プラダを着た悪魔」ならぬ「フェラガモを着た赤い貴族」が北朝鮮にいる。

贅沢品の北朝鮮への輸出は、2006年の核実験を受けて、国連安全保障理事会で採択された対北朝鮮制裁決議1718号で禁じられている。しかし、ブランド品を求める「赤い貴族」こと北朝鮮上級国民の物欲は留まるところを知らない。

金正恩が「決裁」

平壌の貿易業者が、中国の業者を通じてブランド品を大量に取り寄せていると、中国のデイリーNK情報筋が伝えている。その手法は次のようなものだ。

貿易業者は、一般国民が自由に使えないインターネットを使って、ブランド品を検索する。彼らは顧客である特権層の好みや財力を把握しており、それに合わせて商品を探すのだ。そして、中国の業者に代理購入を注文する。画像を送る場合もあれば、まずはブランド名と商品の種類、購入希望価格をメールで送り、それに合った物を探してもらって画像で確認した上で取り寄せたりもする。

人気のあるブランドとしてはフェラガモ、グッチ、フェンディなどのTシャツ、ニット、靴などで、価格は5000元(約10万4600円)から6000元(約12万5500円)ほどだ。また、さらにハイエンドなブランドのトートバッグ、メッセンジャーバッグ、バックパックなども人気だという。

北朝鮮では最近、一部の企業で大幅な賃上げが行われたが、それでもこれらの品々は、飲まず食わずで10年分の給料を貯金してようやく買えるほどの超高級品だ。

高級なハンドバッグなどは、北朝鮮の新義州(シニジュ)の対岸にある中国・丹東では物量の確保が難しい。そのため、比較的確保が容易なこれらのアイテムを3〜4点、多い場合は100点ほど取り寄せる。一回の取引額は数十万元に達する。また、丹東では手に入りにくいものは、瀋陽やさらには遠く北京から取り寄せることもある。

情報筋は、「北朝鮮の人も、韓国の人と同じようにシンプルで高級感のあるデザインや色を好む。中国の人とは好みが違う」とし、その背景には韓国のドラマや映画の影響があると述べた。

このように輸入された商品は、平壌市内の高級百貨店や外貨商店で販売される。大成(テソン)百貨店、楽園(ラグォン)百貨店にはこうやって輸入された商品が多く売られている。また、顧客の要望に応じて取り寄せる場合もある。

朝鮮労働党の高級幹部は、市場の機能を抑制し、庶民の経済活動を阻害し、生活苦から履い出せなくする政策を押し付ける一方で、自分たちは贅沢三昧の暮らしをしているのだ。

それも、金正恩総書記お墨付きの上でのことだ。

韓国の政府系シンクタンク・統一研究院のオ・ギョンソプ上級研究委員は、「金正恩氏が平壌の高級百貨店と言える大成百貨店を現地指導した際に、『人民たちの便宜を保障しなければならない』と指示したが、この言及は結局、大成百貨店の主な利用者である平壌の高位層の需要を容認したものと見られる」と述べた。

妻子とともに軍創建記念宴に出席した金正恩氏(2023年2月8日付朝鮮中央通信)