これがサワードウブレッド。写真映えしないのが難点
これがサワードウブレッド。写真映えしないのが難点

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は欧米ではポピュラーなパン「サワードウブレッド」について語る。

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サワードウブレッドは、小麦粉やライ麦粉と水、そして自然発酵させた天然酵母で作るパンの一種。イースト菌を用いる一般的なパンより時間をかけて発酵させており、ほんのりとした酸味が特徴です。外皮はやや硬く、内側の食感はもっちりしていて、噛めば噛むほど麦の風味が強く感じられます。

欧米ではポピュラーなパンで、サラダパスタ、お肉料理の隣にさらっと1、2枚添えてあることも多く、食事パンの定番です。私は子供の頃から大好きで、あのクセになる風味を一度口にすると止まりません。日本ではまだ珍しいから帰国時に必ず食べてましたが、最近、日本でも提供するベーカリーが増えてます。

サワードウは体にいいことでも注目されています。使われているのは、生菌のバクテリアが含まれたフレッシュ酵母。バクテリアは、発酵の途中でグルテンやブドウ糖を食べます。グルテンが減ることによって消化しやすくなり、血糖値の急激な上昇が抑えられる上に、乳酸菌ができるので腸内の善玉菌の増加も期待できます。

一般的なパンより水分量も多いので、より消化吸収がいいみたいです。でも、健康やら腸活うんぬんより、シンプルにおいしいです。さっぱりしているし食感も良く、病みつきになります。

そんなサワードウが買えるお店。日暮里のベーカリー「VANER」は、サワードウ発祥の地ともいわれている北欧で修業したベーカリーさんが作った、東京の先駆者的なお店でしたが、さらなるパン修業のために2022年11月に閉店。このお店で働いていた方がオープンした広尾の「BROD」が味を受け継いでます。

クッキーまでサワードウ生地なオールサワードウのラインナップですが、私はシンプルなカントリースタイルという商品をよく買います。北欧タイプらしい、カリカリの外皮とキューッとくるような酸味とうまみがたまりません。初心者には、みずみずしいレーズン入りのヴァーネルがオススメ。

南青山の「Bartizan Bread Factory」では、アメリカ寄り(市川の主観)のサワードウがいただけます。北欧タイプより酸味がほのかで、外皮も少しやわらかく、内側はしっとり。サワードウが何種類もあり、オーソドックスなタイプ、全粒粉のタイプ、珍しい食パンタイプが楽しめる上、手作りバターもいくつかあって、イートインもいい感じです。

面白いロケーションだと、旧銀行跡に飲食店やショップが集結した茅場町のおしゃれ複合施設「BANK」。このビルに入っているベーカリーは、クロワッサンなども置いているけど、看板メニューはサワードウ。外皮はやわらか系、酸味は少ないけど噛み進めたときの小麦の味の変化が見事。発酵万歳。早稲田の「神田川ベーカリー」のサワードウも、穀物の風味がしっかりしていて、発酵の酸味と大地の甘さがたまりません。

静岡県沼津市の専門店「いせや本店」のサワードウも取り寄せました。イチジク×クルミクランベリー×クリームチーズなどのフィリング系が多くて、酸味+うまみ+甘みが最高。重くなりがちなあんバターサンドもサワードウでさっぱりしていて、サワードウの可能性を感じさせてくれました。

市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。いせや本店がある沼津は個人的に憧れの地。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

これがサワードウブレッド。写真映えしないのが難点