生まれないじゃないですか。いろんな感情をまとめた結果が嫉妬や不満だったりするから、尖った心を表現する時のアニメーションとしてそういう表現が織り込まれていて、こんな表現の仕方があるんだ!と引き込まれました。

■たくさんの幸せを感じながら、すくすくと健やかに育ってほしい

末っ子の岳は、本当に仙人!6歳にして達観しすぎていて、隼がオカンっぽい属性だとしたら、岳はオトンっぽいしっかり者感。いつも冷静で落ち着いてるし6歳とは思えない包容力で、とにかく心が広い!尊は湊が大好きだけど、湊は岳が大好きなので、尊が岳に嫉妬して「俺との付き合いの方が長い」とか煽ったりするんですけど、岳は否定をすることもなく「その通りだな。歳の近い2人の絆には、俺などが割り込む隙もない」って受け入れる(笑)。思わず、大人だなぁ~!!と感心してしまいました。でも、そのせいで自己犠牲の面も多そうだなと感じるので、どうかみんなに愛されて、たくさんの幸せを感じながら、すくすくと健やかに育ってほしいです!

一方で、年相応だなと感じる可愛らしい部分も。今度小学校で授業参観があるけど、隼は仕事や家事で忙しいから授業参観に来てほしいなんて言えないと、岳は気を遣って隠そうとしていました。そんな風に悩んでいる様子をたまたま湊が見かけたこともあり、最終的には兄3人が来てくれることになるんです。その時の岳の嬉しそうな顔も、「来てくれたからにはいいところを見せなきゃ!」っていう子どもらしいところも、全てが愛おしかった(泣)。どうかそのあたたかい感情を忘れずに、素直に生きていってほしいと思いました。

■最終回まで見た上で、この言葉の説得力がより増しました

「俺たち兄弟はどんな事があってもずっと家族なんだから、4人で支え合って生きていこう」柚木隼(一話より)

なぜこのセリフを選んだかというと、まさにこの言葉が全てなんです。全話を見終わった後にこのセリフを思い返して、つまりこういう作品だった!と思って。それこそ、岳の「隼兄さんは忙しいから授業参観に呼べない」っていう感情もそうだし、そんな岳を見た湊が「尊の教室にも行くから、授業参観でお母さんにずっといてもらえなかったのが寂しかった。来てくれた俺でもそう思ったんだから、岳だって本当は来てほしいはず」と思いやったのもそうで、4人がお互いに支え合ってると感じるシーンがいっぱいありました。

時にはケンカしたりぶつかり合ったり、その瞬間だけを見たら冷たく感じることもあるけど、みんな家族が大切で大好きで、最後には戻ってくる。何があっても4人は家族なんだな、家族って宝なんだなというのがひしひしと伝わってきて、最終回まで見た上で、この言葉の説得力がより増しました。あ~、本当にいい家族だ!(泣)きっとお父さんとお母さんも天国から見てて自慢だろうな、誇りだろうなって思います。

ほのぼの系”ではありつつも、全体を通して人に寄り添う感情がたくさんあって、どのシーンも誰かしらが共感していると思うし、見た人が背中を押してもらえるようなストーリーになっています。そして、ほのぼのとした日常の中からメッセージ性を感じるけど、それは決して無理強いではなくて。いつの間にかそっと自分に寄り添ってくれている、そんな言葉がたくさんある作品だと思いました。

=LOVEの野口衣織が「柚木さんちの四兄弟。」を語る!/原作/藤沢志月「柚木さんちの四兄弟。」(小学館「ベツコミ」連載中) (C)藤沢志月・小学館/「柚木さんちの四兄弟。」製作委員会