いつの間にやら、鈴木紗理奈が「勘違いご意見番」になっていた。

 2月27日の情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(TBS系)でのことだ。前日26日に福岡県みやま市で小学1年生の男子児童が給食に入っていた「うずらの卵」をのどに詰まらせて死亡した事故を取り上げた際、鈴木は以下のような私見を述べ出した。

「避けることは難しい。これからうずらの卵はどうするか議論されていくと思うんですけど、危険な食材があると親御さんたちがお子さんと話して、どういうふうに食べるか食育を充実させる方が防げるのでは」

「給食でそれを防げるとしても外食もあるし、全部そうするのは難しい。子供たちや親御さんはこういう認識を持って、食べ物は噛むんだよという食育をする方がいい」

 まるで「よく噛まなかった子供が悪い」という印象操作のようだ。亡くなった小学生の遺族や同じ学校に通う保護者がこの番組を見ていなかったことを祈るばかりである。

 育児などしたことがないオッサン記者が書いたであろう全国紙の記事、Yahoo!コメント欄、Xにも鈴木とほぼ同じ「よく噛め」論が並ぶ。だが、これらの意見が時代遅れの「プチ老害」であることは、文部科学省が男児の窒息死後、直ちに全国の教育委員会に指導の徹底や窒息への対処方法について注意喚起していることからも明らかだ。

 というのも今回、男児が窒息死した「うずらの卵」は、国や日本小児科学会が長らく「子供が窒息しやすい危険な食べ物」に挙げてきた食材だからだ。うずらの卵のほかに巨峰やマスカットのような大粒のブドウミニトマトさくらんぼ、球形のチーズ、ソーセージ、カップゼリーこんにゃくなどの食材を挙げ、これらの食材は子供に丸ごと与えるのではなく、子供の気道の幅より小さい直径2センチ以下に切るよう指針を出している。

 2010年から2014年までの間だけでも、これらの食材をのどに詰まらせた14歳以下の子供が623人も亡くなっている。ブドウミニトマトなら4等分、うずらの卵は半分に切って与えるよう、保健所や小児科医が定期検診のたびに親に注意喚起しているのだ。

 小学校低学年の児童は乳歯から永久歯の生え替わりの時期で、前歯が抜けているから、うずらの卵もこんにゃくミニトマトも、つるりと飲み込んで窒息する。しかも窒息死事故が起きた学校給食「みそおでん」の写真を見ると、具材は国が示す2センチ以下よりかなり大きい。前歯のない1、2年生はチクワこんにゃくもかじれない。

 さらに、うずらの卵は最悪なことに、直径約2センチと、子供の気道と同サイズ。喉にすっぽりはまってしまったら、教員や救急隊でも取りようがない。事実、亡くなった男児はドクターヘリで搬送されたが、救命できなかった。

 ここで誤解してほしくないのだが、学校の調理室や給食センターにいる「給食のおばさま」は管理栄養士の指示のもと、具材を何センチに切るよう指示された通りに調理しているにすぎない。昨年5月にも愛媛県新居浜市の保育園で生後8カ月の園児がリンゴを喉に詰まらせて死亡する事故が起きた。ところが実際に園児死亡の責任を問われたのは管理栄養士ではなく、調理師だった。保育園で乳児に与えるリンゴ食中毒予防と誤嚥防止のため加熱、柔らかくするよう国が指針を示しているが、園児を死なせた保育園ではこの指針を守らず、生のリンゴを出していたという。

 親が子供に「危険な食材をよく噛んで食べさせる」ことを意識の高い食育だと自己満足に浸るのは自由だが、保育園や学校には「窒息死や食中毒を起こさないため」の指針がある。国の指針に従わない学校や保育園がその結果、預かっている子供を死なせたとしたら、処罰されるのは当然だろう。

 恐ろしいことに近年は「韓流」「多様性」にかぶれた管理栄養士が、韓国料理でお馴染みの食材、白玉とトッポギ、春雨を給食に使いたがる。大人が楽しむぶんにはいいが、白玉やトッポギは粘り気があるため、うずらの卵やミニトマト以上に、子供に危険な食材と指摘されている。そんな危険な食材をわざわざ1歳から5歳の幼児に食べさせようとする保育園や幼稚園があるのだから、ゾッとする。

 この国でもう性善説は通用しない。親が子供を守るためにできる「最低限の食育」は、子供が月初めに持ってきた給食献立表に危険な食材が含まれていないか、チェックすることだ。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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