青色申告初心者が会計処理を行う場合、しばしばつまずきがちとなるポイントがあります。今回は、自宅兼事務所の家賃等について、個人の口座から払う場合と、事業用口座から払う場合の会計処理について見ていきましょう。※本記事は小林敬幸氏の著書『改訂2版 3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

自宅兼用事務所の家賃や保険料を「個人の口座」から払っている場合

◆個人の口座から払ったときは「事業主借」で計上

自宅兼用事務所の家賃や光熱費が、「開業前から個人の口座での引き落としにしていた」などの理由で、そのまま個人の口座からの引き落としになっていることはよくあります。

この場合、事業に使っている分は「事業主個人が立て替えた(事業に貸した)」と考えるので、「事業主借」勘定で処理しましょう。

ここでは仕訳日記帳を使い、下記の図表1のように入力してください。もちろんこの場合、支払った全額が経費になるわけではなく、事業供用割合をかけたものが計上すべき金額となります。

なおこの処理は、自宅と仕事で兼用にしている自家用車のガソリン代、保険料、自動車税、駐車場代、住宅ローンなどについても同様です。

◆自宅兼用事務所にかかるお金を個人口座で支払っているとき

 ★自宅兼用事務所の家賃と電気代を個人の口座から支払った場合 

家賃10万円、電気代1万円で事業供用割合が30%の場合、事業用の経費は家賃が10万円×30%=3万円、電気代が1万円×30%=3,000円となりますので、次のように入力します(図表1)。

自宅兼用事務所の家賃を「事業用口座」から払っている場合

◆事業用の口座から払ったときは「事業主貸」で計上

これまでにもご説明してきましたが、自宅兼用事務所の家賃はその全額を経費にすることはできません。

家賃を事業用口座から支払った場合は、事業主個人の経費を事業の財布で立て替えたと考えるため、「事業主貸」勘定で入力します。

具体的には、支払った金額に家事割合(100%事業供用割合)をかけた金額を、「事業主貸」勘定に振り替えます。

なお入力には、預金出納帳に手入力で入力する方法と、会計ソフトの按分機能を使う方法があります。下記の図表2~4には、両方の入力例を載せていますので、どちらでもやりやすいほうで入力してみてください。

◆自宅兼用事務所にかかるお金を事業用口座で支払っているとき

【例】

自宅兼用事務所の家賃と電気代を事業用の口座から支払った。家賃の金額が10万円、電気代が1万円、事業供用割合は30%とする。

 ★預金出納帳だけを使う場合 

事業所の家賃・光熱費と家事部分をそれぞれ分けて入力します(図表2)。

 ★家事按分振替機能を使う場合 

STEP 1

支払う際には預金出納帳で、全額を経費に計上しておきます(図表3)。

STEP 2

「家事按分振替」機能で年末に一度、勘定科目ごとの事業割合を入力し、「仕訳書出」で自動的に家事部分を振り替えます。

次の場合、70%部分が自動的に事業主勘定に振り替わります(図表4)。

小林 敬幸 税理士、ファイナンシャル・プランナー