ベランダや庭、公道にまで積み上げられたゴミ――近隣で「ゴミ屋敷」と呼ばれる家の前にたたずむ少年がいた。彼はゲームやアニメよりも家が好きで、気になったお宅を訪問し「お家、見せてもらっていいですか?」と交渉する。おばあちゃんに中に入れてもらうと、家の中もモノに溢れていてーー!?家を通して見えてくる人間模様を描いた漫画家・佐久間薫(@sasakumako)さんの「お家、見せてもらっていいですか?」は、昨年12月に発売以降「素敵な話」「家の間取りも楽しい」と重版となり、Xでも3.6万いいねと話題を集めている。

【漫画】ゴミ屋敷に入ってみると?

■家の外までゴミに溢れかえった「ゴミ屋敷」。でも、家主にとっては「ゴミ」という認識ではなく!?

小学3年生の家村道生は、ゲームやアニメよりも「家が好き」。将来一軒家に住むことを夢見て、家を研究している。大きな日本家屋や要塞のような家など、道生はさまざまな家を見つけて「お家、見せてもらっていいですか?」と交渉する。

本書のなかでも話題を集めたのが、第4話の「おばあちゃんの屋敷」だ。外から見ても庭やベランダにはゴミ袋や家具、家電、時計やタイヤなどさまざまなモノで溢れ返っている。さらにゴミは家の塀を超え、公道にまで広がっていた。

道生が「家の自由研究していて、家を見せて欲しい」と訪ねるが「子どもなんかうるさくて、あたしゃ大嫌いだよ!」と一蹴。仕方なく庭に放置された被り物を見ていると「勝手に人のものを」と家主が現れた。

ゴミ屋敷のモノに興味津々な道生を見て「特別に見せてやろう」と、家の中に入ることが許された。もちろん家の中もモノで溢れ返っている。道生が「いつからものを集め始めたんですか?」と取材を始めると、おばあちゃんは過去を振り返り「ものがあると安心する」と話した。側から見れば「ゴミ」でもおばあちゃんにとっては、ゴミではないのだった。

■「家」と「人」の関係を研究する、小学3年生家村道生が生まれた理由

本書の主人公・小学3年生の家村道生は非常に魅力的だ。家に突撃訪問するのではなく、毎回おいしいお菓子を1つ持参する。取材を通して、家と住人の関係を聞き出していく不思議な力がある。今回は漫画家・佐久間薫さんに「家」を題材にした経緯や道生が生まれたきっかけを聞いた。

――「家」がテーマの本作。コンセプトを「家」にした経緯を教えてください。

散歩をしながら家を見るのって楽しいですよね。「中はどうなっているんだろう、住んでいる人はどんな人だろう…」と考えるけど、現実ではなかなか訪問して見せてもらうことはできないですよね(笑)。ですので、漫画で擬似体験できたら楽しいだろうな〜と思って。また、家を訪問すると住人たちとも接触するからドラマも生まれやすい。そこもポイントでした。

――「突撃お宅訪問!」する愛すべきキャラクター道生くんは、どのように生まれましたか?

そうですね、もじもじしてると話が進まないので、好きなことにはずんずん進んでいくキャラにしました。あとは私の憧れも入ってるかも…。何かに夢中になっている人は魅力的なので!

――話の最後に訪問した家の間取りを見ることができます。「間取りを見るのが好き」という方もいました。

ラストの間取りは、担当編集者さんのアイデアなんです!素晴らしいですよね〜。これがあるのとないのでは満足度が違ってくる。しかし監修の松谷さんからご協力いただきましたが、描くのが大変でした…。

――本作を描くうえで、どのように家と住人を決めていったのでしょうか?

私が実際に散歩していて気になった建物がベースになっています。さらに「こういう家主が住んでいるとしたらどんな家だろう…」と、ひたすら想像して捻り出しました。実際に取材させてもらって作ったお話もあります。

――最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。

この作品は家の造形と人間ドラマを楽しめる内容になっています。私はあまり器用ではないので、今までこのような漫画は描いたことがなく大変苦労しました。しかし、その甲斐あって重版も決まりました。多くの方に読んでいただきたいです!

大きな日本家屋、要塞のような家、増築しすぎの家など、道生は変わった家を見るたびに訪問する。そこに住んでいる人とユニークな建築の理由や思いを記録していく。最後に道生が建てたい一軒家とは、一体どんなものになるのだろうか?

取材協力:佐久間薫(@sasakumako)

「お家、見せてもらっていいですか?」小学生がゴミ屋敷を訪ねてみたら?/画像提供:(C)佐久間薫