隣接している都道府県どうしにも関わらず、クルマで往来できる道が1本だけ、というところが何か所かあります。2本以上あるものの、かなりの秘境というケースも存在します。

道が1本だけの県境とは?

隣接する都道府県であれば、接する面積が少ない自治体どうしでも、往来する道はあるはず……と思いきや、それが1本しかないという「県境」が日本にはいくつかあります。

長野県~富山県

長野県富山県のあいだは、黒部ダム建設のために掘りぬかれた「関電トンネル」だけが結んでいます。このトンネルは様々な乗りものを乗り継いで移動する「立山黒部アルペンルート」に組み込まれており、長野県側の扇沢駅と富山県側の黒部ダム駅とのあいだで電気バスが運行されています。

これが、県境を移動する唯一の移動手段となっており、自家用車での往来は不可。車道ではあるものの、実質的にクルマで行き来できない県境となっています。なお、冬季は閉鎖となります。

岐阜県~石川県

岐阜県石川県のあいだは、有料道路の「白山白川郷ホワイトロード」が唯一の道です。岐阜県白川村石川県白山市を東西に結ぶ33kmの観光道路は、普通車で片道1700円。こちらもやはり冬季は閉鎖されます。

埼玉県~長野県/埼玉県~山梨県

埼玉県長野県は、秩父市と川上村で10km強にわたり県境を接しています。この両県を行き来できる唯一の車道が、通称「中津川林道」です。かつて有料の林道だったころの名称ですが、現在は秩父市道・川上村道となっています。

無料で通行できるものの、大部分が未舗装のダート道路で、冬季閉鎖かつ通行可能期間も夜間は通行止め。県境の三国峠は標高1700mを越えます。

埼玉と山梨の間も、国道140号「雁坂トンネル有料道路」がクルマで通れる唯一の道です。1998年の開通以前は、県境部で古来からの秩父往還にあたる登山道が国道140号に指定されていました。

この雁坂トンネルは、埼玉県関越道花園ICを起点に、山梨の甲府までを結ぶ高規格道路「西関東連絡道路」の一区間に位置付けられています。圏央道の外側で山梨~群馬方面を直結する道路として、国道140号沿いでは各所で改良が進行中。かつて「開かずの国道」といわれた埼玉~山梨県境部も、大きく変貌しようとしています。

1本だけじゃないけど……な県境も

道は2本以上あるものの、かなり険しかったり、県境そのものが珍妙な形をしていたりするケースもあります。

群馬県新潟県

高速道路である関越道で結ばれていますが、一般道は、国道17号しか通じていません。県境の三国トンネルは2021年「新三国トンネル」経由の新道に付け替えられ、旧道は閉鎖されました。長さ1万mを越す関越道関越トンネルは、危険物積載車が通れないため、国道17号が唯一の県境越えルートになるクルマも少なくありません。

なお、関越道上越新幹線の東側を通る国道291号もかつて県境越えルートでしたが、現在、県境部は実質的に登山道となっています。

静岡県長野県

「秋葉街道」と呼ばれる国道152号が通じていますが、県境の「青崩峠」前後は廃道同然となっており、クルマで行き来するには並行する「兵越林道」を通ることになります。このルートとは別に、外からのアプローチが極めて困難な「秘境駅」を多く抱えるJR飯田線に近いところを通る「林道天竜川線」も両県を行き来できます。

ただ、国道152号に沿って高規格道路である「三遠南信道」の建設が進んでおり、県境の仮称「青崩峠トンネル」も2023年に貫通しました。開通見込みは発表されていないものの、両県が飛躍的に往来しやすくなる日もそう遠くなさそうです。

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ちなみに群馬~福島県境は、海で隔てられているケースを除けば日本で唯一、車道が1本もありません。この県境部には尾瀬の自然が広がっています。

この記事で紹介したような林道は、しばしば災害で通行止めになるほか、走行環境も決してよいとは言えません。実際に走る場合は最新の情報を確認することはもちろん、走行に不安を感じたら自重してください。

ある県境を往来する唯一の道となっている「中津川林道」(画像:写真AC)。