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重要な意味を込めた「レトロ」デザイン

ルノー2月26日に発表した新型量産EV「5 Eテック」は、レトロモダンなデザインを特徴とするが、これは単なる “懐かしさ” だけを狙ったのものではない。

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デザイン責任者のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏は、BMWミニやフィアット500、あるいはポルシェ911のような、長く愛されるアイコニックな外観を目指したと語る。

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ルノー5 Eテック    ルノー

同氏によると、レトロモダンなデザインは販売面で有利に働くが、フルモデルチェンジの際に課題が生じやすいという。しかし、5 Eテックのデザインは「20年はもつと考えています」と自信を見せる。

5 Eテックと同クラスにクリオ(日本名:ルーテシア)があり、こちらは時代とともにデザインを変えていくという。

新型車のデザインを決めるのはデザイナーだけではない。ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは、フィアット在籍時に500を復活させ、レトロデザインに熱心なことで知られる人物だ。

デ・メオCEOはブランド戦略の一環として、旧来の人気モデルを参照したデザインにより、ブランドの歴史とのつながりを感じさせることを重視している。ルノー着任後すぐに5 Eテックのデザインを承認したのも、こうした狙いがある。

今後数年間でルノーからレトロなEVが続々と登場するが、5 Eテックはその第1弾となる。同社の新経営計画「ルノーリューション(Renaulution)」の看板的なモデルであり、ブランドイメージや販売面でも非常に重要なポジションに置かれている。

主張しすぎない空力ボディ

5 Eテックは1970年代の初代ルノー5へのオマージュとして、全体的に硬質なエッジと柔らかい曲線を融合させている。

ヘッドライトは人間の瞳孔をイメージしており、キーフォブを持って車両に近づくと「ウインク」する。ボンネットには初代5の冷却ダクトを模した充電インジケーター(バッテリー残量計)が備わっている。

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リアエンドでは、ブラックのパネルに「Renault」の文字と新しい「5」のバッジが添えられている。

かつての5ターボを彷彿とさせるルーフマウントリップスポイラーや、フラットな形状のアルミホイール、スラット付きのリアライトなどは空気の流れを整え、航続距離を合計20kmほど伸ばしているという。

部品共有で低コスト実現 小型・軽量化も

競争が激化する小型EV市場における武器の1つが「低価格」であり、欧州でのベース価格は2万5000ユーロ(約400万円)とされる。

プラットフォームは、主要構造の大部分をクリオや日産ジュークと共通化するアンペア・スモール(旧:CMF-BEV)を採用した。新たに専用プラットフォームを開発するよりも、開発コストを30%削減できたと言われている。

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モーターやバッテリーは、全長3.92m、全幅1.8mというコンパクトなボディサイズに合わせて小型・軽量化されている。

例えば、ニッケルマンガン・コバルト(NMCバッテリーは、各セルを大きな四角いモジュールにまとめたシンプルなレイアウトを採用。40kWh容量では総重量240kg、52kWh容量では300kgを実現した。

そのため、40kWhバッテリーを搭載した5 Eテックのエントリーモデルの車両重量はわずか1372kgに抑えられている。ルノー初の量産EVであるゾエは、その約半分の容量(22kWh)でありながら、重量は100kg近く重い1468kgだった。

52kWhバッテリー搭載車の車両重量は1449kgで、ライバルのプジョーe-208と同等だ。

こうした軽量化の努力の結果、走行性能にも大きなメリットがあった。あるエンジニアが取材で語ったところによると、ルノーのサーキットでe-208をベンチマークとしてテスト走行を行ったところ、コーナリングスピードは5 Eテックの方が速かったという。

航続距離は最長400km 来年から生産開始

なお、モーター出力は仕様によって95ps(70kW)、122ps(90kW)、150ps(110kW)の3種類が用意される。122psのモデルは0-100km/h加速8.0秒以下と謳われている。

航続距離は40kWhバッテリー搭載車で300km、52kWh車で400kmとされる。

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充電能力はバッテリーにより異なり、40kWhで最大80kW(DC急速充電)、52kWhで100kWとなる。

また、最大11kWの外部給電機能も備えており、余った電力を売電することもできる。

インテリアでは、10.0インチのデジタルメーターディスプレイとインフォテインメント・スクリーンを1枚のパネルに統合。棚のように張り出したダッシュボードはラリーカーにインスパイアされたもので、数種類のテキスタイルが用意されている。

サステナビリティを重視し、レザー素材は未使用。41kgのポリマーを含め、材料の18%がリサイクル素材となる。

5 Eテックは2025年半ばから、フランス北部の工場で生産開始予定だ。モーターは、初代5のエンジンを生産していたクレオン工場で生産される。


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