池松壮亮がメインキャストを務める、奥山大史監督の商業デビュー作となる映画『ぼくのお日さま』が、今秋公開されることが決定。本作は、ハンバート ハンバートの同名タイトル曲が主題歌に決まった。

【写真】少年タクヤ、少女さくら、元フィギュアスケート選手でコーチ・荒川(池松壮亮)の視点で紡ぐ物語に 映画『ぼくのお日さま』場面カット

 本作は、史上最年少で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史(おくやま・ひろし)監督の商業デビュー作。雪の降る街を舞台に、吃音をもつホッケー少年のタクヤと、フュギュアスケートを学ぶ少女さくら、そして元フィギュアスケート選手でさくらのコーチ荒川の3人の視点で紡がれる物語だ。

 奥山監督は、大学在学中に制作した長編初監督作『僕はイエス様が嫌い』(2019)で、史上最年少となる22歳で、歴史ある第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞。是枝裕和監督、岩井俊二監督らにも一目置かれ、是枝総合演出のNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』で5、6、7話の監督・脚本・編集(5話は是枝監督との共同監督)を務めたほか、3月4日から放送されるNHK夜ドラ『ユーミンストーリーズ』では、第3週『春よ、来い』(主演:宮崎あおい)の演出を担当する。

 奥山が子供の頃に約7年間フィギュアスケートを習っていた経験から、「雪が降り始めてから雪が解けるまでの少年の成長を描きたい」と本企画をスタート。プロットを考える中でハンバート ハンバートの楽曲「ぼくのお日さま」と出会い、その歌詞を聞いた途端「主人公の少年の姿がはっきり浮かび、物語がするすると動きだした」という。

 一方、本企画をスタートさせる前後に、奥山は自身が総監督を務めた「エルメスHERMES)」のドキュメンタリーフィルム『HUMAN ODYSSEY ―それは、創造を巡る旅。―』で池松壮亮と撮影をともにしたことで、池松の佇まいに魅せられ、この物語に大人の目線を加えたいと思ったことから「夢に敗れた元フィギュアスケート選手のコーチ」という池松が演じたキャラクターを作り上げた。

 池松は「奥山大史という凄まじい才能に出会い、対話を繰り返し、共感し合い、共犯できた全ての時間に感謝しています。この世界の光の粒のような2人の才能に出会えたことにも感謝しています。今作を共に創り上げたスタッフキャストと共に、この素晴らしい作品を届けることができることを幸せに思います」とコメントを寄せる。

 楽曲「ぼくのお日さま」は、ハンバート ハンバートが2014年に発表したアルバム『むかしぼくはみじめだった』に収録されている。これまで主題歌オファーがあっても断ってきたほど大切な楽曲だったが、奥山からの手紙を読んで、オファーを快諾したという。

 デビュー作『僕はイエス様が嫌い』に続き、本作でも監督、撮影、脚本、編集を手がける奥山は、スケートを滑りながら、カメラを回している。本作は、釜山国際映画祭2022で行われた世界40ヵ国288企画からなる「Asian Project Market(APM)2022」で「ARRI アワード」を受賞しているほか、これまで濱口竜介監督、三宅唱監督らの作品を世界へ紹介してきたフランスの会社「シャレード」による海外セールスも決まっており、黒沢清監督や深田晃司監督の作品をフランスで公開してきたアートハウス・フィルムズの配給により11月にフランス公開される予定だ。

 映画『ぼくのお日さま』は、今秋より全国公開。

 池松壮亮ハンバート ハンバート、奥山大史監督のコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■元フィギュアスケート選手のコーチ・荒川役/池松壮亮

 奥山大史という凄まじい才能に出会い、対話を繰り返し、共感し合い、共犯できた全ての時間に感謝しています。この世界の光の粒のような2人の才能に出会えたことにも感謝しています。今作をともに創り上げたスタッフキャストとともに、この素晴らしい作品を届けることができることを幸せに思います。この世界の雪解けを予感させてくれるような、あまりにもピュアで、心に響く映画になりました。ぜひ楽しみにしていてください。

■主題歌/ハンバート ハンバート・佐藤良成

 奥山監督から最初手紙をいただきました。今作ろうとしている映画は、私の曲の中の「ぼく」から物語がふくらんだもので、主題歌にもその曲「ぼくのお日さま」を使いたいと。脚本や前作も拝見して、彼とぜひ仕事したいと思い快諾しました。出来上がった作品は、どのシーンのどのカットも実に美しい光と色で、こんな絵を撮る奥山監督は恐ろしい人だなと思います。自分の曲がこんなにも素晴らしい映画となって生まれ変わるなんて、本当に幸せです。

■主題歌/ハンバート ハンバート・佐野遊穂

 とにかく映像の美しさが印象的でした。どこを切り取っても儚さが漂っていて、監督のキャラクターがそこに一番現れてるように感じました。この楽曲の「ぼく」や、タクヤ、荒川コーチ、それぞれに小さな救いがあったように、この映画がまた誰かのお日さまになれば嬉しいことだと思います。

■監督・撮影・脚本・編集/奥山大史

 いつの日か、子どもの頃に習っていたフィギュアスケートの映画を作りたいと思っていました。でもなかなか作れずにいました。ただ思い出を映像にするだけでは映画にならない、と頭を抱える日々でした。

 そんな時、「ぼくのお日さま」という楽曲に出会い、惹かれるまま毎日聴くうちに、全く新しい物語が動き始め、時を同じくして、池松さんに出会い、この方の魅力を映し出すことができたら、映画になると確信できました。

 この作品で商業映画に初挑戦できたこと、嬉しく思います。どうぞご期待ください。

映画『ぼくのお日さま』より(左から)奥山大史監督、出演の池松壮亮、主題歌のハンバート ハンバート (C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS