日本でも4月から「日本版ライドシェア」のオペレーションが始まる。とはいっても、「日本版ライドシェア」というひとつの巨大計画が全国各地で一斉に始まるわけではなく、自治体やタクシー会社がそれぞれ別にライドシェアを構想しているというのが現状だ。そもそも、日本版ライドシェアは本来のライドシェアとはまったく別物……という意見もテクノロジーライターから出ている。

 では、「本来のライドシェア」とは何か? この記事では、筆者が実際に海外で体験した「ライドシェアにまつわる災難・トラブル」をご紹介しながら、ライドシェアについて解説していこう。

◆その1:一方通行の道路で予約するとキャンセルされる可能性大

 ライドシェアのドライバーは、いわゆる「タクシー免許」を持っていない。一般ドライバーが利益を得るために営業しているのだ。

「それで安全が保たれるのか?」という声があるが、実は問題ない。ライドシェアのドライバーは例外なく「見える化」されており、しかも利用者がドライバーを評価できるのだ。評価の低いドライバーは、アプリからBANされる仕組みである。

 それと引き換えのシステム……かどうかは分かりかねるが、ドライバーは乗客を選択することができる。つまり、利用者が配車を手配してそれが見事マッチングした後、何らかの理由でドライバーがキャンセルしてしまうという出来事が少なからずあるのだ。しかもその理由が、実にくだらないものだったりする。

 海外でライドシェアをスムーズに利用するコツとして、一方通行の道路では極力配車依頼をしないというテクニックが挙げられる。なぜなら、その車の現在位置によっては一方通行の道路へたどり着くのに時間と手間がかかるからだ。「もっと俺が楽に行けるところでピックアップしてくれ」ということだが、そうであってもこれはドライバー都合のキャンセル利用者からしてみればたまったものではない

◆その2:Googleマップを読めないドライバー

 また、特に東南アジアのライドシェアは「ドライバーに地理感覚がない」ということも。

 上記の一方通行の道路と同じく、大通りから離れた細かい路地をピックアップ地点に指定してもキャンセルされたりする。あるいは配車依頼を引き受けてくれたはいいが「そこは分かりづらいから、もっと目立つランドマークに来てくれ」と指示される場合も。

 ライドシェアのアプリはGoogleマップと連携しているのだが、そのGoogleマップすら読めないドライバーも珍しくない。なぜなら、そのドライバーは地方から都市部へ出稼ぎに来ているため、「地元っ子」ではないから……というこれまたしょうもない理由である。

◆その3:ライドシェア利用者を狙う「本物の白タク」

 自分が配車依頼したライドシェアの車が到着した際、必ずアプリに表示されているナンバープレートと実際に来た車のそれを照らし合わせることも忘れてはいけない。

 というのも、中にはライドシェアとは全く関係のない「本物の白タク」がマッチング車両を装う出来事もあるからだ。スマホ片手にキョロキョロしている外国人などは、十中八九ライドシェア待ちである。そうしたことが見た目ですぐに分かるため発生するトラブルだ。

 こうした悪質なドライバーに「アプリとナンバーが違うよ?」と指摘しても、「いやいや、今日は妻の車を借りてきたんだ」などと返す始末。もし彼の言うことが真実だったとしても、それはライドシェア運営者にとっては規約違反のはずだが……。

◆その4:繫華街ではライドシェアは使えない

 ライドシェアとタクシー会社との抗争は、日本に限ったことではない。

 世界中でライドシェアを排斥しようという動きがあり、その上でライドシェアとタクシー会社が協定を結ぶこともある。そのひとつが「繁華街でのライドシェアのピックアップ禁止」である。

 一例を挙げれば、インドネシアバリ島の繁華街レギャン通り。ここには今も数え切れないほどのタクシーが往来するが、一方でライドシェアの車両はドロップアウト(降車)のみが許されている。アプリで車両を手配しようとしても、そもそも来てくれないのだ。

 また、空港では「ライドシェア乗り入れ口」が設けられていたりもするが、これがタクシーの乗り入れ口よりもターミナルから遠いところに設置されている……ということも。

◆それでもライドシェアは便利だ!

 とはいっても、やはりライドシェアは非常に便利である。

 日本の地方都市では、今でもタクシーを呼ぶ際は電話が主流。アプリを使った配車は、まだまだ浸透していないのが現実だ。そうした国から海外へ渡航してライドシェアを利用してみると、なぜこんなに合理的で使いやすい仕組みなのにタクシーよりも遥かに低料金なのかと驚愕してしまう。

 その料金は事前確定方式、支払いはキャッシュレスという点もありがたい。そうした交通システムが確立した国から帰国すると、やはり「技術格差」というものを嫌でも感じてしまうのだ。日本では今でも現金しか対応していないタクシーが存在し、料金も最後まで乗り切らなければ分からない。

 日本版ライドシェアは、そうした技術格差を解消してくれるだろうか。

<文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジーガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー

※写真はイメージです。