「適当」と言えばこの方、高田純次さん! 77歳までの1年間を渋々綴った1冊『最後の適当日記(仮)』(ダイヤモンド社)が話題だ。

オレは嘘が大嫌いなんだけど、平気でついちゃうんだ」「オレは、自分が楽をするためのアイデアは、どんどん湯水の如く湧いてくる」「オレにだって心はあるよ。ないのは、暖かいハートと人を思いやる心」等々、“高田節”が炸裂しまくる本書。「早く取材に来てくれないと死んじゃう…あと20〜30年先に」とのラブコールを受け、ご本人を直撃してきた。

◆会話はコミュニケーションの一環じゃなくて読心用

――ご著書では、ご自身の老化について触れていました。数十年後の自分を想像することで、身につまされる人も多かったと思います。

高田純次(以下、高田):みんな同じかもしれないけど、77歳まで生きる気なんてなかったからねえ。老眼で目は見えないし、耳も遠くなってきているから、会話はコミュニケーションの一環じゃなくて、読心用

他にもいろいろあるよ。トイレから出た後、大と小どっちをしたとか覚えていないし。忘れた名前を1時間後に思い出したりもする。食べたものを思い出せないなんて、頻繁にあるからね。「昨日の夕飯、俺は何を食ったんだっけ?」って。

夢を見たのか現実だったのかが曖昧なときがあるし、家の2階に行って「俺は何をしにきたんだっけ?」なんてしょっちゅうある。風呂場でひっくり返ることもあるし、仕事で「この川なら飛び越えられる!」とチャレンジして、半分ぐらいまでしか飛べずに川ポチャしちゃったり。

――高田さんでも寄る年波には抗えないと。

高田:ただね、俺は老化を受け入れているから。年食うごとに、精力旺盛になったら変でしょ? 77歳で「今日は3人のオネエチャンをやっつけた」とかさ。年齢とともに衰えていくのが普通なんだよ。すべて満足して生きていたら、つまらないよ。人間って、うまいことできているよね。

抗うわけじゃないけど、細胞活性剤の“アプリ”を飲もうと思っているんだけど、どれがいいか選べないし。

◆女房との関係は「水と軽いサラダ油

――それ、アプリではなくてサプリです(笑)!

高田:そうか、サプリか。家では仕事以外喋らないから、今日は嬉しいなあ。これも仕事のひとつだけど。

――自宅で奥様との会話は?

高田女房の名前は何だったかな……って、それはNGワードか。本には「水と軽いサラダ油ぐらい」って書いたけど、ほとんど喋らない。俺が「あー」とか「うー」とか言って、食事と風呂のサインを送る感じかな。

家には夜8時前には帰らないようにしているけどね。だって、料理を作るって大変でしょう。無償で作ってくれるなんて、究極のボランティアだよ。



◆77歳だけど気持ちは小学生だから

――そう思えるだけ奥様に感謝してるってことですね。ウソではないと信じたいです。

高田:まあ、長く生きてきたからね。昔はウソひとつつかなったのに、今じゃウソばっかりかもしれないなあ。この仕事だからこそなんだろうけど、今でも変わった世界に足を突っ込んだって思っているよ。笑うツボは人によって違うし、何が身についたか具体的にわからない職業だし。他に楽しい仕事がないから続けているけど、俺が今30代か40代だったら楽しいだろうね。心身ともに元気だろうし、楽しみもたくさんあるから。

俺が刀を持っていた時代や、戦争に出兵した時代は……

――高田さんは刀を所持していませんし、戦争も経験していません(笑)。

高田:ああ、そうか。脳みそのネジが緩んできちゃっているのかな。それとも、77歳だけど気持ちは小学生だから、突飛な言葉が出ちゃうのかな徳川家康は当時の寿命以上に長生きしたし(享年75)、うちの親父より俺は長生きしているからねえ。

――長く生きてよかったと思えることは。

高田:特にないね。体が使えるうちは、気遣ってほしくもない。気遣われないほうが楽なんだよ。撮影で「ここに階段が5段あります」とか説明されると、ありがたいけど「150段ぐらい余裕だ」と思っちゃうし。俺の考えが全員当てはまるとは限らないけど、何歳になっても「あのときこうすればよかった」って、後悔しながら生きていくんだろうね。元気な高齢者が増えたけど。

高田純次がこの世から消えても困らないよね

――確かに後悔することは増えたような気がします。

高田:だよね。ところでさっきの芸能関係の話に戻るけど、高田純次がこの世から消えても困らないよね。あなたもそうでしょう?

――それは……。

高田:何で突っ込んでくれないの!「プンプン」って怒っちゃうよ!

――怒り方がかわいらしいです(笑)。改めてご著書についてもお伺いしたいです。「10冊買って、その本を10人に配り、もらった本人も10冊買って――そうすれば、君もきっと高田純次」というのは、何かの呪文のようでした。それで高田さんのような適当感が身につくと。

高田呪文だと思わせる時点で正解だね。本屋さんで表紙の上に手を置いてくれるだけでもいい。全部読んで書棚に戻すのはダメなんだけど、うちらみたいな職業はアクションしていかないと。あまり変なものを出しても仕方ないけど

――高田さんならトライしそうで怖いです……。今後、ご著書の出版予定は。

高田:今回は去年の話だから、来年の話を予想して書くっていうのはどうだろう? 当てずっぽうだから、ほぼ当たらないと思うけどね。

 何度も笑いを誘われたインタビュー。高田さんは、最高の適当人間でした!

<取材・文/内埜さくら 撮影/星 亘>

【内埜さくら
うちの・さくら。フリーインタビュアー、ライター。2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。趣味はドラマと映画鑑賞、読書

高田純次さん