マ・ドンソク演じる“怪物刑事”マ・ソクトが、拳1つで悪党たちに対峙し倒していく痛快さで大ヒットのアクション映画「犯罪都市」シリーズ。第3弾『犯罪都市 NO WAY OUT』がいよいよ、2月23日(金・祝)より日本公開される。これまでの3作の韓国での累計動員数が3000万人超という韓国初の記録を打ち立て、世界興収も8000万米ドルを突破。観客を熱狂させ続けているこのシリーズの主演と制作を手掛けるマ・ドンソクが待望の初来日を果たした。本作で外国人初のヴィランとなるヤクザのリキを演じた青木崇高と共に、作品について、また、兄弟同然の絆が生まれたというお互いへの想いなどを大いに語ってもらった。

【写真を見る】お互いのことを「ムネ」と「兄さん」と呼び合うほど仲がいい、マ・ドンソクと青木崇高

■「『犯罪都市』に、自分のすべてを捧げています」(マ・ドンソク)

「犯罪都市」は、マ・ドンソクが「自分のすべてを捧げている」と言う、彼のライフワークだ。現在、まもなく韓国で公開となる第4弾まで撮り終え、8作まで構想があるとのこと。マ・ソクトというキャラクターは、彼が生涯かけて取り組んでいるボクシングをベースにしたアクションと演技を掛け合わせ、約20年かけて作りだしたのだとか。刑事やプロファイラーに自ら取材して、実際の事件をいくつも組み合わせてストーリー作りにも参加。80回以上の会議を経て何度も脚本を書き直し、常に前作を超える作品を作るために「骨身を削っている」と、マ・ドンソクは語る。

「軸は、“刑事が悪党を捕まえる”というシンプルなものですが、スリルやサスペンスが必要なので、毎回トーンを変える点に気を遣っています」と言い、「韓国のチャイナタウンの一斉摘発をした1作目では暗くて強いイメージ、2作目ではストーリーを拡張させて、ベトナムで凶悪犯との死闘を繰り広げました。そして今回は、どんな世代の方も楽しめるような大衆的な娯楽性を強調してみました。第74回ベルリン国際映画祭に招待された第4弾は、より重厚感のある内容になっています。毎回、少しでも新しさを取り入れようと、笑いのツボやヴィランのセリフ、新たなアクションスタイルにいたるまで、本当に悩みが尽きないです」と苦労を打ち明けた。

■「(青木は)アクションはもちろんだが、演技もすばらしい」(マ・ドンソク)

今回の『犯罪都市 NO WAY OUT』は、前作から7年後が舞台。マ・ソクトは地方の警察からソウル広域捜査隊に異動し、ある転落死事件を捜査するなか、事件の背後に新種の合成麻薬と、日本のヤクザが関わっているという情報を掴む。そして、麻薬を盗んだ者を処理するために暴力団の親分である一条(國村隼)に送りこまれた極悪非道なヤクザの解決屋、リキ(青木崇高)と、消えた麻薬の奪取を目論む汚職刑事チュ・ソンチョル(イ・ジュニョク)、シリーズ初となる2人の最凶ヴィランを相手に三つ巴の激闘が繰り広げられる。イ・ジュニョクは、この役のために20kg増量。これまでの作品で見せてきた“いい人”のイメージを一掃し、とことんダークな一面で魅了する。

そして、これまたシリーズ初となる外国人ヴィランのリキを演じるのが青木崇高。マ・ドンソクは以前から「るろうに剣心」シリーズを始め、青木の出演作をいくつも観ており、「アクションはもちろんだが、演技もすばらしい」と、関心を持っていたそう。「『犯罪都市』はリアリティが大切な作品なので、少しでもニセモノ感が出たらダメなんです。本物の演技ができて、さらにアクションも上手い俳優を探すなかで、改めて彼の出演作を観たところ、本当にいろいろな顔を持った俳優だと感じ、ぜひ一緒にやってみたいと思ったんです」と、オファーの理由を語った。

國村隼についても、マ・ドンソクたっての希望でオファー。今回、残念ながら共演シーンはなかったが、撮影現場で國村の演技を目の当たりにしたスタッフとマ・ドンソクは「カット」の声がかかった途端、感嘆の声を上げ、自然と拍手が沸き起こったそうだ。

■「リキの初登場シーンを見て、作品の成功を確信しました」(マ・ドンソク)

またマ・ドンソクは、青木の演技についても、初登場シーンを見た瞬間、作品の成功を確信し「よし、これでもう終わった!」と大満足したそう。「彼の表情をカメラに収めることができただけで充分。もうほかになにもしなくていい、と思ったんです」と絶賛し、しきりに恐縮する青木に「本当にすばらしかった」と日本語で労をねぎらった。

一方、青木はかねてからマ・ドンソクのファンだったそうだが、「今回オファーをいただいてからは、ファンという意識ではダメだ。共に1つの作品を作る仲間なんだ、と気を引き締めました」と語り、「初めて韓国映画に参加しましたが、兄さん(マ・ドンソク)を中心に良いチームが出来上がっていて、言葉や文化が違っても、映画を作る同志、ファミリーとして温かく迎え入れてくださいました。おかげで、リラックスして役に集中することができたし、アクション1つ取っても、このように信頼関係がなければ思いっきり戦えませんでした」と、良い環境で撮影に臨めたと振り返った。

今回のアクションは、ボクシングをベースにして素手で闘うマ・ソクトに対し、リキは日本刀で闘う。青木は、『るろうに剣心』(12)の殺陣のスタッフに自らオファーして徹底的に準備。本来の斬りつけるスタイルではない新たな日本刀でのアクションを完成させ、その様子を撮影前にマ・ドンソクに送ってフィードバックをもらっていたそうだ。

■「役者だけでなく、プロデューサーとしても活躍しているマ・ドンソクさんの一面を知り、感動しました」(青木)

2人の初対面は、マ・ドンソクのオフィスで果たされた。「作品についてや、今後の展望など、様々な話を聞いて、役者として世界の第一線で活躍しながらプロデューサーとしても活躍している一面を知り、衝撃的で感動しました」と青木が言えば、マ・ドンソクも「私は、良い人々が集まれば必ず良いコンテンツができる、という確固たる哲学を持っているんですが、実際に会ったムネ(青木)は人柄もすばらしく、良いコミュニケーションが取れると思いました」と青木の人間性を絶賛。

撮影中はもちろん、共に食事をしたり、宣伝活動をするなかで、青木の印象は初対面からどんどん良くなり「いまでは本当に大切な弟になりました」と言い、「グローバルエージェントにも紹介しましたし、今後、私が製作する作品で合いそうなものがあれば提案もしていきたい」と、かなりの惚れ込みよう。インタビュー中、マ・ドンソクは青木を「ムネ」と、青木はマ・ドンソクを「兄さん」と呼び合うほど、深い絆が生まれたようだ。

■「韓国のCMや街中で、“マブリー”のかわいい姿を何度も見ました」(青木)

青木に、マ・ドンソクが“マブリー(マ+ラブリーの意味) ”との愛称で大衆から愛されていることについて尋ねてみたところ、「もちろん知っています。韓国のCMや街中で兄さんカワイイ姿を何度も見ました。男らしい強さとユーモラスな面の絶妙なバランスが魅力的で、そんなところが世界中で愛されている理由なんだと実感しました」と、納得していた。

それを聞きながら、指ハートをしたり、カワイイポーズをいくつも見せてくれたマ・ドンソク。ほかにも、インタビューが始まる前に、レコーダーに顔を近づけて「よろしくおねがいしまーす」と日本語で囁いたり、エアコンの風が強くて「(寒くて)口が曲がるかと思いました(笑)」と、ひょっとこのように顔を曲げて変顔をしたり、と“マブリー”全開で魅力爆発。

そんな彼の二面性が「犯罪都市」でもふんだんに表れていて、ハードさとコミカルさがこの作品の魅力だ。シリーズ2作目の『犯罪都市 THE ROUNDUP』ではコロナ禍で劇場に足を運ぶ観客が軒並み減少するなか、韓国での動員数が1000万人を超え、今回の『犯罪都市 NO WAY OUT』でも公開から約1ケ月で1000万人超の快挙を成し遂げたのも納得。映画館の大スクリーンで、前作を上回るおもしろさと爽快さのパンチをぜひ浴びてほしい。

取材・文/鳥居美保

『犯罪都市 NO WAY OUT』で初共演を果たしたマ・ドンソクと青木崇高/[c]ABO Entertainment presents a BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A. ENTERTAINMENT production world sales by K-MOVIE ENTERTAINMENT