櫻坂46のキャプテンを務める二期生の松田里奈、三期生の山下瞳月は、グループのパフォーマンスに自信をのぞかせる。欅坂46の改名から3年以上が経過し、国内外のステージで経験を重ねたメンバーは力を合わせ、独自のカラーを築き上げた。最新の8thシングル「何歳の頃に戻りたいのか?」表題曲MVからも伝わるのは、今ある「櫻坂46らしさ」。個人活動も活発化する中で、核となるライブに何を思うのか。MV撮影秘話と合わせて、松田と山下に聞いた。

【写真】キャプテン松田里奈に寄り添う山下瞳月 2人の撮り下ろしカット

■山崎天を持ち上げるシーンでは全員で試行錯誤

――お2人はお互いを何と呼んでいるんですか?

松田:私は「瞳月」で…。

山下:私は「まつりさん」です。

――グループのオフィシャルWebラジオ「さくみみ」で、山下さんは松田さんのことを「松田さん」と呼んでいたけど、これからは「まつりさん」に変えると話していましたが、続いているんですね。

松田:そうなんです。うれしいです(笑)。

山下:(笑)

――(笑)。それでは、本題へ。二期生の山崎天(崎は正式には「たつさき」)さんがセンターを務める8thシングル表題曲「何歳の頃に戻りたいのか?」への思いは?

松田:私も過去を振り返ることがありますし、共感できました。歌詞では、サビ終わりの<夢を見るなら 先の未来がいい>が前向きで、聴いてくださる方に「振り返ったらつらいこともあるだろうけど、今を楽しんでほしい」と、伝わる曲になればと思います。

山下:明るくカッコいい曲調ですけど、「共感してほしいのかな?」と思うほど、疑問形で訴えかける歌詞が多いんです。音楽番組で初めて聴いていただく方の生活に響く言葉もありますし、グループを知っていただくきっかけになればと思います。今回の曲では、参加メンバー1人1人の個人パートもあり、上手に伝えていきたいです。

――前々作「Start over!」、前作「承認欲求」のMVも手がけた加藤ヒデジン監督によるMVのストーリーも気になります。

松田:見てくださる方の解釈に委ねたい思いもありますけど、私を含む、3列目のメンバーはウエイトレス役で、最初は嫌々踊っているんですけど、場を支配する役割の天ちゃんに心惹(ひ)かれ、2番からは自由に楽しく踊り始めて、最後は全員で今を全力で楽しむ世界へと広がっていきます。天ちゃんを中心に、支配がテーマになっています。

――個々のキャラクターには、細かな設定が?

松田:場面によりました。監督は事前資料で、1人1人に3〜4行ほどのコメントをくださるんです。個々を分析していただき、私は「Start over!」の時に「バカっぽい。いいところでもあるけど、今回(Start over!)は違う」と書いてあって(笑)。でも、今作では、キャプテンとしての私に対するコメントとともに「当時はそう書いたけど、今回はいつもの松田っぽい感じでもいい」と書いてくださって、ありがたかったです。

山下:私は「承認欲求」も今回の曲も「明るい曲でも、どこか切ない感じが残ってるのがいい」と書いてくださったんです。今作ではさらに「その中に涼しい風があったらいいんじゃないかな」と、書いてありました。経験の少ないリップ(シンク)シーンの撮影では自信がなく、苦手意識があるんですけど、監督が「みんなは強い表情で歌い上げているけど、あなたはいつも通りの切ない感じでいい」と言ってくださったのが、印象的でした。

――撮影で、特に大変だったシーンは?

松田:1番は屋外の撮影で、日陰だったので寒かったんです。持っていたシルバーのお盆が氷のように冷たくて、大変でした。衣装も七分丈で短く、ヒートテックを2枚重ねで着て、全身にカイロを貼っていたんです。透け感のある温かいタイツも用意していただいて、防寒対策はバッチリでした(笑)。

山下:床に寝転がって踊る天さんの手を取り、メンバーが自分たちの上に持ち上げる間奏のシーンは、全員で試行錯誤しました。履いていた靴と絨毯(じゅんたん)の相性が良くなくて足元が滑りやすく、持ち上げられる天さんも、持ち上げるメンバーも大変だったんです。(振付師の)TAKAHIRO先生が「一度、俺がやってみる」と試したら軽々と持ち上がって、すごいと思いました(笑)。予定では持ち上げるメンバーに参加していなかったまつりさんが、立候補していたのも頼もしかったです。

松田:リハーサルでは、田村(保乃)が天ちゃんの手を取り、持ち上げる役だったんです。でも、うまく行かなくて「誰か、力持ちの人は?」と言われたので「ハ〜イ!」と立候補しました(笑)。

■シングルリリースとライブを経て見えてきた「私たちの色」


――前作「承認欲求」から、表題曲に参加する選抜メンバーと、カップリング曲に参加するBACKSメンバーに分かれる選抜制に。新システム導入から2作目となる、本作のフォーメーション発表時の心境は?

松田:フォーメーション発表はドキドキで、結果を聞きたくない気持ちもあるんです。でも、選抜メンバーに選んでいただいたのは、やっぱりうれしかったです。今回の曲では3列目で、個人的には前列に行きたい目標も掲げていますし、叶えられなかったことに対して、ファンの方へ申し訳ないという思いもありました。

――松田さんが「前列に行きたい」と思う理由は?

松田:前列の方が目にとまる確率が高くなると、考えているんです。音楽番組ではソロでカメラに撮られる可能性も上がりますし、映ったら喜んでくださるファンの方もいらっしゃるので。その人たちのために、改名初期に目標を公言するようになりました。ほかにもやりたいことや叶えたいことをなるべく口に出しています。公言するのは勇気も必要ですけど、それが叶ったときにファンの方が喜んでくださるのなら言い続けるべきだと、今は思っています。

――覚悟を感じます。山下さんは、三期生が初めて表題曲に参加した前作「承認欲求」に続いての選抜入りです。

山下:前作でフロントを経験させていただいて、今回の曲で選ばれなければ「どこが悪かったのか」と自分を責めてしまいそうで、正直、怖かったです。前作の活動期間では「初めて見て、好きになりました」と言ってくださる方が増えたし、応援してくださる方が「目にする機会が増えた」と言ってくださるのもうれしかったです。再びの選抜入りに不安やプレッシャーもあったんですけど、悩むべきはそこではないと気が付いたし、今作でも、選んでいただいたからには頑張ります。

――期待しています。ところで、昨年のシングルリリースや国内外でのライブも経て、グループのカラーが定まってきた印象もあります。

松田:改名初期は確かに「私たちの色は何だろう」と、模索しながら活動していたんです。カラーが定まった一番のきっかけは、ライブだと思います。グループの個性をハッキリ出せる場所ですし、特に「2nd TOUR 2022 “As you know?“」(2022年9〜11月)からは曲数が増えて、いろいろなパターンで見せられるようになりました。さらに飛躍できた昨年は「3rd TOUR 2023」、海外公演があり、(2023年2月リリースの5thシングル「桜月」から)シングルを3作品リリースして、グループに自信を持てました。

――核となるライブでの「櫻坂46らしさ」とは、何だと思いますか?

松田:表現は難しいんですけど、目を離せない瞬間があるのはグループらしさだと思います。挑戦もあり、例えば「2nd TOUR」では、オープニングから最初のMCまで、サイリウムを付けないでくださいとお客さんにお願いしたんです。激しめのセットリストで、パフォーマンスする自分たちはハードですけど、演出もあいまってカッコ良さを表現できました。もっと突き詰めて「グループを知らなくとも、ライブには行ってみたい」と思っていただけるステージを作っていきたいです。

――2023年3月に加入した山下さんは、グループのカラーに対する思いは?

山下:三期生は先輩方が築き上げてくださった、すでにカラーのあるグループに加入しましたし、私にとってはずっと輝いていました。加入してからは、まだ自分がそこに色を足せている自信はないので、今年は「カラーを足せるメンバーになること」が目標です。

■山下からの「かわいい」に松田感激!


――メンバーの個人活動も活発で、松田さんはグループ外の番組でも大活躍です。

松田:芸能界で活躍されている方々に比べたら、大それたことは言えません(笑)。個人での出演は慣れないし、いつも緊張しています。櫻坂46を背負っての出演ですし、「松田里奈」も知ってほしいんですけど、グループを知っていただくきっかけになればと思って。出演するたび「自分は何もできない」と落ち込んでいますし、もっと面白い人間になりたいです。

――レギュラー出演中の情報番組『THE TIME,』(TBS系/毎週月曜〜金曜5時20分)では、櫻坂46の話題も出ます。説明の際、心がけていることは?

松田:グループを知らない視聴者の方もいますし、生放送では発言の尺が決まっているので、分かりやすく簡潔に伝えようと心がけています。放送前にディレクターさんと「このエピソードでは長すぎるし、背景を言わなければ伝わらないかもしれない」と打ち合わせをして、うまくしゃべれるように準備しています。

――山下さんは加入1年弱で、自身の変化は?

山下:精神面が変わりました。加入からお披露目の「おもてなし会」(2023年3月)までは、三期生で「一番泣く子」と言われるほど、よく泣いていたんです。でも今は、なぜ泣いていたのか覚えていなくて、強くなれたし、冷静に物事を見られるようになりました。

――山下さんは加入前から坂道グループの大ファンで、生写真も集めていたそうですが、今はさすがに…?

山下:櫻坂46として、頂ける機会があるのでもらっています(笑)。誰が出るのか分からないワクワク感が好きですし、今も、ファンの時の気持ちを忘れたくないんです。ファンの方と同じ目線を経験していたからこそできることもありますし、ほかの坂道グループのライブにもなるべく通って、生写真も購入しています。

――ちなみに、松田さんの生写真は?

山下:持っています(笑)。

松田:うれしい!

山下:たくさん購入していたので、メンバーみんなの生写真を持っているんです(笑)。

――(笑)。ファン目線を大切にする山下さんは、レギュラー番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京/毎週日曜24時35分)の企画「三期生リアクションチェック!」で、富士急ハイランドジェットコースター「FUJIYAMA」に乗った際、キレていたのも強烈でした。正直、普段もキレやすかったり…?

山下:全然、キレません(苦笑)。ロケでは、絶叫系が苦手で「今度、富士急ハイランドのロケで『FUJIYAMA』に乗ります」と言われた日から撮影当日まで、感情を失うほど怖かったんです。撮影当日にロケ地へ向かうバスの中では、FUJIYAMAの映像を見ながら「何分何秒で曲がる」「何分何秒で落ちる」と、徹底的にシミュレーションして。緊張がほぐれて、失った感情が一気に出たのがあの瞬間でした(笑)。

――(笑)。松田さんから見た、山下さんの印象も気になります。

松田:もちろん、キレているのを見たことはないです(笑)。瞳月はさっき「一番泣く子」だったと振り返っていましたけど、確かに、加入初期は困り顔で泣いているのをよく見ました。でも今は泣いているのを見ないし、強いイメージです。肝が座っていてカッコいいし、客観視できる部分もあって、ちゃんとしています。

――山下さんへの信頼を感じます。ところで、レギュラー番組では松田さんが、メンバーに「かわいい」と言ってほしいと話していた放送回も。山下さんから見た、松田さんのかわいさは?

山下:(互いの目を合わせて)まつりさんに直接、言ったことありますよね。顔がすごい好きで。

松田:めっちゃうれしい(笑)。

山下:このインタビューでまつりさんがしゃべっているのを横から見ていたら、鼻がすごくキレイだったんです。小鼻がちっちゃいし、形がツーンとしていて、フェイスラインがめっちゃかわいいです!

松田:え〜、うれしい(感激)。ありがとう。その言葉で頑張れるし、つらくなったら思い出す!

――(笑)。逆に、松田さんから見た山下さんのかわいさは?

松田:(再び、互いの目を合わせて)本当にかわいい。みんなが言う瞳月の儚(はかな)さは、出したくても出せないじゃないですか。私には出せないし、生まれつきだからうらやましいです。無意識だからこそ惹かれますし、今も、儚い表情で私を見つめていて…。

山下:(照)。

松田:笑うとかわいいし、カッコよくてクールな表情も映える。…全部、かわいいよ。

山下:エヘへへへ(笑)。

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

(左から)櫻坂46・山下瞳月、松田里奈  クランクイン! 写真:上野留加