●旨いものが集まる大阪・天満で行列ができる名店『千草』。人気メニューの「焼きそばチャンポン)」と「千草焼き」を食べてきた。

 大阪の玄関口・新大阪から電車で15分ほどの場所にある天満エリア。全長2.6キロにも及ぶ天神橋筋商店街は、老舗の喫茶店居酒屋、日用雑貨に衣料店など、600店ほどがずらりと軒を連ね、地元民や観光客でいつも賑わっています。

 商店街から一歩入った細い路地の先に、昭和24年創業の老舗お好み焼き店『お好み焼 千草(以下、千草)』があります。初めての人なら見過ごしてしまいそうな場所にあるにもかかわらず、連日大行列ができる人気店。テレビや雑誌で良く取り上げられていて、食べログ百名店にも4回選ばれています。

 平日のオープン直後に訪れたところ、何とか一巡目で入店。わずか20分後には満席になり、店を出るころには長蛇の列ができていました。

 人がすれ違うのがやっとなぐらいの狭さの路地にあるので、お店の中も小さいのかと思いきや意外にも広々。歴史を感じさせるレトロな雰囲気の店内には、店員さんたちの威勢のいい声とお好み焼きがジュージューと焼ける音が響き渡っています。

 そんな人気店で長年愛される看板メニューを食べてみましょう。

具材がゴロゴロ! もっちり太麺の「焼きそば(チャンポン)」

 まず頼んだのは豚肉とエビ、イカが入った「焼きそばチャンポン)」。注文すると、店内中央にある大きな鉄板で焼き上げてくれます。運よく鉄板の前の席に座れたため、見事なコテさばきと鼻腔を刺激するソースの香りが楽しめて、待っている間も退屈しませんでした。

1100円
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 焼き上がったものはお皿に盛り付けるか、テーブルに備え付けられている鉄板にのせるかを選べます。筆者は最後までアツアツで楽しみたかったため、鉄板にのせてもらいました。

 出来立てを啜ってみると、もっちりした中太麺にあっさりと甘めのソースがしっかり絡んでいて、具材がゴロゴロ! ソースの水分をほどよく残しつつ、分厚く火力が強い鉄板で焼くからこその香ばしさがあります。食べているうちに鉄板でカリッと焼けていくのもまた良いんです。

 イカはやわらかくエビはプリプリ、キャベツはシャキシャキで麺はもっちり。それぞれの食感がいきていて、火の通し具合が完璧です。太い麺にはソースと野菜、豚肉、魚介のありとあらゆる旨みが染み込んでいます。

 卓上には青のりや削り節が置いてあるのですが、そのままでもおいしすぎて、何もかけずに一心不乱に完食。何か特別な材料が入っているわけではないのに「あ~、旨かった……」と呟いてしまう魔力がありました。

唯一無二! 豚ロースを挟んで焼いた「千草焼き」

[食楽web]
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 名物の「千草焼き」は、大きな豚肩ロース肉を生地で挟んでじっくり蒸すように焼き上げた豪快なお好み焼きです。大阪で生まれ育ち、数々のお好み焼きを食べてきましたが、このタイプは初めて。

『千草』のお好み焼きはお客さんが各自で焼くスタイルですが、「千草焼き」だけは店員さんが目の前で作ってくれます。生地、豚肉、生地の順に重ね、分厚い豚肉にしっかり火が通るよう15分ほど焼いたら、ケチャップマヨネーズカラシ、ソースを塗ります。仕上げに削り節と青のりをのせたら完成……と思いきや、ケシの実が登場。あんパンにのっているあのつぶつぶを全体に振りかけて出来上がりです。

1100円
1100円

 ドキドキしながら食べてみると、豚肉がやわらかい! カリッと焼けているかと思いきや、豚肉が生地の間でゆっくり蒸され、分厚いのに歯がスッと入っていくんです。ふわっと軽い口当たりの生地とやわらかい豚肉の食感を堪能していると、プチプチ弾ける香ばしいケシの実がやってきて、今まで感じたことのない味わいに。

 これは唯一無二!『千草』でしか楽しめない逸品です。

調査結果

 商店街から一歩入った細い路地に、ひっそりと佇む老舗お好み焼き店『千草』。目立たない場所にあるのに連日行列ができるのは、長年受け継がれた確かな味と、ここでしかお目にかかれない特別なメニューがあるからでしょう。

(撮影・文◎安達春香)

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