医療目的など以外の不妊手術を原則として禁止する母体保護法が生殖に関する自己決定権を侵害し、憲法違反であるとして、不妊手術を希望する女性など5人が2月26日、国に不妊手術を受けられる地位の確認や損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

原告らはこの日、東京地裁に訴状を提出後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、代理人の亀石倫子弁護士は「この裁判を通じて、リプロダクティブ・ヘルス&ライツの観点から、不妊手術を受ける権利、自己決定権を一人一人の個人の手に取り戻したい」と訴えた。

⚫︎名前と顔を公表した女性 「『私もこのまま生きていい』と思ってくれたら」

訴状によると、母体保護法では、不妊手術を受けるために、妊娠や分娩が母体の生命に危険を及ぼす恐れがあることや、すでに数人の子どもがいて分娩によって母体の健康を著しく低下させる恐れがあることなどを満たすよう求めており、刑事罰も定められている。

原告はいずれも子どもを産んだことがなく、健康な成人の女性だが、不妊手術を希望しながら母体保護法によって手術を受けられないとして、憲法の13条や24条2項に反するなどとしている。

幼少期から自身が生殖能力を持つことに違和感を持っていたという梶谷風音(かじや・かざね)さん(27)は、日本で不妊手術を受けられなかったため、海外で卵管の摘出手術を受けた。会見で「母体保護法によって不妊手術を受ける選択肢自体を完全に奪われ、自分の体に違和感や苦痛を感じながら生きる時間を不必要に延ばされた。母体保護法すらなければ、一番健康な時に最も安心で安全な形で手術が受けられていたと思う」と話した。

また、実名と顔を公表して会見に臨んだ理由を「日本は結婚も出産もせず不妊手術を受けたいと思う女がいるわけない、いてはいけないという社会だと思う。自分の顔や名前を出すことで、実際にも日本にいるんだよと伝えていきたかった。日本では少しでも伝統的な家族観からそれた生き方をすると人格を否定されがちだが、私がこうして堂々と不妊手術を受けた、これでいいんだと言うことで、実は同じ気持ちで言えなかった人が『私と同じ気持ちの人いたんだ』とか『私もこのままの気持ちで生きてよかったんだ』と思ってくれたらそれだけでもうれしい」と語った。

原告の一人、田中さん(仮名、23歳)は、中学生の時に母親から「娘を産んだのは孫が見たかったからだ」と言われたことをきっかけに「自分は孫という存在を見たいがために器として産まされたのか」という違和感を感じ始めたという。

「この法律を変えて、少しでも自分らしい生き方に早くたどり着ける人が増えたらいいなと思っています」と話した。

「不妊手術を受ける選択肢奪われた」手術を禁じる母体保護法は「違憲」だと提訴 「自分らしい生き方に」