女子SPA!で2024年1月に公開された記事のなかから、ランキングトップ10入りした記事を紹介します。(初公開日は2024年1月23日 記事は取材時の状況)


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 受験の追い込み、何食べる?



小さな頃から私や兄を自由にさせてくれていた母



 こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。


 受験シーズンがはじまっています。体調やメンタルのコントロールをしながら、志望校合格に向けて最後の追い込みをする時期。受験に立ち向かう本人はもちろんのこと、応援する側も大変なご苦労だと思います。


 私は兄との二人兄弟。どちらも念願の東京大学に合格できましたが、振り返ってみると、母は厳しい教育ママというイメージはゼロ。


 私たちが明るく受験勉強を乗り越えられた要因として、“母の食事”が大きく影響していることに気がつきました。そこで今回は、受験前の食事について、我が家のエピソードをご紹介してみたいと思います。


◆「ゲン担ぎメニュー」は食卓に絶対に出なかった



合格と書かれたオムライスに、桜型のニンジン。縁起が良さそうです



 どうにかして合格したいと祈る気持ちは誰もが持っている願いでしょう。


 そんな思いを応援しようと、最近では縁起の良さそうな“語呂合わせの食べ物”や“デコごはん”が広く提案されるようになっています。


 しかしながら我が家では、このような料理が食卓に上ることは一切ありませんでした。


 これらの商品が悪いということでは決してありません。受験が終わって冷静に振り返ってみたときに、母は私や兄の性格を良く理解してくれていたことに気がついたのです。


 私は「合格」と書かれたオムライスを出されると、プレッシャーを感じて緊張してしまう性格だったのです。つまり、ゲン担ぎメニューが逆効果になってしまう子どもがいるということ。


「頑張ってね!」という期待は悪いものではありませんが、周囲の期待が強すぎて本来の力を発揮できなくなってしまったら……。



イチョウ型の人参をポイントにしたスープ。あくまでも私の考え方ですが、東大を目指す受験生ではなく、東大生に作ってあげたいメニューです



 ここでお伝えしたいのは、子どもの性格や状況をじっくり観察し、ゲン担ぎメニューや語呂合わせ食品を良いパワーに変えられるかどうか、慎重に判断しましょうということです。


 それでは代わりに、我が母がどのようなことを大切に食事を準備してくれたのか、ご紹介していくことにしましょう。


◆楽しいイベントは“おあずけ”にはしなかった



※写真は私が親になって、我が子に実践している食事の一例です。当時のものではありません



 受験の1年間をどう過ごすかは、家庭によりさまざまであるとは思いますが、我が家では「受験だからクリスマスはおあずけ」というようなことは、少なくとも食卓においてはなかったように思います。


 大変な時期だからこそ、食べる喜びを大切に、いつもと変わらない平常心を作るベースとして食卓がありました。ですから、お正月料理を食べて終盤のエンジンがかかった気がしましたし、逆にそれを味わったことのデメリットはまったくありませんでした。


 とにかく何かを制限されたという記憶はまったくなく、食事の楽しみが良いリフレッシュにもなっていました。


◆ポイント①好きな食べ物を用意すること
 ここからは母が子ども達の食事を作る上で大切にしていたことを3つのポイントで整理していきたいと思います。


 一貫していたのは、料理を作ったり準備する立場として無理なくできること。冷凍食品やコンビニフードも活用して、手軽さも大切にしていました。



私と兄が大好きだったたこ焼き。父が関西人なので、多めに作って冷凍し、食べたい時にレンチンして温めてくれました



 もっとも大切にしてくれたのは、子ども達の大好物を食卓に出すということでした。


 例えば、たこ焼き。関西人の父は自宅でたこ焼きを作ってくれることが珍しくなく、多めに焼いて冷凍保存をしていました。これなら食べたい時にレンチンすればすぐに食べられます。


 好きな食べ物を食べることで、勉強だけでなく日常をポジティブに過ごすことができることを実感しています。


 その他、私はモンブランが大好きで、息抜きの時に母と一緒にコンビニにカップ型モンブランを買いに行くのが喜びの時間でした。


◆ポイント②消化に良い食べ物を作ること



煮込みラーメンや鍋焼きうどんを夜食によく作ってくれました



 二つ目は、消化によい食べ物を作ることです。


 夜遅くまで勉強をする日には必ず夜食を作ってくれていました。登場するのはしっかり煮込んだラーメンや鍋焼きうどん。身体に優しい食べ心地で、夜食を楽しみに勉強をしていたと言っても過言ではありません。


 消化に負担がかかると集中力にも悪影響がでますから、雑煮やおじやなどの柔らかい食べ物も定番でした。


◆ポイント③その子ならではの“ラッキーフード”を作ること



母がよく作ってくれたのが、シュウマイ。手作りの味が独特でおいしく、私達は“ラッキーシュウマイ”と呼んでいました



 三つ目は、母の味の中でも、それを食べると良いことが起こるような気がする“ラッキーフード”を作るということ。


 中でも母が作るシュウマイは市販やレストランの味とは少し違って独特の甘みがあり、私や兄は大好物。食べた翌日に良いことが起こることが続いたため、いつの間にか“ラッキーシュウマイ”と呼ばれるようになりました。


 他にも、釣り好きだった父が釣ってきたカワハギの刺身を肝醤油で食べたり、石鯛のお造りはごほうび料理に。おでんグラタンという組み合わせも心を満たしてくれる我が家ならではのメニューだったように思います。


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 少しでも参考になることがあればうれしく思いますし、母にしてもらった食育は、親になった私が自分らしさを加えて我が子に実践しています。受験生とご家族の皆さん、あと少しですから、どうか元気にがんばってくださいね!


<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>


【スギアカツキ】食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12



左から母、兄、私