レバノン日本国大使にありながら、03年のイラク戦争に反対し、外務省を追われた天木直人氏(76)。19年の参院選に落選してからはメディアに登場する機会もめっきり減った。が、まだまだ国政への意欲は衰えていなかった。

外務省を辞めて以来、20年間メールマガジンの配信は1日も欠かしたことはありません。現在は15年に立ち上げたインターネット政党『新党憲法9条』のもとで言論活動をしています」

 と、天木氏はみずからの現状を説明する。その言論活動の一環として先頃、刊行された書籍がある。「世界平和に貢献する韓日協力-李洛淵の構想︱」(展望社刊)だ。

 著者の李洛淵氏は韓国の前政権にあたる文在寅大統領のもとで国務総理を務めた人物。その役職は、おおよそ日本でいえば副総理にあたるという。その人物が、今後の韓国が採るべき外交戦略を中心に語った書籍を昨年5月、韓国国内で刊行。その日本語版が、このほど出版されたというわけだ。

 この日本版刊行の仕掛け人こそが天木氏なのだ。続けて、こう説明する。

「出版社(展望社)が出したいという意向を持っていて、それならば私が仲立ちしましょうとなり、今回の刊行に至りました。私は外交の専門家として、現在の日本や韓国が採っている対米従属の外交姿勢はマズいと思っている。その点、李さんの主張とは一致しています。今後の日韓外交に資すればと思い、出版に協力した次第です」

 実は、著者の李氏は韓国で注目を集めている人物。与野党の2大勢力を離党した政治家による4つの少数政党を糾合して、1月に新党を結成したのが李氏である。4月10日には韓国での総選挙が予定されており、李氏が第3勢力として韓国政治のキャスティングボートを握るかもしれない存在と目されているのだ。

 となると、今後の日韓外交のキーマンとして天木氏が再浮上してくる可能性があるかもしれない。

 外務省退職後の05年、天木氏は小泉純一郎元総理のお膝元である神奈川11区から無所属で出馬して完敗。以来4度、国政に挑戦してはいずれも敗れている。まずは再出馬を急がねばならないのではないか。

「再出馬ですか。もし出るとしたら自民党から。ただし、今の政治のゴタゴタから自民党が割れて政界再編が起きて、平和の党として生き残った勢力があればの話ですがね」(天木氏)

 李氏よろしく、既存の保守とリベラルの行き詰まりを打開したいのだろう。韓国の政策提案本を日本で刊行したのも、天木氏なりの深謀遠慮があってのことと思われる。

「でも、そうならずに、日本が没落していくのを見届けるだけになるかもしれませんが‥‥」(天木氏)

 とはいえ、天木氏の声色には不思議と絶望を感じさせるものはなかった‥‥。

アサ芸プラス