気分転換・交流に満足している人は組織市民行動(組織のためになる役割外行動)とエンゲージメントが高い
気分転換の満足度は後ろめたさによって阻害され、その背景には職場の余裕のなさ・冷ややかさ・流動性の高さがある

 企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:山崎淳以下、当社)は、808名の正社員に対し、「仕事における余白・遊びに関する実態調査」を実施し、「業務時間内の気分転換や業務時間内外の社内交流の頻度」や「気分転換等の後ろめたさ」など、調査結果から見える実態について公表しました。

*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001235/)を参照ください。

1.調査担当のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

組織行動研究所 研究員 大庭りり子

 本調査では、まず、仕事における余白・遊びを気分転換・交流・制度と大まかに分類し、実施頻度や有無の実態と満足度、それらの関係性を見た。そののち、気分転換・交流の満足度が高いと、組織市民行動やエンゲージメントなどの観点から、組織にも良い影響をもたらし得ることを把握した。

 そして、気分転換の満足度は後ろめたさによって阻害される可能性があること、その背景の一例には職場の余裕のなさ・冷ややかさ・流動性の高さがあるということを確認できた。「余白・遊びのある職場」と耳にしたときの印象は、人によって大きく異なるだろう。本人にとっては良いものだが、他者や組織にとっては悪いものだという考え方も少なくないかもしれない。しかし、必ずしもそうではなく、余白・遊びをもった柔軟な個と組織であろうとすることが、さまざまな可能性につながることを示せていれば嬉しい。

2.調査の結果

6割以上が業務実施場所を離れずにできる気分転換を1週間に複数回実施、4割以上が食事会や飲み会といった社内交流を1年に複数回実施。活用しているかは問わず各種制度が職場に存在していると満足度が高くなる(図表1)

・本調査では、気分転換の具体例として7項目、交流の具体例として4項目、制度の具体例として10項目を示し、気分転換は直近1週間の業務時間内での実施頻度、交流は直近1年間の業務時間内外での実施頻度、制度は所属企業での有無および期間を限定しない活用の経験を尋ねた。また併せて、それぞれの満足度も聞いた。

・気分転換は、「雑談」「おやつを食べたり飲み物を飲んだりすること」など、その場を離れずにできる場合が多い項目は、いずれも60%以上が直近1週間に複数回実施していた(「ほぼ毎日行った/週に数回は行った」)。

・交流は、最も実施率の高かった「食事会や飲み会」に関しても、直近1年間に複数回実施した(「月に1回以上は行った/年に数回は行った」)という回答は40%を超えていた。

・制度は、「フレックスタイムなど、働く時間を柔軟に選べる制度」および「テレワークやフリーアドレスなど、働く場所を柔軟に選べる制度」については、存在するという回答が50%程度であり、そのうち、「活用したことがある」という回答は全体の30%を超えていた。

・制度に関するその他の項目はいずれも、「会社の制度として存在し、活用したことがある」という回答は20%以下であったことに加え、多くの項目で「分からない」という回答が20%を超えていた。

⇒仕事の内容や進め方に余裕をもたせるような諸制度は、働く時間、場所といったほとんどの人に関連することがらを除いて、有無の周知が行きわたっていない場合が一定数あるのではないか。言うまでもなく、存在を知っていなければ活用はできないため、活用率に課題を抱えている組織においては、その可能性に留意されたい。

・満足度はいずれも50%以上が「非常に満足している/満足している/やや満足している」であり、なかでも交流に関しては68.9%が肯定的な回答であった。

・気分転換・交流の各項目に関して、頻度は問わず1回でも実施した群とまったく実施していない群に分け、満足度の違いを確認した(図表1右)。

・気分転換は、すべての項目で統計的に有意な差が見られ、いずれも実施群の方が満足度の回答の平均値は高かった。

⇒気分転換の具体例として示した7項目は、すべて気分転換の満足度につながり得るものだといえる。

・交流は、「食事会や飲み会」以外のすべての項目で有意差が見られた。

⇒すなわち、交流の具体例として示した4項目のうち、「食事会や飲み会」は、交流の満足度に必ずしも結びつかないと解釈できる。「社員旅行」「運動会・ゴルフコンペなどのスポーツ大会」「クラブ活動・部活動」に関しては、実施率が5~10%と低かったことを考慮すると、それらは意欲的な人だけが参加するような場だからこそ参加した人の満足度は高く、他方、「食事会や飲み会」は意欲の高低にかかわらず参加せざるを得ない場合が少なくないため参加しても満足度が向上するとは限らないのではないか。組織に「遊び」を増やそうと試みる際、交流の場を設けることは比較的安易な手段として想起されるが、義務的な参加は満足度につながらない可能性がある点には注意を払いたい。

図表1  気分転換・交流・制度の満足度と実施・活用の実態
<単一回答/n=808/%>

・制度に関して、活用したことがある群(「会社の制度として存在し、活用したことがある」)と活用したことがない群(「会社の制度として存在するが、活用したことはない/会社の制度として存在しない」)に分け、満足度の違いを確認した。

・制度は、「副業・兼業の制度」以外のすべての項目で群間に有意差が見られ、活用群の方が満足度の回答の平均値は高かった。

・また、制度に関して、活用しているかは問わず制度が職場に存在している群(「会社の制度として存在し、活用したことがある/会社の制度として存在するが、活用したことはない」)と存在していない群(「会社の制度として存在しない」)に分けた場合は、すべての項目で有意差が見られ、存在群の方が満足度の回答の平均値が高かった。

⇒自身が活用していなくても、職場に各種制度が存在していると、存在しない場合と比べて満足度が高いと考えられる。仮に現状の活用率が高くなかったとしても、必要とされていないと判断し廃止してしまうのではなく、多角的に検討しながら、制度の設置・維持に努めていきたい。

 

気分転換に関しては、自身が希望したタイミングでできる点に満足している声が多い。一方交 流に関しては、実施しないことに満足する声が多い。(図表2)

・気分転換・交流・制度の各項目の実施・活用と満足度の関係について定性的に確認する。

・ 気分転換に関しては、「特に気兼ねなく好きなときに休憩できるような社風なので、メリハリをつけながら仕事に取り組むことができていて良いと思います」「テレワークで自分のペースで気分転換できているから」といったコメントが見られ、自身が希望したタイミングで実施できる点に満足している声が多かった。

・ 交流については、「煩わしい付き合いがないことに満足している」「社内の雰囲気は悪くないが、プライベートの時間を使ってまで交流したいとは思わない」といった、実施しないことに満足するコメントが多く見られた。

・制度に関する記述には、「社員のことを考えているんだなと思うから」といった、組織の従業員への姿勢を表すものと捉えたコメントが複数あった。そして、不満足の理由としては、「何も制度がないから」という趣旨のものが多く、次いで「業務量やスキルにより、偏りが出る」といった不公平感を述べるものが目立った。

⇒気分転換・交流とは異なり、基本的に制度は個人の意思で設置・活用できない。だからこそ、合理的な理由がないまま活用の機会が一部の従業員に限定されることが不満につながるのだろう。

図表2  気分転換・交流・制度の満足度の理由

半数が気分転換、交流の双方に満足している(図表3)

・満足度を6段階で聞いているため、「非常に満足している/満足している/やや満足している」と回答した人を「満足」、「まったく満足していない/満足していない/あまり満足していない」と回答した人を「不満足」とし、それぞれの満足・不満足群のかけあわせで4群に分けた。

・1.共に満足という人が48.9%で最も多く、4.共に不満足および3.交流のみ満足という人がそれぞれ20%ほどだった。

図表3 気分転換の満足度と交流の満足度のクロス集計
<単一回答/n=808>

●気分転換・交流に満足している人は組織市民行動(OCB)とエンゲージメントが高い傾向に(図表4)

・「結果として組織の効率や機能が高まる、自発的な役割外行動」を示す組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior 以下、「OCB」)と「従業員の会社に対する愛着や貢献の意志」を示すエンゲージメントを結果変数とし、気分転換・交流の満足度との関係性を見た。なお、本調査では「職場を休んでいた人を援助する」など6項目の平均値を「OCB」、「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」など3項目の平均値を「エンゲージメント」とした。

・「OCB」「エンゲージメント」共に、1.(共に満足群)と4.(共に不満足群)、および1.(共に満足群)と3.(交流のみ満足群)に統計的に有意な差が見られた。

⇒気分転換に満足していない人は、同僚や上司を援助したり、個人的関心をもったりしていない傾向にあるといえる。また、気分転換に満足していない人は、エンゲージメントが低い傾向にあるといえる。

⇒気分転換は、個人のみに資するような印象を抱きがちである。しかし、これらをふまえると、構成員が満足に気分転換することは、組織にとってもポジティブな影響があるといえるのではないか。本人が満足に気分転換できているからこそ、同僚や上司に援助行動を行ったり、組織に愛着をもって働くことができたりする可能性がある。そして、それは組織としてのパフォーマンスの向上や離職の防止などにつながり得るのである。

図表4 気分転換と交流の満足度の組み合わせ別、組織市民行動(OCB)とエンゲージメント

<単一回答/n=808>

●約4割の人が気分転換等に後ろめたさを感じている(図表5)

・「業務時間内に目の前の業務以外に時間を割くこと」に後ろめたさがあるか、と尋ねたところ、全体の43.1%がある(「非常にあてはまる/あてはまる/ややあてはまる」)と回答。

図表5 気分転換等の後ろめたさ <単一回答/n=808/%>

●気分転換に後ろめたさを感じる理由は、同僚に配慮する声が多い。一方、後ろめたさを感じない理由は、長期的な組織への貢献を見据えるような声が多い(図表6)

・気分転換に後ろめたさを感じる理由は、「目の前の仕事でみんな忙しくしているから、仕事をさぼっているようで後ろめたい」「他の人の視線が気になるから」といったコメントが見られ、同僚が気分転換等をしていないなか、自分だけが気分転換等を実施する際に後ろめたさを感じることが多いようであった。

・「業務の種類的に自分の進捗を待っている人がいる仕事が多いため、なるべく早く目の前の業務を完了したいと思っているので」などのコメントにあるように、仕事の相互依存性、すなわち自分の仕事が他のメンバーの仕事と依存し合い影響し合っていると感じている程度が高い場合は、目の前の業務に直接関係のない気分転換等に時間を割くことを後ろめたく感じやすいと考えられる。

・他方、気分転換に後ろめたさがないと感じる理由は、「業務以外のことでも、広い意味で役立つ日が来ると信じているから」「それが長い目で見て効率的だから」といったコメントがあり、長い時間軸で考えた際に、気分転換等は自身にも組織にも資するものであると捉えている場合が多いことがうかがえる。

⇒気分転換の満足度が高い人はエンゲージメントも高い傾向にあることは納得感が高い。長期的な組織への貢献を見据えているからこそ、自身が気分転換をすることに否定的にならずにいられることが推測できる。

図表6 後ろめたさの理由

●後ろめたさを感じつつ気分転換を実施すると満足度が低くなる(図表7)

・後ろめたさが高い(「非常にあてはまる/あてはまる/ややあてはまる」)人と低い(「まったくあてはまらない/あてはまらない/あまりあてはまらない」)人の2群に分け、気分転換の実施頻度の全項目平均値の差を見たところ、統計的に有意な差は見られなかった(図表7上)。

・気分転換の実施頻度高群・低群に分けて、後ろめたさと満足度の関係を確認した。その結果、気分転換実施頻度高群・低群どちらにおいても、後ろめたさの高低で統計的に有意な差が見られ、後ろめたさ高群の方が気分転換の満足度が低かった(図表7下)。

⇒気分転換を多く実施している場合も、後ろめたさを感じつつ実施していると、満足度は低い。ともすれば、OCBやエンゲージメントという形で組織に良い影響を与える可能性も低くなるため、後ろめたさは本人にとっても組織にとっても良いものではないといえるだろう。このことから、組織としては、単に気分転換を認めるだけでなく、後ろめたさを感じさせないような職場づくりが必要だと考えられる。

図表7 気分転換の実施頻度・満足度と後ろめたさの関係

●余裕のない職場・冷ややかな職場・流動性の高い職場で働いている人は、業務時間内の気分転換等に後ろめたさを感じている傾向にある(図表8)

・職場の特徴について問い、「常に時間に追われている」など3項目の平均値を「余裕のない職場」、「冷ややかな雰囲気が流れている」など3項目の平均値を「冷ややかな職場」、「異動による人の入れ替わりが激しい」など2項目の平均値を「流動性の高い職場」と名付けた。それぞれ6点満点中3.5点を境に高低群に分け、後ろめたさの得点の違いを見た。

・3つのすべての高低群で統計的に有意な差が見られた。余裕のない職場・冷ややかな職場・流動性の高い職場で働いている人は、業務時間内の気分転換等に後ろめたさを感じている傾向にある。

⇒余裕のなさや冷ややかさについては職場単位で対処できる部分があるだろう。それらの緩和を通じて、気分転換等に対する後ろめたさを感じさせないようにすることが、気分転換の満足度の向上につながると考えられる。そして、異動や採用などで人が流動すると、関係性を新たに構築する必要などから後ろめたさを感じやすくなる可能性も留意しておきたい。

図表8 職場風土による後ろめたさの違い

3.調査概要

調査は、マクロミルに委託

リクルートマネジメントソリューションズについて

ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。

●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス

また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした

研究・開発・情報発信を行っております。

※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

配信元企業:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

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