青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。

【写真】3/14に1stフォトエッセイを発売する中川紅葉

■#30「私と同じく、気にしいな人へ」

去年3月。友達と楽しく酔っ払った帰り道、駅員さんに出口を教えてもらい、そのままカウンターにAirPodsを片方置いてきてしまった。音楽が聴けない状態には耐えられず、比較的安めのワイヤレスイヤホンに買い替えた。

それが、先日、また壊れた。だから最近は有線イヤホンを使っている。見渡しても、今どき有線派閥はあまりいない。ただ、正直音楽が聴こえればなんでもいい。これでも遜色ないのに、なぜワイヤレスにこだわって買っていたんだろうとふと考えた。

大学1年生の頃、同じ学科の男の子に「まだ有線イヤホン使ってるの?」と言われたことがある。別に嫌味ではなかったんだろうし、こちらも嫌な気持ちにすらならなかった。ただ、なんとなくその後AirPodsを買うことにした。

私は知らぬ間に、“イヤホンはワイヤレスでないとイケてない”と言葉に呪縛されていたのだろう。

■素敵な言葉選びをしたい

話は変わるが、昔から「運がいい」と言われることがあまり好きではない。というより、私個人の美学として、あまり人に言わないようにしている。

心配性で焦り癖のある私は、“もっとこうしていれば”と常に反省してしまう。そんな悩みを口にすると、「結果が出ただけ良かった、あなたは運がいい」と言われることがたまにある。

まるで、これ以上の結果を望むなと牽制されている気持ちになる。そして、その夢にかけてきた時間と努力量を、「運」という言葉で片付けられた気にさえなる。もっとできたと思えるほど、その夢にかけてたんだけどな、とも(大変回りくどい言い方をいたしましたが、運じゃなくて努力だわ!と思ってます!)。

「頑張ってください」と言うより、「応援しています」と言える人でありたいと常に思っている。そう言いたくなるような人は、きっともう十分頑張っているだろうし、そんなプレッシャーを与えたくもない。

誰かの何気ない言葉に、どうってことないと分かっていても傷つくことがある。きっとみんな、そんなつもりで言っていないのだろう。でも、そう受け取ってしまう私のような“気にしい”がいるのなら、せめて私だけは自分に似た誰かを傷つけないようにしていたい。

誰かが悲しまないか、少しでも差別に当たらないか、個人的な面白さだけになっていないか、そう考えると何も呟けなくなってSNSを閉じることがたくさんある。普通にツイートする回数より遥かに多いかもしれないほどだ。

最近は、過剰な指摘をされ謝る人をよく見かける。きっと考え方が多様になればなるほど、理解できないことも多くなっていくのだろう。それでも、相手を想う気持ちさえ意識すれば、たとえ言葉を間違えても、気遣いだけは伝わると信じている。

言葉の応酬がなくなったら皆もっと楽しくなれるはずなのにね、と素敵な言葉選びをしてくれる親友と、いつも話している。

■【ヒトコト】

こーんなことを考える性格だから本を書くのに時間がかかりました!!!共感や面白さよりも、誰もがあたたかい気持ちになることをより考えていた気がします。

魂が乗っていることを節々から感じられるかと思います。今までにない文体のようなものに勝手にチャレンジしたり、架空の誰かの生活や人生の話として小説のように読んでいただきたい章もあります。

元気づけられたら、というよりも、眠れない夜に読んでいただきたいなぁという気持ちで文字を打っておりました。

発売まで2週間ほど。とても楽しみです!

現役女子大生タレント・中川紅葉のエッセイ連載「ココロすっぴん」/ 撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂