フランクフルトに所属する元日本代表MF長谷部誠ブンデスリーガの歴史にその名を刻んでいる。
 
 2014年からフランクフルトに所属しチーム最古参の一人でもある長谷部は、現地時間2月18日に行われたブンデスリーガ第22節フライブルク戦でスタメンに名を連ねた。今シーズンはベンチ入りしがらも出番が少なく、2024年に入ってからは初めての出場。そして、1月18日に誕生日を迎えた元日本代表戦士にとって「40歳」となってから初めての出場でもあった。

 
 40代での出場はブンデスリーガ史上わずか10人目の偉大な記録。「40歳31日」で3バックの一角としてフル出場した長谷部は、フィールドプレーヤーだけに限ればブンデスリーガ歴代5位となる年長記録を打ち立てた。これからまだまだ記録を更新していく可能性もあるが、彼が今後目指すブンデスリーガの最年長出場ランキングを見てみよう。

[写真]=Getty Images
 

◆■4位:マンフレート・ブルクスミュラー(40歳141日)

 
 1963年に発足されたブンデスリーガの歴史において、フィールドプレーヤーの最年長出場ランキングで4位に着けるのはマンフレート・ブルクスミュラー氏だ。1970〜80年代にかけてドルトムントリーグ戦200試合以上に出場したアタッカーは、異色の経歴を持つ。“サッカー選手”としてのキャリア晩年には37歳でブレーメンに加入すると、ベテランアタッカーの腕は錆びておらずに大仕事をすることに。1988-89シーズンのチャンピオンズカップ1回戦で東ドイツベルリナーFCディナモを相手に「38歳293日」でネットを揺らしたのだ。これは、昨年ポルト所属のポルトガル代表DFペペ(40歳289日)に破られるまでチャンピオンズカップチャンピオンズリーグの最年長ゴール記録だった。
 
 その後もブレーメンプレーを続け、キャリア最終年の1989-90シーズン最終節に「40歳141日」で出場。その1週間後のDFBポカール決勝でも途中出場からゴールを奪うが、チームは惜しくもカイザースラウテルンに敗れて有終の美を飾れず。しかし、彼の真の“ラストゲーム”はまだまだ先だった。
 
 引退してから6年後の1996年、彼はアメリカンフットボールに挑戦したのである。NFLが欧州で設立したNFLヨーロッパに参戦すると、高精度のキックを生かして2002年までプレースキッカーとして活躍した。69歳で惜しまれながら他界したブルクスミュラー氏は、ブンデスリーガの最年長ランキングでは8位(フィールドプレーヤーでは4位)に留まったが、アメリカンフットボール界では「52歳」という最年長出場記録を打ち立てたのである。
 

◆■3位:ミロスラフ・ボタバ(40歳225日)

 
 3位はGKを含めたランキングでも総合5位に入るミロスラフ・ボタバ氏だ。チェコプラハに生まれ、その後西ドイツへ移り住んだボタバ氏は、ドルトムントでプロキャリアをスタートさせるとMFとしてリーグ戦250試合以上に出場。西ドイツ代表としてはEURO1980に出場し欧州制覇にも貢献した。それからスペインへ移りアトレティコ・マドリードで3年間プレーした後、再びドイツに帰還。ブレーメンで10年以上に渡り中盤に君臨すると、1996年12月6日の1860ミュンヘン戦で「40歳225日」でピッチに立った。また、ブンデスリーガ通算546試合出場は歴代5位の記録となっている。
 

◆■2位:クラウディオ・ピサーロ(41歳268日)

 
 当然だが、ブンデスリーガの最年長出場ランキングの上位には自国の選手がずらりと並ぶ。そんな中でトップ10に「2名」だけドイツ人および元ドイツ代表ではない選手がいる。それが長谷部とフィールドプレーヤーとして歴代2位となる「41歳268日」の記録を持つクラウディオ・ピサーロ氏だ。ペルーの英雄であるピサーロ氏は母国でプロキャリアを歩み始めると、20歳にしてドイツげ渡りブレーメンに加入した。
 
 そんな同氏はブンデスリーガ2年目に19ゴールを叩き出しバイエルンに引き抜かれることに。合計9年間に渡り所属したバイエルンではリーグ優勝6回を経験したほか、2013年にはチャンピオンズリーグ制覇に貢献するなど数々のタイトルを手中に収めた。それでも彼が「ホーム」と呼ぶのは“長寿プレーヤー”にお馴染みのブレーメンだ。

 同クラブには合計10シーズンも所属しブンデスリーガ250試合に出場。通算109ゴールという偉大な数字を残した。そして250試合目にしてラストゲームとなったのが2020年6月のケルン戦。なお、この試合において「41歳268日」のピサーロ氏との交代でピッチを後にしたのは現ヴィッセル神戸所属の大迫勇也だった。
 
 ちなみにピサーロ氏は2019年のライプツィヒ戦で「40歳227日」でネットを揺らしており、これがブンデスリーガの最年長ゴール記録となっている。長谷部がこの記録を破るためには、来シーズンもブンデスリーガプレーし続け、9月以降にゴールを奪う必要がある。
 

◆■1位:クラウス・フィヒテル(43歳184日)

 
 1960~80年代にかけて2度に渡りシャルケに所属したフィヒテル氏は、センターバック(CB)およびスイーパーとして活躍。1965年に20歳でブンデスリーガデビューを果たすと、ブレーメンに所属した4年間を除きずっとシャルケプレーすることになった。1967年には西ドイツ代表デビューを果たし、FIFAワールドカップメキシコ1970にも出場。西ドイツ代表の3位入賞に貢献した。
 
 シャルケでは若い頃からレギュラーを張り、引退するまでにクラブ記録となる公式戦556試合に出場。ブンデスリーガに限って見てもクラブ最多記録の477試合、ブレーメン時代も合わせると552試合もピッチに立っており、これはリーグ全体の歴代4位の記録だ。ちなみに3位はバイエルンなどで活躍した元ドイツ代表GKオリヴァーカーン氏の557試合となっている。
 
 結局フィヒテル氏は1987-88シーズンまでプレーし続け、歴代最多記録となる22シーズンもブンデスリーガで過ごした(ブレーメン時代に1年だけ2部でプレー)。そして、彼の552試合目にして最後のゲームが、1987-88シーズン最終節のブレーメン戦だった。当時のフィヒテル氏は「43歳184日」。これがブンデスリーガの最年長出場記録となっている。なお、この記録はフィールドプレーヤーに限らずGKを含めても同リーグの最年長記録だという。

(記事/Footmedia)

40歳を超えた今なおブンデスリーガで活躍を続ける長谷部誠 [写真]=Getty Images