元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。
◆「単体女優」と「企画女優」の裏事情
セクシー業界には、出演する本人が主役となる「単体女優」と、1つのメーカーに拘束されることなく、さまざまな作品への出演が可能な「企画女優」という分類があり、この振り分けによって活動の仕方が変わる。以前は「企画単体女優(キカタン)」とさらに細かく分けられていたが、近頃はキカタンも名前のクレジットがない作品に出演するため、今の時代はカテゴリーがざっくりと2つに分けられつつある。
名称は知っていても、単体女優と企画女優の仕組みがよく理解できていないユーザーが大半だ。今回はその仕組みや流れを丁寧に解説していこうと思う。
◆単体女優から企画女優へ切り替わる時
単体女優から企画女優へ切り替わるタイミングは、基本的にメーカーとの専属契約が終わったとき。自ら単体を降りたいという女優はほぼいない。事務所としても、女優本人としても専属の肩書きをなるべく手放したくはないだろう。引退直前にわざと単体女優から抜けて企画女優へ転身し、様々なところに出演しきってから卒業する女優も過去にいたが、これはレアケースだと思っていい。
単体契約の内容は人によって異なり、延長や打ち切りの基準もその時々によって変化する。例えば3本契約で思ったように売り上げが伸びなくとも、今後の可能性が期待できる場合は、様子見のために数本の延長をかけるのだ。本人がどれだけ単体継続を望んでも、事務所が強く営業しても、最終的にはメーカーの判断に委ねられる。
ただ単体女優から企画女優へ移ったからといって「戦力外通告」なのではない。個人のキャラクターや本人の希望する方向性が企画向きだと、契約終了とともに移籍先のメーカーを探さず、前向きな理由で転身することが多い。
◆企画女優に変わったばかりの多忙なセクシー女優
単体女優から企画女優に移ったばかりの時は、だいたいどの女優も忙しい。1つの場所にしか出演していないのだからまだまだ初物。多くのところからオファーが殺到する。
「ずっと〇〇ちゃんウチで撮ってみたいと思っていたんだよ、でも単体だったからね~」みたいなエピソードがメーカーから飛び出すのもよくある話。どんなに撮影を依頼したくとも、相手が専属だと企画メーカーは諦めるしかないからだ。
専属が終了した瞬間、「ようやく拘束が解けてくれた!」と言わんばかりに速攻でオファーをかけるやり方も珍しくはない。制作側の熱量が高ければ最初の時点で2本、3本撮りたいなど、先の予定を確約してくれることもあるとか。
企画女優は月給制の単体女優とは違い、1本のギャラ×1カ月の撮影料=月収なので、人によっては専属契約の時代より高い給料を狙える。スケジュールが次々と埋まるのは非常に大変なものの、あちこちの現場に行くと学びも多いため結果的に単体→企画になって良かったという女優も多いのだそう。
拘束が外れた後の数か月はとても重要な期間で、この時に撮影した作品の売れ行きによって未来が大きく異なってしまう。
数字を出せば依頼が絶えない売れっ子ロードの道が開けるし、反対に成績が芳しくないと完全に先細り。プロダクションの営業はもちろんのこと、本人の頑張りが必要不可欠な命懸けの期間といえようか。
◆「単体女優が花形」の時代は終わり?
以前は単体女優が絶対王政で企画女優がその下のようなイメージであり、実際にヒエラルキーも、
「単体女優(トップオブトップ)→企画単体女優(トップには及ばないが最高の2番手)→企画女優(その他大勢。上2つには絶対に叶わぬ)」だったことはたしかである。
一般ユーザーはこの概念のまま止まっている人が多いので、単体女優から企画女優へ移る際に未だ「企画落ち」なんて言葉を使うくらいだ。
メーカーの看板に比べれば企画女優は劣ると思われがちだが、近年ではヒエラルキーに変化が起きつつある。もちろんメーカーの看板である専属の単体女優は強いけれど、同じくらい企画単体女優の地位が上がり、「単体じゃないとテレビやVシネ、ピンク映画には出られない」「企画だと人気が全く出ない」なんてことはなくなっている。
今はセクシー女優が星の数ほど存在し、単体女優・企画女優ともに母数がとんでもないことになった。その中で単体女優は1つの場所(ビデオ)にしか出演できず、本数も月に1本リリースと動き方が限られてしまう。と、なれば人目に触れるチャンスが減るため、該当メーカーのファンかよほどの売り上げを叩き出さない限り、ユーザーに見つけてもらいづらいのだ。
◆人気企画女優が重宝される理由
その点、企画女優はあっちこっちのメーカーに出られるので露出の機会が増える。よほど売れていない女優でもない限り、リリースは月1本以上、いろいろな場所に顔を出せばファン獲得のチャンスも増えていき、作品でのアプローチ数が単体とは桁違いのため、オファーさえあれば数字を作りやすいのだ。
実はここだけの話、今は単体女優より販売本数を捌ける企画女優の方が多いらしい。かつて単体メーカーと呼ばれた専属女優ばかりを扱う制作会社も、現在では企画女優に頼り切りなのが“企画女優すごすぎる説”を裏付ける決定的な証拠だ。
◆企画女優のデメリット
出演すればするほど稼げて、専属女優以上の人気を獲得できる可能性を秘める企画女優だがデメリットもある。
これまでの流れを見ていればなんとなくわかるように、オファーがなければただの地獄でしかない。新人の時だけやたらめったらと出演し、結果を出せず先細りのような「一発屋」や、専属時代にそもそも数字を出せなかった女優は、契約終了後に速攻仕事がなくなる。
筆者もまさにそのタイプで「企画に移ったら忙しくなるかな」と期待を込めていたら、翌月の仕事はオファー2本。あの時、人生ではじめて膝から崩れ落ちるような経験をした。まぁ完全に私のせいではあるんだけど、一応こんな人もいるっちゃいる。
◆企画女優はフリーランスのようなもの
単体女優が月給制の会社員だとすれば、企画女優はフリーランスのような状態なので安定性がない。トップ企画女優になれば数か月先のスケジュールまで埋まるものの、そんなのはランキング上位者の働き方。ほとんどはオファーがきた仕事を一生懸命拾って、その他大勢の作品にも出ながらなんとか1カ月を乗り切っている。
数年前に人気があった企画女優も、今現在はすっかり仕事がなく……なんてパターンも非常に多いため、可能性が見込まれる分、企画女優には企画女優の厳しさがあるということだ。
◆女優として生きていくのは難しい時代に…
メーカーも専属の数を抱えきれず、次から次へとハイクオリティな新人が現れるため、単体→企画へと移る女優は多い。少し前なら元単体のブランドはかなり使えたが、今は肩書きだけで戦い続けられないため、企画へ転身しても必ず売れるとは言い難い。
今の時代は稼ぎたい一心だけではどうにもならないのがセクシー業界。脱いだら稼げる時代はとっくに終わっている。企画女優の発展はめざましくとも、その一方で苦しい思いをする数も増えているため、今現在トップを張る人々は、激しい戦いの中生き抜いた戦士といっても過言ではないだろう。
文/たかなし亜妖
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
―[元セクシー女優のよもやま話]―
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