社会人となって30年以上、オーディオ関連記事などを手がけ続けて四半世紀にもなる筆者。「Z世代に向けてどんなアイテムがオススメ?」との編集の依頼により、僭越ながらオーディオ製品選びのコツをお伝えしたい。

【写真】オーディオ評論家・野村ケンジがZ世代にオススメしたいオーディオガジェット

 ズバリそれは、「本物」を選ぶことだ。ただいきなり「本物」と言われても戸惑うむきもあるかもしれない。「本物」といっても単にブランド製品ということではない。音の本質を見据えつつ、ユーザビリティに配慮された製品が望ましい、ということだ。
 実はこれはオーディオ製品以外にもいえることだが、流行や利便性、価格などを最優先してモノ選びを行うと、ついつい大切なことを見逃しがちで、満足できる製品に出会えるまで随分と遠回りしてしまいがち。当然、不要で無駄な散財をしてしまい、結果としてもっと高価なものが買えたのに、という後悔をしたりもする。
 実際、筆者も随分と遠回りしているのでえらそうなことはいえないし、逆にそういったこと(いろいろな製品を買ったり体験したいすること)自体を趣味として楽しんでいる人もいるのでひとくくりにはできないが、これから本格派のオーディオ製品を手に入れよう、という人には最初の段階でつまずいたり“所詮こんなモノだよね”という思いを持って欲しくはないので、最初のうちは大きなステップを踏み“おいしいところ”を巧みに享受して欲しい。

そこで今回は、「Z世代におすすめのオーディオアイテム」として5製品をピックアップさせてもらおうと思う。

■オススメ製品1 「プロ御用達ガジェットの音に触れてみる」
Shure『AONIC 50 ワイヤレス・ノイズキャンセリングヘッドホン(第2世代)』

 ヘッドホンはもとより、マイクなどのプロ用機器でも有名なShureの上級クラス・ワイヤレスヘッドホン。第2世代では機能面で大きく進化しており、Bluetoothコーデックは、aptX AdaptiveやaptX Voice、LDACなど幅広い方式に対応、Snapdragon Soundテクノロジーを採用するなど、最新スペックを積極的に盛り込んでいる。加えて、USBケーブル接続時には最大384kHz/32bitまでの音源にも対応しており、ANCは高精度なハイブリッドタイプを採用。連続再生時間は約45時間となっている。
●野村ケンジ的オススメポイント
 スタジオモニターとしても有名なShureだが、勢いのある躍動的なサウンドを是としていることもあってか、リスニング用としても存分に楽しめる。そんなサウンドが、いまや手軽にワイヤレスでも楽しめる時代となっている。また、有線(USB)接続によってハイレゾ音源が十全に楽しめるのもいい。オーディオ製品購入時の指針となる。リファレンス・ヘッドホンとしてZ世代におおいにオススメしたい1台だ。

■オススメ製品その2「Z世代のレコードデビューにはこれが最適!」
オーディオテクニカ『サウンドバーガー AT-SB727

 ポータブルタイプのレコードプレーヤー80年代に存在した既存モデルの復刻版といえる製品ながら、バッテリー(フル充電で12時間の再生が可能)やBluetoothワイヤレス接続など最新モデルならではの機能性を搭載。Bluetoothスピーカーヘッドホンと組み合わせることで、いつでもどこでも、アナログレコードならでは魅力的なサウンドをたのしむことができ、オーディオテクニカ製の交換針「ATN3600L」を使用することが可能となっている。
●野村ケンジ的オススメポイント
 レトロデザインは見かけも素敵だが、場所を選ばないコンパクトなボディサイズが秀逸。しかも、音質的にも目を見張るほどの実力を持ち合わせていて、アナログレコードならではの音の魅力をしっかりと楽しませてくれる。よくあるスピーカー一体型低価格アナログレコードプレーヤーとは一線を画す本格派がこの価格で入手できるのは驚くばかり。いま、若い世代の間でレコードが盛り上がっているとのことで、手軽かつBluetoothスピーカーでも使えるこちらを推したい。

■オススメ製品その3「重厚な見た目なのにコスパも機能も最強!」
水月雨(MOONDROP)『Space Travel』

 ANCや低遅延ゲームモード、BASS コントロールなどの機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン。イヤホン本体には13mmダイナミック型ドライバーを搭載、音響チャンバー構造や「VDSF Target Response」をベースとした音質調整などによって、良質なサウンドを実現。また、デザインにもこだわっており、専用ケースはイヤホン本体が収まる部分にクリア素材を採用する、個性的なスタイルを採用している。
●野村ケンジ的オススメポイント
 ひと目でそれとわかる専用ケースのデザインは所有欲を大いにくすぐられるが、『Space Travel』の本質はそのサウンド。数多の中華イヤホンにありがちなドンシャリ傾向とは異なるウェルバランスなサウンドを持ち合わせている。空間的な広がり感もよく、Jポップなどとは抜群の相性ををもつ。いっぽう、ANC機能はシングルタイプながらも絶妙な効き具合で、飛行機内でも多いに役立ってくれた。そして何といっても、この内容で5000円台。コスパも重視するZ世代に最強クラスのヘッドホンだ。

■オススメ製品その4「性能・デザインが圧倒的な」
HIFIMAN『Svanar Wireless LE』

 高級完全ワイヤレスイヤホン「Svanar Wireless」の弟モデル。LDACコーデック非対応や本体素材の変更、ワイヤレス充電機能非搭載などの変更点はあるものの、デザインや音質面では変更なし、それでいて価格はオリジナルの約半額というとても高いコストパフォーマンスを持ち合わせている。その内部には、HiFiMANの据え置き型ヘッドホンアンプに採用されているヒマラヤDACや、ハイエンドイヤホンと同じ独自のトポロジータイヤフラム採用ドライバーを搭載。さらに独立したアンプ部を組み合わせることで、完全ワイヤレスイヤホンとしては格別の良サウンドを実現している。高精度なANC機能も搭載され、通常/ANC/HIFIという3つのモードを切り替えることで、バッテリー持続時間優先、音質有線などを切り替えることもできる。
●野村ケンジ的オススメポイント
 完全ワイヤレスイヤホンでも有線イヤホン同等のいい音で楽しみたい、という人にもってこいの製品がこちら。最上級機『Svanar Wireless』に対してLDACコーデック非対応となるが、ヒマラヤDACや独立アンプ搭載など、サウンドの肝となる部分は変わらず、それでいて価格は半額と超ハイコスパな製品に仕上がっている。LDACコーデックが不要なiPhone持ちのZ世代には最適解の1台としてオススメ。

■オススメ製品その5「まさにZ世代に向けたバランスのとれた傑作」
オーディオテクニカ『ATH-SQ1TW2』

 個性的なデザインを持つスタンダードクラスに位置する完全ワイヤレスイヤホンの第2世代モデル。イヤホン本体のデザインを変更することで装着感を向上させたほか、ドライバーや内部構造の変更などをおこなうことで音質面でもグレードアップを果たしている。機能面では、2台を同時接続できるマルチポイントに対応したほか、専用ケースはワイヤレス充電(Qi)機能を搭載。自分だけに音を知らせる「プライベートタイマー機能」なども含め、便利に活用できるようになっている。
●野村ケンジ的オススメポイント
 なにより装着時のストレスがない小型軽量のイヤホン本体が秀逸。ノズルの角度を変更するなどデザインの再検討によってフィット感が向上、ANC機能が不要と思える高い遮音性を持ち合わせている。さらに、音質調整やデザインをそれぞれ女性スタッフが主導してモノづくりを行ったこともあって、Z世代には共感の持てる製品に仕上がっていると感じる1台。

 このほかにもJBL『Tour Pro2』(完全ワイヤレスイヤホン)やソニー『MDR-MV1』(有線ヘッドホン)、水月雨『楽園-PARA』(同)などオススメできる製品は幾つもある。音質以外ではデザインや装着感も重要だが、流行っているから、みんなが買っているから、という理由で製品を選ぶことだけは避けて欲しい。実際の製品を手に取って、自分にとって最良のものを見つけ出そう。

文・野村ケンジ

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