“JUJUに似ていると噂のママ”が営むスナック「スナックJUJU」。全国津々浦々、これまでじつに65店舗が出店されてきた噂のスナックが、2月17日、史上最大規模となる東京ドームへ初出店を果たした。【ソニー銀行 presents -ジュジュ苑スーパーライブ- スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~】と題し開催された、熱狂の一夜をレポートする。

 会場内に入ると、手にドリンク(やはりビールなどのアルコール類が多かった)やフライドポテトなどの軽食を持つ観客の多さに驚かされる。ドーム場内の売店にも行列ができ、客席内にも野球の試合時さながらにビールの売り子が駆け回っている。また今回、ステージ前最前方の座席は「スナック VIPアリーナテーブル席」として、ママの直筆お手紙やオリジナルグッズ、ワンドリンク付きのテーブル型座席として用意されたほか、コンサート公演としては珍しく、キャビンタイプの席種も幅広く販売されていた。やはりここは“スナック”で、訪れた客は皆、ママの歌をつまみに“酔う”ために足を運んでいるのだ。

 ボーイ“神ちゃん”こと神尾晋一郎のアナウンスからオープニング・ムービーが始まると、ママがいよいよ「スナックJUJU」に姿を現す。彼女がスナックのドアを開けるのと同時に、ステージセット上部を飾る店名のネオンが灯り……明転したステージの真ん中に、真っ白なドレスに身を包んだママが登場した。1曲目を飾ったのは「二人でお酒を」。観客も自然と手拍子で応え、さっそくドームがスナックの雰囲気に包まれる。

 「メモリーグラス」では、観客全員が持つLEDリストバンドが〈キラキラと輝くグラスには〉という歌詞をなぞるように光り始める。その光をママに届けようと、観客が叩く手も自然と上へ挙がっていた。「じれったい」ではやや暗くなったステージと、朱赤~赤に光っていくリストバンドで染まる会場、そしてママの低めに抑えた歌声がなんとも色っぽい。

 曲終わり、ママが深々とお辞儀をすると、「ママー!」とあちこちから呼びかける声がこだまする。「みなさま、本日はお忙しい中、たくさん、たくさん、こんなにもたくさん、この水道橋のお店に足をお運びくださりありがとうございます。私、当店のママでございます」との挨拶の後は、「私、JUJUさんによく似てると言われるんですけども、全くの別人でございます!」と改めて念押しし、会場からは笑いが。

 ママがおもむろに「皆さんと、ふらっとどこかへ旅に出かけたいと思っているんです」と語り始めると、異国情緒を感じさせる曲のコーナーがスタート。「桃色吐息」では、ステージバックにかかっていたカーテンが開き、背後のモニターに映し出される映像とあわせ、舞台はさながら大きなダンスホールへ。フラメンコギターフルートの、静かでいて情熱的なサウンドが、引きずり込まれてしまうかのような妖しい魅力を放つ。エレキギターで幕を開けるアレンジが耳に新鮮な「異邦人」では、イントロの印象的なリフをストリングスが引き受け、原曲よりもドラマチックかつ湿度を感じるアレンジの妙が光っていた。

 次は、恋のワクワク感を楽しむ“スナック大人の交差点 ~出会いのコーナー~”と題したブロックへ。「CHA-CHA-CHA」のイントロが流れ始めると自然と手拍子が起こる。ダンサーたちも登場し、一緒に体を揺らし始める人も。

 ここで本日最初の“スーパーゲスト”が到着したとのアナウンスが響き、客席からは期待の歓声が。ステージセンターから“常連のマーチンさん”こと鈴木雅之がご来店。そのまま「め組のひと」「違う、そうじゃない」のメドレーで会場を大きく沸かせていく。歌い終え、「私がそう、“ラヴソングの王様”、鈴木雅之です! 今日は素敵なママに会いにきました!」と挨拶。JUJUのことを彼女のデビュー時から「素敵」と絶賛しているエピソードを明かしつつ、今回のスナックJUJUには「スナックJUJUはね、昭和パワーが満載じゃないですか。その昭和パワーには、“ラヴソングの王様”鈴木雅之、大事だなって思いますよね!」と宣言し、観客も熱い拍手をおくる。そしてママとふたり、揃って披露したのは「ロンリー・チャップリン」。スウィートかつパワフルに歌い上げると、颯爽とステージを降りていった。

 次は、出会いと別れ、大人の恋の悩みを歌うコーナーへ突入。「私はピアノ」では、こぶしの効いたママの歌唱とホーンの存在感、そして歌謡曲らしいメロディラインがムーディな雰囲気を盛り立てる。そして曲終わり、ステージ脇に構えられたバーカウンターのハイチェアにママが座ると、スタートしたのは「恋におちて」。イントロが流れた時点で感嘆の声があちこちから漏れ、人気の高さがうかがえる。モニターには、カウンターに乗った花瓶に詰まったたくさんの赤いバラと、ママのツーショットが映し出され、その切ない表情に心が揺さぶられる。曲が終わると、「誰かを好きになる気持ちは、いちばん大事な心の揺れ」と静かに語りだすママ。観客も聴き入り、会場はしっとりしたムードに包まれた。

 ここで、スナックJUJU恒例の「デュエットコーナー」の時間に。観客の中から“ママと歌いたい人”を募り、ステージ上でデュエットを披露するという、全店舗で行われてきた名物コーナーであるが、今回は候補曲4曲、そしてそれぞれのデュエット代表者として選ばれた観客の中から、「ラヴ・イズ・オーヴァー」代表のchiakiさんが当選。スナックJUJU自慢のカラオケ・システム「CATSOUND」を使って(曲前、「前奏23秒」のテロップが流れたのには爆笑が起こっていた)、緊張しつつもママとデュエットを繰り広げた。見守る観客たちも、歌い出しで拍手や歓声を送ってねぎらっていて、ここがドームであることを忘れさせるほど、親密な“スナック”の雰囲気が満ちていく。

 続いて、こちらも定番コーナー「今月のユーミン」へ。今回は、ちょうど日が落ちた時間であるタイミングに合わせ、「翳りゆく部屋」をピックアップ。ママの足元にはスモークが立ち込め、一層強くステージを照らすライトとともに、曲の音像が持つ神聖さを引き立てていた。

 余韻にひたっていると、ここでスペシャルゲスト2人目の来店が知らされる。ドラムビートが期待感を煽るなか、登場したのはNOKKO。レッドブラウンの長い髪をデヴィッド・ボウイのようにかき上げ、モノトーンのセットアップで決めた姿はロック・スターの風格で、さらにその少女性を忘れない歌声が、「フレンズ」「RASPBERRY DREAM」の世界観に観客を引き込んでいく。引き込まれたのはママも同じようで、歌い終えたNOKKOに「JUJUさんも私もレベッカが大好きで、レベッカの曲の強い女の子に憧れていました。お会いできて光栄です!」「可愛い!!」と興奮を隠しきれない様子だ。そして、JUJUとママの思い出の曲「Maybe Tomorrow」をふたりでデュエット。アウトロではハグを交わした。

 「いいもの聴かせていただきました……」と、NOKKOがステージを去ったあとも興奮冷めやらないママだったが、ここで客席へトロッコで“ご挨拶”に回る時間に。案内役にボーイ・神ちゃんも姿を見せ、寄せられたお悩み相談に応えながら、来店客の声援に応える。そしてトロッコが後方ステージに到着すると、アコースティック編成で「なごり雪」「いとしのエリー」を披露。雪のようにちらちら光るライトバンドや、少ない音数だからこそ引き立つハーモニーの美しさに、会場の雰囲気もうっとりとしてくる。

 トロッコは再び、メインステージへママを運ぶ。その間に、2023年に【スナックJUJU】が47都道府県で“出店”された際の「ご当地曲」53曲の中から、厳選された楽曲が披露されることに。「ここからは、私がマイクを向けたら声を出す!」と約束を交わすと、流れ出したのは「伊勢佐木町ブルース」。会場は一面ショッキングピンクのライトに照らされ、ママの合図で観客が悩ましげなコール&レスポンスを繰り広げた。続く「どうにもとまらない」では、軽快なビートエレキギターの音色に合わせ、見事に揃った手拍子のリズムが心地よい。

 ママがメインステージに到着すると、会場が暗転。再び明るくなると、ステージの真ん中にキーボードとともに現れたのはママ、ではなく小田和正だった。客席からは驚喜のため息が漏れる。そのまま「言葉にできない」を、まずはワンコーラス弾き語り。2番からはママと“流し”(バックバンド)も参加するという、なんとも贅沢な構成で届けた。

 普段スナックには足を運ばないという小田だが、今回はママの熱望で「スナックJUJU」へ初来店してくれたとのこと。「小田さんの『どーも!』は縁起がいい」というママに、小田も「自分で言ってて、自分も結構元気が出るんですよ」と明かす。マイペースな会話を楽しみ、「きっと皆さんも大好きな曲を歌います!」とのママの紹介に続いたのは「Yes-No」。そして、あのイントロのギターで歓声が湧き上がった「ラブ・ストーリーは突然に」と繰り出し、観客も大興奮。その熱を感じてか、小田も何度も「ありがとうー!」と楽しそうに呼びかける。最後はママとハグを交わし、ステージを後にした。

 ここからはいよいよラストスパート。歪んだ音色のギターソロ、そしてステージ一列に花火が噴きあがると、「あゝ無情」から始まり、「嵐の素顔」「淋しい熱帯魚」「DESIRE -情熱-」「ミ・アモーレ」と、往年のスナック定番曲を集めた“スナックメドレー”がスタート。定番のコールやダンスが、誰が指示するでもなく会場一体で揃う。まさに燃え上がるような盛り上がりを見せていた。そして「宴もたけなわではございますが、そろそろ当店、閉店の時間でございます。この場所で皆さんと過ごした時間、私、一生、宝物にして生きていきます。本日はご来店、誠にありがとうございました」との言葉から、最後の曲となったのは「喝采」。紙吹雪が歌うママを包みこむさまは、昭和の音楽番組を彷彿とさせるエモーショナルさだ。曲が終わると、ママは深々とお辞儀。そのままステージ裏へ吸い込まれるように姿を消した。

 「スナックJUJU」の閉店後も、未だに興奮冷めやらない観客たち。そこに、ママの代わりに“あの人”が来てくれた、とのアナウンスが入り――今度は、ゴージャスなゴールドのミニワンピースに身を包んだ“JUJU”がステージに登場。まずは、現在放送中のテレビ朝日系木曜ドラマ『グレイトギフト』主題歌である最新曲「一線」をライブ初披露する。

 「皆さん、スナックJUJU、楽しかったですか? さっきママとすれ違ったんですけどママ泣きながら帰ってました。皆さんとの別れが惜しかったみたいですけど、でももうママのことなんかすっかり忘れて、“JUJU”と遊びませんかー!」とJUJUが呼びかけると、観客も再びボルテージを上げていく。そして、最後はカラオケの定番、ヒットメドレータイトルが名付けられた「JUJUメドレー2024」へ。アッパーな「What You Want」から始まり、「素直になれたら」「明日がくるなら」「ラストシーン」「この夜を止めてよ」「S.H.E.」「YOU」、そして「やさしさで溢れるように」と、デビュー20周年を迎えたJUJUの歴史を伝えるかのようにたたみ掛けた。特に、最後の「やさしさで溢れるように」では、〈二人を繋ぐ想いが〉との歌詞が〈みんなを繋ぐ想いが〉へとアレンジされ、そのJUJUの心遣いに呼応し、直後の大サビは観客が大きな歌声を返す。この時、東京ドームは間違いなく、JUJUと観客のお互いを想う“やさしさ”に溢れていた。

 歌い終えると、JUJUは客席を見つめながら「皆さんに連れてきていただいたこの20年、そしてこれからの20年に続くよう、いろんなことを、皆さんと楽しみながら進んでいこうと思っております。これからも、何卒、JUJUを、そしてちょっとだけ減らした愛情でママも(笑)、よろしくお願いします! 今日は本当にありがとうございました!」と挨拶。最後はマイクを通さない地声で「ありがとうございました!」とドーム響き渡る声で叫び、3時間と少しに及んだ“大歌謡祭”の幕をおろしたのだった。


Text by Maiko Murata
Photo by Michiko Kiseki(KISEKI inck)、Chie Kato(CAPS)、Kayoko Yamamoto

◎公演情報
ソニー銀行 presents ジュジュ苑スーパーライブ スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~】
2024年2月17日(土) 東京・東京ドーム

セットリスト
1.二人でお酒を
2.メモリーグラス
3.じれったい
4.桃色吐息
5.異邦人
6.CHA-CHA-CHA
7.め組のひと~違う、そうじゃない
8.ロンリー・チャップリン
9.私はピアノ
10.恋におちて
11.ラヴ・イズ・オーヴァー
12.翳りゆく部屋
13.フレンズ~RASPBERRY DREAM
14.Maybe Tomorrow
15.なごり雪
16.いとしのエリー
17.伊勢佐木町ブルース~どうにもとまらない
18.言葉にできない
19.Yes-No~ラブ・ストーリーは突然に
20.あゝ無情~嵐の素顔~淋しい熱帯魚~DESIRE -情熱-~ミ・アモーレ[Meu amor e...]
21.喝采

En1.一線
En2.JUJUメドレー2024(What You Want~素直になれたら~明日がくるなら~ラストシーン~この夜を止めてよ~S.H.E.~YOU~やさしさで溢れるように)

<ライブレポート>史上最大規模のスナック【スナックJUJU 東京ドーム店】 鈴木雅之/NOKKO/小田和正も駆けつけ、誰も彼もが酔いしれた一夜