道を歩いていて、「歩きスマホ」をしている人とぶつかってしまった経験がある人は少なくないと思います。もし、コチラが歩いていて、前方不注意など集中力が散漫になっている時に「歩きスマホ」をしている人にぶつかられ、けがを負ってしまったり、持っていた物が壊れてしまったというケースで、慰謝料などの請求はできるのでしょうか? そこで、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのりさんに疑問を聞いてみました。

歩きスマホ」による接触は「重過失致傷罪」 慰謝料の請求は…

Q.まず、「歩きスマホ」をしている人が、通行人と接触した場合、どんな罪が科されるのでしょうか。

佐藤さん「『歩きスマホ』をしている人が、通行人と接触してしまったとしても、それだけで罪に問われることはありません。歩きスマホをしているときに、通行人とぶつかる場面では、通常、故意にぶつかったのではなく、過失でぶつかってしまったものと考えられます。そのため、暴行罪といった故意犯は成立しません。

一方、歩きスマホをしながら通行人と接触し、相手にけがを負わせてしまった場合、過失傷害罪に問われることはあります(刑法209条)。過失傷害罪の法定刑は『30万円以下の罰金または科料(1000円以上1万円未満の金銭を支払わされる刑)』です。

歩きスマホをしていた状況などによっては、重過失と評価され、相手にけがを負わせてしまった場合、重過失致傷罪に問われることも考えられます(刑法211条)。重過失致傷罪の法定刑は『5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金』です。

なお、歩きスマホについては、条例で禁止している自治体もあります。歩きながらスマホを見ると、どうしてもそちらに気をとられ、事故につながるリスクがありますので、避けましょう」

Q.ずばり、「歩きスマホ」をしている人と不注意でぶつかってしまい、転んで手首をねんざした、尻もちをついて打撲をしたといったけがを負わされた場合、慰謝料などは請求できるのでしょうか?

佐藤さん「歩きスマホをしている側にも、ぶつかってけがを負った側にも、不注意があった場合、双方の不注意の割合に応じた金額になりますが、治療費などの損害賠償を求めることができます。

ねんざや打撲といった軽傷であっても、精神的損害に対する慰謝料も認められることが多いです」

Q.では、持っていた物が壊れたといった場合、損害賠償などは請求できるのでしょうか。

佐藤さん「物が壊れてしまった場合も、同様に、損害賠償請求することが可能です。双方に過失があった場合は、全額の支払いが認められることはなく、過失割合に応じた金額になります。

なお、大切な物が壊れてしまった場合、精神的ショックを受けると思いますが、慰謝料は認められません。財産的損害の賠償によって精神的苦痛も慰謝されることになると考えられているからです」

オトナンサー編集部

「歩きスマホ」による接触は…