キングスマン」シリーズなどで知られるマシューヴォーン監督が、再びスパイの活躍を描く『ARGYLLE/アーガイル』(3月1日公開)。本作にはヘンリー・カヴィルを筆頭にサム・ロックウェルサミュエル・L・ジャクソンら豪華キャストが顔をそろえているが、ねらってか偶然か、多くの俳優がこれまでにスパイ役を経験している。ということで、ここでは彼らのスパイ遍歴を振り返っていきたい。

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ボンド候補にも…スパイが似合いすぎるヘンリー・カヴィル

スゴ腕エージェント、アーガイルを主人公とした小説「アーガイル」の作家エリー(ブライス・ダラス・ハワード)は、新作の内容が現実を言い当てていたことから、知らず知らずのうちに、小説の続きをめぐるスパイ組織の騒動に巻き込まれてしまうことに…。人気のスパイ小説家が、本の内容を理由にスパイによる騒ぎに巻き込まれ、現実と小説の世界との線引きがしだいに曖昧になっていく本作。小説のなかで活躍するスパイ、アーガイルを演じているのがヘンリー・カヴィルだ。

007」のボンド役オーディションでは最終テストまで残ったという話も示すように、端正な顔立ちとガタイのよさ、セクシーな佇まいはまさにスパイ役にうってつけ。ドラマ「0011ナポレオン・ソロ」をガイ・リッチーがリメイクした『コードネーム U.N.C.L.E.』(15)では主人公のCIAエージェント、ナポレオン・ソロ役に抜擢。余裕に満ちた微笑みや軽快なトークなどチャーミングな演技で、堅物なKGB工作員とは正反対の、いかにも西側諸国といったチャラいスパイ像を体現した。

さらに「007」と並ぶスパイシリーズの6作目『ミッション:インポッシブルフォールアウト』(18)にも出演。イーサン・ハント(トム・クルーズ)と共に行動する敏腕CIAエージェントのオーガスト・ウォーカーを演じると、肉体派なゴリゴリのアクションをこなすと同時にどこか裏がありそうな怪しげな雰囲気も放ち、物語に謎をもたらす存在感を示した。

■まさかの職業とスパイを兼業した実在の人物に扮したサム・ロックウェル

そんな小説のなかのアーガイルに対し、現実のスパイとして登場するのがサム・ロックウェル演じるエイダン・ワイルド。怪しげな風貌でエリーの前に現れると、彼女を謎の男たちから守るため、行動を共にすることになる。

ハードなアクションをこなすなどスパイという役どころを嬉々として演じているロックウェルもまた、テレビプロデューサーとCIA秘密工作員、二足の草鞋を履いていたというチャック・バリスの自伝(のちに真実でないことが判明)を基にした『コンフェッション』(02)でスパイに扮している。昼はテレビマン、夜はCIAとして暗躍する主人公バリスを演じたロックウェルは、エンタメにおける“ザ・スパイ”的なチャラさから追い詰められて焦る様子まで、起伏の激しい芝居で、突如スパイリクルートされた男の波乱万丈な人生にリアリティをもたらした。

また、ズバリその名も『スパイアニマル・Gフォース』(09)という作品でも、Gフォースのリーダーであるモルモットダーウィンの声を担当するなど、なにかとスパイには縁があるようだ。

サミュエル・L・ジャクソンジョン・シナの代表的キャラも実はスパイ

キングスマン』(14)では悪役でインパクトを放ち、『ARGYLLE/アーガイル』でも素性のわからない怪しげな男に扮しているサミュエル・L・ジャクソン。彼の代表的キャラクターといえば、『アベンジャーズ』(12)をはじめとするMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で演じたニック・フューリー。『キャプテン・マーベル』(19)では、平和維持組織S.H.I.E.L.D.の若きエージェントとして登場した、スパイと言えるキャラクターだ。

ヒーローものゆえか、スパイのイメージが弱いフューリーだが、初めて彼が主役となったドラマ「シークレット・インベージョン」は、誰が敵で味方かわからないというスパイ映画的なエッセンスの強い作品となっていた。

また、アーガイルの協力者と思しき男を演じているジョン・シナ。彼の代表キャラの一つである「ワイルド・スピード」シリーズのジェイコブも、影の世界で暗躍する秘密工作員スパイのわりにあまりに行動がド派手なのはご愛嬌。最新作『〜ファイヤーブースト』(23)では魅力的なガジェットを駆使しながら兄ドミニク(ヴィン・ディーゼル)の息子を守り抜いた。

ブライアン・クランストンなど、まだまだいるぞ!

このほかにも、エリーに小説の続きを書かせようと躍起になる組織のお偉方リッター役のブライアン・クランストンも、「ザ・シンプソンズ」のシーズン23・第20話「私を学んだスパイ」というエピソードで、主人公ホーマーのイマジナリーフレンドとして現れるスパイ映画の人気キャラ、ストラディバリウス・ケインの声を担当。

さらにソフィア・ブテラも、各国のスパイが入り乱れる状況を描いた『アトミック・ブロンド(17)に、主人公ローレン(シャーリーズ・セロン)と恋仲になるフランスDGSEのエージェント、デルフィーヌ役で出演。同業者が次々と殺される状況に不安を感じるスパイの繊細な胸中を体現した。

『ARGYLLE/アーガイル』は、数々の作品でスパイを演じてきた役者たちが、マシューヴォーンならではのツイストの効いた物語のなかで入り乱れるだけに、その結末は予測不能。どんな裏切りで観る者を驚かせてくれるのか?スパイたちの活躍をぜひ劇場でチェックしてほしい。

文/サンクレイオ翼

サム・ロックウェル、ヘンリー・カヴィルら多くのスパイ経験者が登場する『ARGYLLE/アーガイル』/[c] Universal Pictures