太陽は地球から1億4960万kmの距離にありますが、その活動は地球の気候から電波通信までさまざまな影響を与えています。

太陽活動には周期性があることがわかっており、あまりに活動が活発化すると私たちの生活にも影響を及ぼす可能性があります。

そのため世界中の宇宙機関が太陽の観察にも熱心に取り組んでいます。そして欧州宇宙機関(ESA)はここ2年半で太陽の活動が活発化していることを報告しており、それは太陽を撮影した画像からも一目瞭然だという。

確かに専門家でなくとも、「2021年2月」と「2023年10月」の太陽の画像を見れば、誰もがその違いに驚くはずです。

目次

  • 太陽活動周期とは
  • ESAが約2年半の太陽の変化を公開!黒点や太陽フレアの違いが明らかに

太陽活動周期とは

太陽は周期的に変化している
太陽は周期的に変化している / Credit:Canva

太陽は、活動や見かけが周期的に変化しており、活動の活発化と沈静化が波のように繰り返されています。

この活発と沈静の1セットを1周期として「太陽活動周期」と呼びます。

この周期は約11年ごとに巡り、観測されて以来、1755年~1766年を「第1太陽周期」とし、以降も番号が付けられています。

最近では、第23太陽周期が1996年5月~2008年12月であり、第24太陽周期が2008年12月~2019年12月でした。

つまり2024年現在は、第25太陽周期が始まって数年経った段階にあるのです。

太陽活動周期は、太陽の活動が最も小さくなる「太陽極小期」で区切られる
太陽活動周期は、太陽の活動が最も小さくなる「太陽極小期」で区切られる / Credit:Wikipedia Commons_太陽活動周期

この太陽周期の切り替わりは太陽活動の最小値を基準点としています。

太陽活動周期はさきほどの述べた通り波となっていて、太陽活動の最小(太陽極小期)→ 最大(太陽極大期)→ 最小(太陽極小期)の一巡りを1周期としています。

そのため、「太陽極小期の観測」こそが、1つの周期の終わりと、新しい周期の始まりを意味するのです。

とはいえ、上の画像を見ると分かる通り、太陽活動はの変化は綺麗な直線で描けるようなものではないため、太陽極小期を数カ月以下の短い期間で断定することはできず、実際に確定させるには6カ月ほどの観測が必要です。

だからこそ研究者たちは、太陽活動周期を見極めるためにも、太陽の活動や見た目の変化に敏感なのです。

では、太陽活動周期が極小期から極大期へと移行する中で、実際の太陽にはどれほどの変化が生じているのでしょうか。

ESAが約2年半の太陽の変化を公開!黒点や太陽フレアの違いが明らかに

2024年2月13日、欧州宇宙機関(ESA)は、2020年に打ち上げられた太陽観測衛星「ソーラー・オービター」が撮影した太陽の画像を2枚公開しました。

(左)2021年2月の画像、(右)2023年10月の画像
(左)2021年2月の画像、(右)2023年10月の画像 / Credit:ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team

そのうち1枚は2021年2月に撮影されたものであり、もう1枚は2023年10月に撮影されたものでした。

2019年12月に太陽極小期を迎えた太陽は、2025年予想の太陽極大期に向かって活動を増しています。

比較画像は、その中のたった2年半の変化しか示していませんが、それでも大きな違いが見て取れます。

特に明らかなのは、「太陽黒点」と呼ばれる太陽表面の黒い点のように見える部分の違いです。

(太陽黒点は複数個が集まった状態で現れることが多く、このような集まりは黒点群と呼ばれます)

太陽黒点
太陽黒点 / Credit:Wikipedia Commons_Sunspot

この太陽黒点の正体は、磁力線の塊です。

磁力線が集中している場所では、強烈な磁場が形成されます。

そして通常、プラズマは太陽の奥から熱い状態で湧き上がり、太陽の表面で冷やされた後、再び奥へと沈み込んでいきます。

しかし強力な磁場がある場所では、そんなプラズマの対流が妨げられます。

プラズマは磁場に捕らえられて再び沈み込むことができないので、周囲よりだんだんと温度が下がっていき、その場所は暗くなるのです。

この暗い部分こそが「太陽黒点」であり、その表面温度は約4000℃です。

太陽黒点も十分温度が高いように思えますが、周囲の表面温度は6000℃なので、比較するとはるかに低いことになります。

ちなみに、太陽黒点は光を放っていないわけではなく、単に周囲よりも弱い光なので、黒く見えます。

太陽極小期の2019年12月には、太陽黒点がほとんど見られませんでしたが、極大期に向けて、活動が増大するとともに黒点も増加しています。

2年半で太陽フレア(爆発現象)も増加
2年半で太陽フレア(爆発現象)も増加 / Credit:ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team

またESAが示した比較画像では、太陽フレア(爆発現象)も多く確認できます。

太陽フレアもまた、太陽の活動が活発な時に発生しやすく、太陽黒点の付近で生じることが多いようです。

ちなみに太陽極大期には、太陽極小期よりも太陽フレアが50倍も発生しやすいと言われています。

予想される極大期が到来するまで、まだいくらかの期間が残っています。

太陽の活動は今後、公開された写真の状態よりも、いっそう活発になっていくことでしょう。

太陽活動が非常に活発化して巨大なフレアが発生すると、強力なプラズマ地球へ降り注ぎます。かつての地球ではこれが大きな災害になることはありませんでしたが、電子機器や通信機器が普及した現代では、太陽活動の活発化は非常に厄介な生前災害になる可能性があります。

そのため太陽の力強い変化とサイクルを理解することは、私たちの興味を満たすだけでなく、太陽が私たちにもたらすダメージや影響を理解する上で非常に重要です。

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参考文献

Sun’s surprising activity surge in Solar Orbiter snapshot
https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2024/02/Sun_s_surprising_activity_surge_in_Solar_Orbiter_snapshot

Look at How Much the Sun Has Changed in Just Two Years
https://www.universetoday.com/165786/look-at-how-much-the-sun-has-changed-in-just-two-years/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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