ジャズ=ハードルが高い音楽?

(本記事は『マンガで学ぶジャズ教養』を一部抜粋したものです) いま、大人が聴くおしゃれな音楽として「ジャズ」が注目を集めています。確かにジャズ喫茶でコーヒーを飲みながら静かに演奏に聴き入るダンディな紳士の佇まいには、「自分の世界」を持っている大人の風格が感じられますね。

 また東京・青山や丸の内の華やかなジャズクラブで、ワイングラスを傾けながら海外ミュージシャンの演奏を楽しむ男女の姿は、ジャズカジュアルな音楽として幅広いファン層に受け入れられていることを示しています。

 その半面、ジャズがロックやポップスに比べ、「ハードルが高い音楽」というイメージを持たれていることも確か。しかし、だからこそ挑戦してみようという意識を持った音楽ファンが最近増えているのです。

 ジャズには「メロディがわかりにくい」という最初のハードルが立ちはだかっています。しかしジャズファンはそんなことは当たり前だよという顔でジャズを楽しんでいます。ちょっとうらやましいとは思いませんか? 

 ぜひ、同じ音楽ファンなのに「この違いは何なの」と憤ってください。よく映画館で字幕のないところで笑っている人がいますよね。いかにも「オレは英語がわかるんだぞ」と誇示しているみたいで、若干イヤミったらしいのですが、ちょっと憧れちゃうところもあったりして……。

 ここは素直に背伸びしちゃいましょうよ。英語のリスニングも要は慣れ。同じようにジャズだって慣れちゃえばポップス感覚で楽しめるようになるんです。

◆「個性的表現」を聴きどころとしている

 トレンドミュージックの魅力は、キャッチーなメロディや印象的なサビなど、わかりやすく表現されるところです。なので聴き方など教えられずとも、容易にその音楽に入っていけるのです。それに比べ、ちょっと聴いただけではメロディラインすらつかみにくいジャズは、敬遠されがち。しかしジャズの「聴きどころ」は、哲学の命題のような難解な理屈ではありません。むしろとんちクイズの答えのように「なんだ、そんなことか」と思われるほどシンプルなのです。

 心理学の本に必ずといっていいほど出てくる「ルビンの壺」。「壺」を見ちゃうと、背景を形作っている「向かい合っている顔」は意識にのぼりません。しかし、誰かに「背景を見てごらん」と言われれば、たちどころに「顔」が浮かび上がってきます。

 このたとえに寄り添えば、ポップスなど一般的な音楽の聴きどころである「楽曲の魅力」に気持ちが引きずられると、それを表現している「演奏のニュアンス」は意識にのぼりにくくなるのです。まあ、ミュージシャンは曲を演奏しているので「ルビンの壺」のように両者は同じものなのですが、一度「演奏の違い」に注意を傾けると、ミュージシャンによる微妙なニュアンス、解釈の違いが見えてくるようになります。

 ジャズはこの違いをさまざまなやり方で強調することによって、楽曲の魅力に勝るそれぞれのミュージシャンならではの「個性的表現」を聴きどころとしている面白い音楽なのです。

























<画/飛鳥幸子>