反響の大きかった2023年の記事を厳選、ジャンル別にトップ10を発表してきた。今回は該当ジャンルがなかったが実は大人気だった記事を紹介する!(集計期間は2023年1月~10月まで。初公開2023年10月12日 記事は取材時の状況です)
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 自動車を運転中、車間距離を詰められたり、蛇行運転をされてスムーズに進めなくなったりした経験はないだろうか。このような「あおり運転」が社会問題化し、道路交通法が改正。2020年6月30日には「あおり運転」に対応する「妨害運転罪」が創設されている。

 ドライブレコーダーのない車で県外へ出張中、恐ろしい体験をしたというのが三船笑子さん(仮名・32歳)。10年以上が経ついまも、テレビやネットニュースで報道されるたびに嫌な気持ちになると言い、「あおり運転」から逃れることができた体験について話してくれた。

◆ナビに誘導されてひとけのない道に

出張先だったその県へは何度も行ったことがありました。運転していたのは、私。そのとき助手席に同乗していた後輩とは何度も出張をともにしていたこともあり、2人が好きなアーティストの曲をかけては歌うなど、楽しく目的地へ向かっていました」

 その目的地は今回はじめて行く場所だったため、ナビに誘導されて進んでいた三船さん。そのうち、整備された走りやすそうな一車線道路なのに、車両や自転車歩行者がいない道へと誘導されたのだとか。

「道から少し離れたところに住宅街が密集している、静かな一車線道路。その道を走行していると、前に1台、赤い車がみえてきました。最初は普通に走行しているようにみえたのですが、どんどんと距離が縮まり、前の車が速度を落としているのに気づいたのです

◆目の前の赤い車が減速してくる

 すぐに速度を落としながら車のスピードメーターを確認したが、法定速度。同乗者と、「どうしたんだろう?」「道に迷ったのかな?」などと話していると、赤い車はついに止まるような速度で走行をはじめ、路肩に止まるような雰囲気を見せた。

「そして、路肩の方にだいぶん寄って行き、停車する寸前ぐらいスピードも落ちていたのです。そこで仕方なく、赤い車を追い抜こうとアクセルを踏み込みました。次の瞬間、赤の車がハンドルを切って目の前に飛び出してきたのです。それはもう、びっくりしました

 ヒヤリとしただけでなく、ハンドルを握っている手が汗でヌルっとしたという三船さんだが、すぐにブレーキを踏んで車間を保つ。すると赤い車は急ブレーキをかけ、さらには車体を右へ左へと揺らしながら、蛇行運転を開始。進行方向を妨げた。

◆はじめて体験したあおり運転の被害

気持ち悪いので、赤い車が去ってから運転を再開しようと、車を路肩に停めてしばらく待つことにしたのです。でも、こちらが路肩に寄って止まると赤い車も少し前で停車し、私たちが路肩から一車線道路へ出ようとすると、赤い車も出てくる繰り返しがはじまりました」

 また、路肩に停車し続けて、前方の車から変な人が怒鳴ってくるのも怖いと思ったとか。三船さんの助手席は男性だったが、よく女性に間違えられるほど線が細い10代で、煽られているこの状況に、すっかりビビリまくっていた。

同乗者は、できるだけ窓から見えないように、身体を縮めて怖がっている状況。とても何かを相談できる状況ではありませんでした。赤い車が走り去るのを待つこともできないし、前にも進ませてくれない。Uターンをするにも危ない状況が続きました」

◆「警察って、何番でしたっけ?」

 また、かなり車間を空けて走行していると、赤い車が普通に走行を開始。そのため、「気が済んだのかな?」と三船さんが普通に走りはじめると、また急ブレーキをかけてくるので、抜くに抜けない。路肩に停止し続けるのも、赤い車から変な人が降りてきそうでできなかったという。

 三船さんは違う道を行きたかったが、妨害のせいでたいして進んでいないため、曲がり角なども見当たらない。そうこうしているうちに赤い車は、ほかの車がいないこといいことに、1車線道路にもかかわらず対向車線側を走行。運転手はこちら側をみてニヤニヤしはじめたのだ。

「一車線道路には、私たちの乗った車と赤い車の2台しかいない。これは最悪、車がぶつかるまで終わらないかもしれないと思い、同乗者に警察へ電話するよう指示しました。同乗者は『警察って、何番でしたっけ?』とパニックになっていましたが、なんとか110番へ」

 スマホから漏れてくる警察の声が、相手ナンバーについて尋ねているのが聞こえた。それに答えようと、同乗者がスマホを持ったまま運転席のほうに身を乗り出す。そしてその後も、同乗者は何度も運転席側へ身を乗り出しながら、赤い車の特徴を伝え続けた。

ドライブレコーダーの必要性を痛感

すると、少しして赤い車の動きが鈍くなり、こっちを見て会釈。スーッと私たちの車を追い抜いたかと思うと、猛スピードで走り抜け、ウインカーも出さずに遠くのほうにあった曲がり角を左折していきました。きっと、警察に電話されていることを悟ったのだと思います」

 この体験から三船さんは、「同乗者がいる場合は、警察に電話しているのがわかるようスマホをチラつかせたり、スマホを指さしたりして相手にみせるのも、あおり運転から逃れるための手段になるのではないかと思います」と話し、次のようにアドバイスしてくれた。

「また、煽られた経験から、ドライブレコーダーは多方向から常時録画してくれるタイプで、エンジンを切ってからも録画できるバッテリー保護機能が搭載の“駐車監視モード付ドライブレコーダー”がおすすめです

 自宅から一歩外に出れば、あおり運転に遭遇する可能性はゼロではない。安全運転を心がけたり、ドライブレコーダーを設置したりするなどの対策はもちろんのこと、あおり運転を上手に回避した人たちの話も参考にして走行したいものだ。

<TEXT/山内良子>

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意