西島秀俊主演の日曜劇場さよならエストロ~父と私のアパッシオナート~」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)が現在放送中。同作は、“ある事件”で家族も音楽も失った父・夏目俊平(西島)と、そんな父を拒絶し音楽を嫌う娘・響(芦田愛菜)が、地方オーケストラを通して失った情熱を取り戻し、親子の絆と人生を再生させていく完全オリジナルのヒューマンドラマ。

【写真】なんとも言えない表情で振り返る津田寛治“近藤”、西島秀俊“俊平”、満島真之介“鏑木”

■愛と魂の物語を彩る個性豊かなキャスト陣

西島、芦田の他、響の同僚のポジティブ思考で明るいトランペッター・森大輝役に宮沢氷魚、魔性のフルート奏者・倉科瑠李役に新木優子クラシックに恋する高校生・谷崎天音役に當真あみ、クラシックを諦めたチェリスト・羽野蓮役に佐藤緋美、プレッシャーに弱いティンパニ奏者・内村菜々役に久間田琳加が配役。

また、俊平の息子・海役の大西利空、響と海の母親・志帆役の石田ゆり子、晴見市の市長・白石一生役の淵上泰史、コンサートマスター・近藤益夫役の津田寛治、うたカフェの店主・小村二朗役の西田敏行、物語の鍵を握る謎の男・鏑木晃一役の満島真之介、市民オーケストラの団長・古谷悟史役の玉山鉄二が物語を彩る。

■近藤の熱すぎる指揮が観客を沸かせた第6話

あおぞらホールの閉館が3月末から2月末に繰り上げとなり、練習場所も失い、ちゃんとした舞台もないまま解散することになってしまった晴見フィル。落ち込む団員たちに、小村は「恒例行事の梅まつりゲリラ的に最後のコンサートを開いてはどうか」と提案。古谷を中心に、市側にバレないようにコンサートの準備を進めていく。そんな中、俊平は近藤の密かな夢を知る。さらに、瑠李の知られざる素顔に気が付くことに。

解散目前の晴見フィルが、本拠地あおぞらホールで行う最後のコンサートの場面では、バイオリニストでコンマスの近藤が指揮者としてラストの演奏を飾ったシーンが大きな見どころに。物語をアパッシオナート(情熱的)に盛り上げた、渦中の近藤役の津田からコメントが到着した。

■“近藤”は「ちゃんと人生を背負って生きている」

――これまで演じてきて、近藤益夫というキャラクターにどんな思いをお持ちですか?

近藤って人間臭いなと思いますね。ただ音楽好きのいい人という訳ではなく、ちゃんと人生を背負って生きているというか。建設会社の社長という仕事にもすごく誇りを持っているし、家庭では奥さんに弱くて娘にも顎で使われているけれど、家族も大事にしている。そして“家族”と“仕事”という男にとって大切な2つのものの中にバイオリンというのがすごく“ひねった”状態で入っているのがすごくリアルだなと思います。

僕の中の設定として、きっと近藤が社長を務める建設会社は、親から受け継いだものなんじゃないかというのがあって。会社を一代で築いた父親がその経済力を誇示するために息子にバイオリンを習わせて、でも近藤はそれを一度は「やりたくない!」と投げ出したんじゃないかなと思うんですよ。そこで一旦グレて(笑)。でも、“道を外れそうになっていた自分をバイオリンと晴見フィルが救ってくれた”ようなところが彼にはあるんじゃないかと思いながら演じています。

――近藤の妻役がLiLiCoさん、娘役がおじゃすさんということも話題になりました。

僕も撮影の前日くらいに知ったのでびっくりしました(笑)。LiLiCoさんとは別の作品で共演したこともありますし、俳優とインタビュアーとしてご一緒することもあったので気恥ずかしくもありましたが、現場ではLiLiCoさん節全開で楽しそうにやられていたのでうれしかったです。

おじゃすさんも、普段TikTokとかで見るようなピンクのウィッグのまま娘役をやられていて、この家族の感じは一体何だろうっていう(笑)。でも、「そうだよな、近藤はこういう奥さんが好きで、こういう娘のことも良しとして大切にしているんだな」というところも感じて、また一つ近藤という役が深まったように思いました。

――晴見フィルの撮影現場の雰囲気はいかがですか?

キャラクターみんなが光っている、役者として本当にありがたい台本がある上で、ディレクターさんたちが本当に愛情深くそれぞれの役をすごく大事にして演出してくださっているのを感じます。自分の中から無意識にふわっと出たものを拾ってくれて、「近藤さんだったらここはこうしますね」と積極的に生かしてくれることもあってうれしいです。

演奏シーンでのキャストの団結感も他の現場にはない感じです。みんなそれぞれ一人でレッスンや自主練をした上で集まっているので、「楽器は違えどみんな戦っている」というリスペクトがお互いに対してあるんです。変に打ち解けてダラダラするのではなく、敬意を持って相手に接しているところが、他の現場とは発するエネルギーが違うなと思います。

あとは、オーケストラの団員役で、音楽家や音大の方々が参加されているのですが、その方々にも助けられていて。役者とは違って“爪痕を残そう”みたいなことを思っていない感じがすごくすてきなんですよ。“ここにある大きな幸せ”の一部になろうとしている感じというか。

僕がちょっとしたアドリブを入れても優しく受け入れてくれますし、例えば西島さんがすごくいいせりふを言うと、みなさん本当にボロボロと泣かれていたりもして。芝居しているという感覚ではなく、西島さんのお芝居で物語の中にちゃんと入ってらっしゃるんだなというのもグッときますし、勉強にもなりますね。

――近藤が念願の指揮者を務めた第6話の裏話もお聞かせください。

音楽大学の指揮科の教員の方が振ってくださっているお手本動画を見たときに、めちゃくちゃ感動したんですよ。ゴツゴツしているけどアパッシオナートがあって、指揮に対する情熱が近藤の情熱そのものだなと。

一見とっ散らかっているようだけど、「あおぞらホールも最後だし、もう晴見フィルも終わりなんだ」という近藤の思いがそこにありましたし、台本を熟読して振ってくださっているんだなというのが分かりました。完全コピーするくらいの気持ちでいたのですが、いざ始めたらそんなのおこがましいくらい難しくて。なので先生に何回かレッスンを受けさせていただいて作っていきました。

――第7話以降、この近藤のダイナミックな指揮がSNSで話題を呼び、晴見フィルをいい方向に導いていくような描写もあります。

そうなんですよ、だから結構プレッシャーで(笑)。「血管が切れそうになった!」みたいに指揮について振り返るシーンを、実際には指揮を振る前に撮影していたりもしたので、本番でその通りにやらなきゃいけないとも思いましたし、とにかくプレッシャーがすごかったです。

――終盤の見どころを教えてください。

第7話は“うたカフェ二朗”のマスター・小村にスポットが当たる回で、西田さんが初めて楽器を演奏するシーンもあるのですが、そこでのお芝居が見どころだと思います。個人的には、第8話の西田さんと近藤がサシ飲みするシーンが本当に幸せで、夢みたいな時間でした。

西田さんって歌もお上手で音楽家と似たスピリットをお持ちで、ピリピリせずに「とにかく現場をみんなで楽しくしよう!」という方なんです。そんな空気の中でせりふもどんどん変わっていったり、劇的なことが起こったりもして。だから物語の全体においても、西田さんのお芝居は大きな見どころだと思います。

さらに、第9話は台本を号泣しながら読んだ記憶があります。僕、このドラマには悪い人が出てこない分、我が子を無意識に傷つけてしまうという点で、「実はマエストロ(=俊平)って一番悪い人なのでは?」と思っていて。そのことを志帆は分かっていて、子どものことをちゃんと考えたんだなと思うんです。だからそういう中で娘の響が第9話で放つ言葉というのに、僕は涙が出ましたね。

あとは、演奏シーンもどんどん佳境に入っていて、最終回はとんでもなく大変な演奏が待っているので楽しみにしていてほしいです。僕も頑張ります!

「さよならマエストロ 〜父と私のアパッシオナート〜」より、妻と娘をコンサートに誘う津田寛治“近藤”/(C)TBS