ラブホテルを利用するのは、恋人同士や夫婦に限らない。不倫や浮気、肉体関係のみという人もいる。そこは特殊な空間だけに、珍ハプニングが起きることも……。都内在住のアニメ監督・闇鍵でぃーきぃーさんは、「熟女キャバクラ嬢のお姉様と嵐のような一晩をラブホで過ごし、のちに衝撃の事実が発覚した」という。いったい何があったのか。

◆女装男子と熟女キャバクラ嬢の出会い

「10年くらい前の話です。当時の僕は“女装男子”として都内のBARでバイトをしていました。僕自身はノンケで女性が好きなんですが、ちょうど女装男子が流行り始めた時期だったので、面白そうだなって思って。そのBARで知り合ったのが、熟女キャバクラ嬢の桃ちゃん(仮名)です」

 桃さんは同じビルの熟女キャバクラで働く年齢不詳の既婚者。闇鍵さんが勤めていたBARには、仕事の前後によく来ていた。

「年齢を聞くたびに32~38歳の振り幅で答えが変わっていたので、本当はいくつだったのか分かりません。『この人、若い頃はギャルだったんだな』と分かる見た目で、僕の好みではなかった。でも、いろんなお客さんと同伴やアフターで来てくれていたので、人気があって売れているようでした」

 ふたりはBARの店員と客の距離感で仲良くしていたという。しかし大型台風が関東にやってきたある日、事件は起こった。

◆「何もしないから」と約束してラブホ飲みへ

「その日も桃ちゃんが仕事終わりに飲みに来ていました。始発の時間になって、そろそろ店を閉めようとなったんですが、台風のせいで電車が出ないと分かって。どうしようかと話していたら、桃ちゃんに『電車が動くまでホテル飲みしようよ』とこっそり耳打ちされたんです」

 じつは闇鍵さん、このときまでラブホテルに行ったことがなかった。それを知っていた桃さんは、「ラブホ行ったことないんでしょ? なら一緒に行ってあげるよ」とささやいてきたのだそう。

「心の中で『飲むだけじゃ終わらないだろうな』とは思っていました。だって彼女、誰とでも寝るって有名だったんですよ。当時は『誰が年上のババアとヤるかよ』と思っていたので、『飲むだけならいいよ。絶対にやらないからね』と念を押して、ホテルに向かいました」

 なら行かなければいいじゃないか……と思ったが、そこは「ラブホテルという場所への好奇心に負けてしまった。冒険がしたかった」とか。

◆貞操の危機を感じて風呂場に逃げる

 ふたりは店を出てコンビニで酒を買い、適当なホテルの空いている部屋に入った。

「こんな感じなのか~と部屋の中をきょろきょろ見ていたら、桃ちゃんが『疲れてるでしょ?お互い化粧落とそうよ。お風呂入っておいで』と言うんです。何の疑いも持たないままシャワーを浴びに行き、ガウンを着て部屋に戻りました。すると彼女が『すっぴんは男の子なんだね』とスマホを向けてきたんですが……様子が明らかにおかしくて。腰がへこへこと動いているし、息は荒いし。完全に“その気”になっていました」

 顔を赤くしながら腰を揺らめかせ、何枚も写真を撮る桃さん。彼女の様子に「ヤバイ!」と感じて距離を取るも、じりじりと近づいてきたという。

「いよいよ『ねぇ、しようよ』と言われたので、『しないって言ったでしょ!!』って突っぱねました。言い合いが続いているうちに貞操の危機を感じたので、風呂場に逃げて籠城を決め込んだんです」

 風呂場のドアを閉めて立てこもった闇鍵さん。「出てきてほしい」と懇願する桃さん。地獄の攻防戦が始まった。

「ドアに鍵なんてないので、一生懸命押さえて開かないようにして。最初は彼女も力づくで開けようとしていましたが、だんだん疲れてきたのか、ドア越しに僕を呼ぶ声が弱々しくなりました。そこを見計らって『何もしないと誓え!!』と叫ぶと、『襲わないと誓うから出てきて!』と。『本当だな!? 本当に襲わないな!?』と念を押してから、やっと部屋に戻りましたよ」

 決死のやり取りに疲れたのか、その後の桃さんは大人しかった。「電車が動いたみたいだから」と出ていく彼女の背中を見送り、闇鍵さんはひとりでラブホを満喫して帰ったそうだ。

◆やりとりを“実況”されていたと発覚

 その後、桃さんは気まずさからBARには姿を見せず……なんてことはなく、この出来事をきっかけに、ふたりの友情はなぜか深まったのだとか。

「他のお客さんにイタズラを仕掛けて遊ぶようになったり、僕が別の店に移ったときもわざわざ来てくれたり。去年僕が間違えてLINEを消してしまうまでは連絡を取っていました」

 いい話で終わるかと思いきや、じつは“後日談”があった。

「数年後、飲みに入った店で、同年代の男性と喧嘩になりました。なんやかんやあって彼と仲良くなったんですが……そいつの母親が、例の熟女キャバクラで働いていた人でした。もちろん僕も知っている人です。世間の狭さに驚きましたね」

 親子で居酒屋を開くと聞き、挨拶に行った。友人の母である元熟キャバ嬢のアケミさんは「久しぶりだね」と温かく迎えてくれた。

 顔見知り同士、懐かしさから話が弾んでいたところ、「そういえば桃ちゃんラブホに行ったことあるでしょ」と聞かれたそうだ。

「なんで知っているのか不思議がっていたら、『だってあのとき、桃ちゃんがLINEグループで実況していて、お店のみんなで見ていたもーん』って。やたらと僕の写真を撮っていたのは、そういうことだったのか……」

 数年越しに発覚した衝撃の事実。桃さんからしてみれば、「普段女装しているあの子の“男の部分”がついに見れる」という楽しみもあったのかもしれない。

 彼女に迫られたときは、『ババアとヤってたまるか!』と頑なに拒否した闇鍵さん。しかし……。

「じつは桃ちゃん事件の半年後に、50歳の女性の口車に乗せられてヤっちゃったんですよ……年の功ってすごいですねぇ」

<取材・文/倉本菜生>

【倉本菜生】
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0

―[ラブホの珍ハプニング]―


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