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(写真:〔左〕T.Miyata〔右〕TY/PIXTA)

しゃぶしゃぶで有名な料理店『木曽路』西新井店(東京都)で、1月30日から2月3日にかけて、恵方巻きなどを食べた6歳から88歳までの客160人以上が下痢や嘔吐などを訴える集団食中毒が発生。足立保健所はノロウイルスが原因だと断定した。

また、2月19日には、茨城県の特別養護老人ホームで入所者と職員合わせて36人が感染性胃腸炎を訴えた。うち3人を検査したところ、いずれもノロウイルスが検出された。

ノロウイルスは、秋冬の、乾燥した時期に流行します。なかでもインフルエンザ流行の前後、12月と2月ごろに患者さんが多くなります。

非常に感染力が強く、集団感染を起こしやすいのが特徴。ノロウイルスを含んだ吐しゃ物が乾燥してパリパリになり、空気中に漂って感染することもあります。ホテルの通路でノロウイルスに感染した人が嘔吐。掃除後、同じ通路を行き交ったホテル利用者から感染者が出たケースもありました」

こう語るのは、ナビタスクリニック立川の医師、久住英二さんだ。

日本での食中毒患者の6割を占めるノロウイルスに関しては、血液型との関連を調査したレポートも発表されている。

2002年、感染症ジャーナルに掲載されたアン・M・ハトソン氏、ロバート・L・アトマー氏らの論文では、51人を被験者に、ノロウイルスを経口摂取させて感染の有無を調べている。

実験結果は、O型で感染しなかった確率はわずか4%だったが、B型は40%と10倍も感染率に開きがあった。A型で感染しなかった確率は22%、AB型は100%と感染者がいなかった。感染リスクはO型がもっとも高く、AB型がもっとも低いという結果だ。

「2005年の感染症学雑誌に掲載された、北海道立衛生研究所の論文によると、国内の小中学校で起きたノロウイルス食中毒感染者らを調査したところAB型が、もっとも低い発症率でした」(久住さん、以下同)

いずれの調査でもAB型は感染リスクが低いという結果だが、まだ研究段階だからこそ、どんな血液型でも油断は大敵だ。

「症状は1日、2日で治るものの、4人に1人は体内にノロウイルスが残り、3週間ほど排せつが続くという研究結果があります。一度の感染で、周囲の人に広がる可能性があるので、誰もが対策を講じる必要があります」

感染経路は食べ物や、汚染された手で作られた料理などある。

■人の手に触れるところに潜んでいる可能性が大

「浅い海で育てられ、下水や生活排水からノロウイルスを取り込みやすいカキなどに代表される二枚貝が感染源となることが多いです。ノロウイルスの症状を訴える患者さんの中には『2日前にカキを食べた』という人も多くいます」

それよりも多いといわれるのが“糞口感染”だ。便に含まれたノロウイルスが、手からドアノブや料理などに移り、最終的に口に入ってしまうのだ。

「下痢をした場合、お尻の表面にウイルスが付着します。トイレットペーパーで拭くときに、手首やシャツの裾に接触して拡散されていきます。

トイレの蛇口、ドアノブなども感染経路。石けんでの手洗いが中途半端だったりすれば、その後に接触した吊り革や手すりなどにも広がっていきます。

公共機関を利用している人を調査したイギリスの研究では、じつに28%にのぼる人の手から、便に含まれる細菌が発見されました。ノロウイルスも人の手が触れるところに潜んでいる可能性が高いということです」

感染者の便には1gあたり10億個のノロウイルスが含まれるという。

「いっぽう、ノロウイルスはわずか100個未満の少ないウイルス量でも感染するといわれています」

感染したウイルスの数によって、症状が変わってくる。

■予防はとにかく石けんで手をよく洗うこと!

新型コロナウイルスでも同じですが、一般的にウイルス量が多いほど症状が重くなる傾向があります。

ノロウイルスの場合、感染して1日から3日ほどして症状が出ます。重い場合は下痢や嘔吐、腹痛のほか、寒気や発熱症状が出ます。水を飲んでも吐いてしまう、下痢も10回以上出てしまう、胃がキリキリ痛む、腸に締め上げられるような痛みが出たりしますが、1日ほどで峠をこえ、快方に向かいます。

軽い症状の場合は1回吐いたり、1?2回下痢をして症状が治ったりします。

薬も熱に対して解熱剤、吐き気に対して吐き気止め、下痢に対して整腸剤を処方するくらいです。脱水が怖いので、水や経口補水液、スポーツドリンクなどを飲むようにしましょう。内臓の温度が38度ほどなので、同じくらいの温度に温めて飲むと消化器への負担は少ないです」

予防するためには、料理や食事をするときに、しっかりと石けん手洗いすることだ。

新型コロナの流行でアルコールに頼る人も多いですが、ノロウイルスにアルコール消毒は効きません。石けんによる手洗いが基本です。ノロウイルス感染者の吐しゃ物を床掃除する際は、アルコールではなく、塩素系漂白剤など次亜塩素酸ナトリウムを含んだものを薄めて利用しましょう」

特効薬もワクチンもないノロウイルスノロウイルスを寄せ付けないよう、まずは石けん手洗いを徹底しよう。