大川七瀬先生、いがらし寒月先生、猫井椿先生、もこな先生の4名から成るクリエイター集団「CLAMP」。
1989年のデビューから30年以上に亘り第一線を走り続け、名実ともにヒットメーカーとして知られた彼女たちの作品は、ジャンルを超えて幅広い読者に愛されていますよね。
今回は生涯現役を貫くCLAMP先生の作品を、傾向や作風が一目でわかる、オリジナルチャートに振り分けていこうと思います。CLAMP作品オリジナルチャート
CLAMP先生作品オリジナルチャート
ぜひ目次から気になった作品へ飛んでみてください！
聖伝ーRG VEDAー
1989年「月刊ウィングス」初出の『聖伝―RG VEDA―』は、CLAMP先生の商業デビュー作にあたります。
古代インド神話の世界をベースに神々の戦いを描いた壮大なサーガは、男女ともに美形が揃い踏みする華やかな絵面と、緻密なディティールでもって人気を集めました。
横暴な天帝に反逆した6人の戦士の運命、色々と極まった男同士の友情や反目が生み出すドラマの骨子は、のちのCLAMP先生作品にもしっかり受け継がれています。
粗削りだからこそ他に替え難い勢いがある、CLAMP先生の原点を押さえたい方は履修してください。
渡瀬悠宇先生の『ふしぎ遊戯』や田村由美先生の『BASARA』、アニメ『魔道祖師』にハマった方はきっと気に入るはず。
20面相におねがい！！
1989年「コミックGENKi」初出の『20面相におねがい！！』は、CLAMP学園初等部3年の伊集院玲がお母さんのおねだりに負け、仕方なく怪盗になる物語。
主人公が弱冠9歳の少年というのも驚きですが、公式ヒロインに至っては小学1年生の6歳！
CLAMP先生作品史上最年少なのはもちろん、他の漫画でもなかなか類を見ない若さ……否、幼さではないでしょうか？
半ズボンを穿くために生まれてきたようなショタっ子大好きなお姉さんがたは、お母さんズ（何故か2人いる）の「欲しいんですのー！」に振り回される玲のドタバタっぷりや、ヒロインやライバルとの追いかけっこに頬が緩んでしまいますよ。
難しいことは何も考えず楽しめるズッコケ怪盗コメディなので、思いきり笑いたい時にピッタリ。
本作が楽しめた方には杉崎ゆきる先生の『D・N・ANGEL』をおすすめします。
東京BABYLON
若き陰陽師・皇昴流と双子の姉・北都、暗殺集団桜塚護の末裔・星史郎が、東京で発生する様々な事件に関わる伝奇アクション。
序盤は『×××HOLiC』に近い作風をしており、短い話数で完結するエピソード中心。
いじめ・自殺・カルト・老人介護などの社会問題に心霊を絡めた話は総じて後味悪く、大都会東京の暗部を覗き見るようでぞくぞくしました。
「好きだ」「僕ってセクシーですか？」が口癖の星史郎と昴流のニアBLな関係や、それを面白がって煽る北都も微笑ましい。
後半は星史郎・昴・北都の3人を起点とする勢力の趨勢に比重が移り、桜塚護の非情な掟や過去の掘り下げを経て、全読者が戦慄を禁じ得ない衝撃の結末が訪れます。
青年×少年の愛憎の縺れが好物の腐女子は、北都を襲った悲劇を境に決裂した、2人の因縁の終着点に注目してください。
CLAMP学園探偵団
CLAMP学園初等部生徒会の名物トリオ、妹之山残・鷹村蘇芳・伊集院玲が、様々な問題を抱え生徒会を訪れた依頼人の為に、マンモス学園を走り回る痛快コメディ。
『20面相におねがい！！』の主人公・玲がレギュラーとして固定化されているのが、前作ファンには嬉しいサービスですね。
タイプの異なる見目麗しいショタがそれぞれの特技を生かして助け合い、女生徒たちの悩みを晴らすお手伝いをするストーリーは、笑いあり涙ありで読後感スッキリ。
探偵団といっても人が死んだり殺されたりはせず、ちょっとした盗難事件や幽霊騒動が中心となる為、子供から大人まで安心して読めるのが長所。
見た目は子供中身は紳士な生徒会トリオが、ノブレスオブリージュの精神や、レディファーストを徹底しているのも好感が持てました。
X
1992年「月刊ASUKA」初出の『X』は、世紀末の東京を舞台に、人類を穢れと見なし滅ぼさんとする地の龍と、人類存続を求める天の龍の戦いを描いた漫画。
天の龍・地の龍ともに各7人が選ばれており、総勢14人の男女の運命が交錯する、ドラマチックな群像劇が大きな魅力となっています。
『東京BABYLON』の主人公・昴流が天の龍に、彼の双子の姉・北都を惨殺したのち、袂を分かった宿敵・星史郎が地の龍に属しているのも無視できません。
天の龍陣営として覚醒を遂げた神威と、地の龍に与した親友・封真の切なすぎるすれ違いには、ハラハラドキドキが止まりませんでした。
新・春香伝
1992年「セリエミステリーSPECIAL」初出の『新・春香伝』は、朝鮮の有名な伝承『春香伝』を翻案したアクション漫画。
お転婆で跳ねっ返りな良家の令嬢・春香が、恋人の暗行御史・夢龍と国を旅して回りながら、民を虐げる悪党たちを懲らしめていきます。
一言でまとめればCLAMP版『水戸黄門』のような話で、春香＆夢龍バディの悪党退治がテンポ良く描かれていく為、娯楽活劇が好きな方にピッタリ。
かっこよさと可愛さを兼ね備えた春香の凛々しさには、女子も夢中になりますよ！
高麗時代に実在したお庭番・暗行御史を取り上げた日本人漫画家は、CLAMP先生が最初かもしれません。
本作を読んで暗行御史の実態や高麗の歴史に興味が出た方は、尹仁完先生＆梁慶一先生の伝奇アクション漫画、『新暗行御史』をぜひ読んでください。
不思議の国の美幸ちゃん
1993年「Newtype」初出の『不思議の国の美幸ちゃん』は異世界転移ものの先駆け。
ふとしたきっかけで不思議の国に迷い込んでしまった女子高生・美幸ちゃんが、美人で色っぽいお姉さまたちに二重の意味でいじり倒される、ナンセンスな百合百合ハーレムコメディーに仕上がっています。
あらゆるタイプを取り揃えた美（少）女軍団が、かわいそかわいい美幸ちゃんをちやほや愛でまくる光景は大変眼福。
『カードキャプターさくら』の桜と知世の関係が刺さった人は、本作で本格的に百合に開眼するかもしれませんね。
魔法騎士レイアース
1993年「なかよし」初出の『魔法騎士レイアース』は、滅びに瀕した異世界に召喚された中学生3人が、戦いに巻き込まれるファンタジー漫画。
剣と魔法の王道RPG風異世界に巨大ロボットを投入し、少年漫画と少女漫画の熱血ハイブリッドな、独特の世界観を生み出しました。
心根正しく猪突猛進な光、高飛車お嬢様の海、おっとり癒し系の風……同じ日同じ時間に東京タワーに居合わせた以外まるで接点がなかった3人が、セフィーロで様々な出会いと別れを体験していくのが本作の見所。
旅にお供するマスコット・モコナの愛くるしさは特筆に値します！
中学2年生に戻って異世界を冒険したい方、必読ですよ。
Wish
1995年「ミステリーDX」初出の『Wish』は、心優しい中性天使・琥珀と、彼女（彼）を拾った医者の青年・栩堂琇一郎の同棲ライフを描いた恋愛ファンタジー。
人間×人外のラブストーリーはCLAMP先生の得意分野でもあり、本作においても2人が過ごす穏やかな日常や、距離を縮める過程を丁寧に描いて感情移入を促しました。
ちょっとコワモテな琇一郎が垣間見せる不器用な優しさ、そんな彼に惹かれていく琥珀のピュアさが尊すぎて、ニヤニヤが止まりません。
されど琥珀は天使の卵を孵す大任を帯び、いずれ天界に帰らねばならず、地上の人間と結ばれることは絶望的。
両思いの喜びに浸るも束の間、外圧に引き裂かれた2人は障害を乗り越え、今度こそ幸せになれるのでしょうか？
天界と下界を股にかけた禁断の恋の行方、悪魔・天使・転生者を交えたバトルの行く末をぜひ見届けてください。
カードキャプターさくら
1996年「なかよし」初出の『カードキャプターさくら』は、スポーツ万能な小学4年生・木之本桜が、封印の獣・ケルベロスと出会い、町内に散らばってしまったクロウカード回収に乗り出す話。
ただの魔法少女ものと侮るなかれ、彼女が着るのは親友・大道寺知世がたっぷり愛情こめたハンドメイドコスチューム……早い話がコスプレ。
エピソードごとにテーマをもうけ衣装チェンジしてくれるサービス精神、変身じゃないからこそ自分もまねできると思える身近さが、おしゃれ好き女子の心をガッツリ掴みました。
アクロバティックにステッキを振り回し、ローラースケートで颯爽と駆けてく桜の姿は、フリフリ衣装の華やかさも相俟って応援したくなること間違いなし！
香港から転入してきた生意気男子・李小狼、桜の兄・桃矢の親友で彼女の初恋相手・雪兎など、他にも魅力的なキャラクターが大勢登場し、ストーリーを盛り上げています。
ぽやぽや笑顔で小学生を魅了する魔性のお兄さん・雪兎と桃矢の行き過ぎた友情、自他ともに認める桜ちゃんファン・知世の饒舌トーク、小狼と桜の初々しい恋模様には妄想がはかどりました。
関西弁を喋るゆる～いマスコットキャラ、ケロちゃんもラブリーです！
CLOVER
「月刊Amie」初出『CLOVER』は、機械仕掛けの羽を生やした薄幸の少女と、彼女を目的地まで送り届ける仕事を請けた元軍人の旅路を描く、アポカリプスファンタジー。
最愛の歌姫・織葉を亡くした和彦とその遺志を継ぐスウの交流が見所で、既存のCLAMP先生作品にはないメランコリックな雰囲気が、仄暗い話を好むファンに根強く支持されています。
繊細な筆致が紡ぐ退廃的世界観は峰倉かずや先生の『Stigma』、ジブリの短編アニメーション『On Your Mark』にも通じており、感情の希薄な美少女と元軍人の逃避行に惹かれる読者なら、まず間違いなく気に入るはず。
すき。だからすき
お気に入りのテディベアを肌身離さず持ち歩き、ことあるごとに話しかける少し不思議な女子高生・旭ひなた。
広い豪邸に何故か1人で暮らす彼女のお隣に、新担任の麻生先生が引っ越してきた所から始まる、ほのぼのしたラブストーリーです。
CLAMP先生作品には珍しい日常もので、魔法や不思議な能力は出てきません。
包容力に富む大人の男性と純真な少女の組み合わせにときめくなら、作中に流れる日だまりのように優しい時間に癒されます。
好きな人がご近所さんだったらと想像したことがある方、リアル・フィクション問わず学校の先生に憧れた経験がある方は、ひなたに共感を覚えるかもしれません。
ANGELIC LAYER
1999年「月刊少年エース」初出の『ANGELIC LAYER』は、卵型カプセルから誕生した天使（エンジェル）と呼ばれる人形を操る格闘ゲームの話。
和歌山出身の中学1年生・鈴原みさきが、上京時に手に入れた卵を孵し、相棒の天使・ヒカルとトップを目指します。
ヒカルのモデルは『魔法騎士レイアース』の主人公の1人・獅堂光、新旧主人公の共演に喜んだファンも多そうですね。
運動音痴なものの突出した動体視力を誇り、ライバルたちとの戦いを経て急成長を遂げてくみさきの姿は、逆境に負けじと頑張る女の子好きな読者に刺さるはず。
男女問わずお嫁さんに望まれるほど家事上手な長所に加え、周囲に愛されのびのび育ったことがわかる素朴で優しい性格、友達やライバルに向ける実直な思いやり、「な～」の口癖にほわわんと和みます。
CV小野坂昌也、白衣・眼鏡・関西弁の三拍子が揃った天才科学者・三原一郎も、エキセントリックな言動を自重しないサポート役として輝いていました。
ちょびっツ
2000年「週刊ヤングマガジン」初出の『ちょびっツ』は、ゴミ捨て場で拾われた美少女型情報端末・ちぃと、機械音痴の浪人生・本須和秀樹が中心となるラブコメ漫画。
一歩間違えば「あざとい」と受け取られてしまいかねない記号的萌え要素を、同性も共感できる「可愛さ」に落とし込んでヒロインとして成り立たせた、CLAMP先生のお手並みは見事！
全裸にテープぐるぐる巻きの初登場時のインパクトもさることながら、秀樹と暮らすうちに恋を知りやきもちを覚え、ともすれば幼女のように懐っこい表情や大人びた哀しみの表情を見せるちぃには、大変庇護欲をくすぐられました。
人型家電が店頭にディスプレイされたIFの世界線も、SFマニアにはたまりません。
合法ドラッグ／ドラッグ＆ドロップ
2011年「ミステリーDX」初出の『合法ドラッグ』は、雪の日に行き倒れていた青年・栩堂風疾と、彼を助けた火群陸王が、特殊能力を駆使して事件解決に当たるバディサスペンス。
風疾は人や物に触れることで過去の記憶を見抜く能力を、陸王は直接触れず念じるだけで物を壊す能力を備えていて、下宿先の薬局の営業終了を待ち、客が持ち込んだ依頼を遂行する二重生活を送っています。
一部設定は『こばと』『×××HOLiC』『すき。だからすき』『Wish』とクロスしており、前作キャラの後日譚が覗けるのが嬉しいサプライズでした。
スッキリシンプルに整った絵柄は『×××HOLiC』に近く、スタイリッシュなモノトーンが映えています。
公式で美形女顔の風疾がたびたび女装させられるのもおいしく、彼をいじって遊ぶ陸王の意地悪さや、濃密なスキンシップにきゅんとしました。
『×××HOLiC』の四月一日と百目鬼の関係が刺さる人、アニメ『時光代理人』が好きな方におすすめです。
×××HOLiC
2003年「週刊ヤングマガジン」初出の『×××HOLiC』は、対価を支払えばどんな願い事も叶えてくれる不思議な店の主人・壱原侑子と、アヤカシに憑かれやすい体質の高校生・四月一日君尋の物語。
ミステリアス美人な女王様（実は酒豪）と家政夫バイトのコミカルな掛け合いが楽しめる一方、幽霊や妖怪が関わる事件を四月一日＆百目鬼の凸凹コンビが解決する、オカルティックファンタジーとしても読みごたえバッチリ！
当初は犬猿の仲だった2人が固い友情で結ばれ、お互いの為に命を賭すまでになる変化は、ケンカップル好き腐女子のハートを掴んで離しません。
料理上手な四月一日が侑子の為に用意する四季折々の酒の肴もおいしそうで、読んでるとお腹がすいてきます。
『東京BABYLON』の初期のトーンが好きな方、『合法ドラッグ』でバディ萌えした方に、自信を持っておすすめしたい作品。
ツバサーRESERVoir CHRoNiCKEー
『ツバサーWoRLD CHRoNiCLE―』は、2003年「週刊少年マガジン」初出の漫画。
CLAMP先生作品の様々な登場人物が一堂に会すパラレルワールドもので、玖楼国の姫・サクラと従者の小狼、知世姫の命令を帯びた忍者・黒鋼、次元移動魔術を修めた魔術師ファイ・D・フローライトが中心人物となります。
モコナの助けを借りて次元を渡り、各世界の問題を解決しながらサクラの記憶のカケラを集める一行の冒険と、旅の過程で育まれる仲間の絆が最大の見所。
『カードキャプターさくら』とはまた異なり、スタート地点から相思相愛な主従幼馴染カップルの行く末を見守れるのも、ファンには感慨深いです。
連載が並行していた『×××HOLiC』と密接にリンクしており、双方ともに核心部分を補完し合っているので、ぜひ読み比べてくださいね。
こばと。
2005年「月刊サンデーGX」初出の『こばと。』は、人の傷付いた心のかたまり「コンペイトウ」を集めることで、自分の願いを叶えようと頑張る天然ドジっ娘・花戸小鳩の話。
設定が渋滞してないぶんCLAMP先生作品の中では読みやすいファンタジーに分類され、度を越した世間知らず故にコンペイトウ回収に悪戦苦闘する小鳩の日常と、彼女がお手伝いに入ったよもぎ保育園の保育士・藤本との、ハートフルな恋模様が描かれていきます。
ドールみたいなフリルに埋もれた主人公の可愛さと、頑張り屋の小鳩にだんだんほだされていく、藤本のツンデレっぷりをお楽しみください。
GATE7
2010年「ジャンプスクエア」初出の『GATE7』は、裏の世界で異形が跳梁跋扈する京都を舞台に、華街の住人・はなと高校生・高本致佳人の交流を描いた伝奇ファンタジー。
伊達政宗・真田幸村・細川ガラシャほか、有名な武将とその関係者が続々と生まれ変わり、前世の決着を現代に持ち越し激突するストーリーは、円熟期に達したCLAMP先生の画力に支えられ、華々しいアクションでもって魅せてくれました。
『刀剣乱舞』や大河ドラマ経由で戦国史にハマった歴女は必読です！
新作に乞うご期待！CLAMP先生作品から目が離せない
以上、CLAMP先生が送り出した新旧の名作を紹介しました。大半の作品が映像化され、完結後もメディアミックスの話が絶えないあたり、長い間併走してきたファンの情熱が伝わりますね。
あなたのイチオシはどの作品ですか？
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