高級ホテルの特集を目にする機会は多い。そんなところに泊まれるカップルなんて、一握りなのに。業界では有名らしいデザイナーによる誕生秘話から、朝食ビュッフェの献立まで、詳細に知ることができる。

一方でラブホテルは、大半のカップルは足を運んだことがあるだろう。しかし、その実情はあまり知られていない。

筆者(綾部まと)は新卒でメガバンクに入行し、8年間にわたって中部地方と東京の某支社の営業、丸の内本部でのトレーニーを経験した。今回は銀行で法人営業をする中で、ホテル業界を担当してきた経験から知った、ラブホにまつわる裏話をご紹介する。

本記事は筆者の担当した業者に教えてもらった話の一部だが、全てのラブホがそうとは限らないことを頭に置きつつ、楽しみながら読んでいただきたい。

ラブホの裏話①「女同士の利用が多い」

カップルでの利用の印象が強いラブホだが、女性同士の来店も多いという。旅行者、街で遊んで終電を逃した者、キャバクラや風俗の「タクシーで帰ると高くつく」お姉さんなど多岐に渡る。

最近はレディースプランを設けているホテルもある。エステのプランがあるホテルでは、エステだけを目的に女性同士で来店する客もいるらしい。他にもネイルや占いなど、女性を対象としたサービスを取り入れるホテルが増えている。

また、ラブホは友達同士の誕生日パーティーに使われることもある。ホテルの中にはプリンセスのドレスを貸し出して、お姫様気分を味わえるサービスを提供するところもある。

◆国内の旅行客、女性の一人利用も

ラブホが外国人旅行客に利用されていることは浸透しつつあるが、日本人の旅行者にも多く利用されているのだという。日本人旅行客は最初は抵抗があっても、リピート率が高いらしい。理由としては宿泊料金が安いこと、予約の必要がないこと、繁華街の近くにあることが挙げられる。タオルや化粧品などのアメニティが充実しているので、手ぶらで宿泊できるのも嬉しい。

旅行客に限らず、一人で利用する女性も一定数いるとのこと。一人客は特に何もせず、ゆったりホテルステイを楽しむ者が多いと言う。しかし、ラブホの中には「女性同士なら入れるが、女性一人では入れない」というホテルも存在する。女性の一人客は風俗嬢を連想させるため、同じタイミングで宿泊していた客からの印象が悪くなってしまうからとのこと。もし女性一人で行く際は、前もって一人利用が可能か調べておいた方が無難だ。

ラブホの裏話②「スロットを楽しみに来る客もいる」

先程ご紹介したレディースプランや旅行客のような、男女の営みを目的とせずに来店するのは、女性だけではない。スロットが置いてあるラブホでは、スロットを打ちに来る男性もいるのだという。

ラブホの中には、パチンコ屋で現役では稼働していないスロットが置かれているところがある。パチンコ屋の台は新しいものと入れ替わってしまうため、昔の台に強い思い入れがある客は、スロットを楽しみに来店するらしい。

男性がスロットを楽しんでいる間、女性は部屋に残っており、チェックアウトの時間になると降りてきたこともあるとのこと。男性一人での来店は断られることが多いため、女性はスロットのために呼ばれているのだろう。女性も部屋でカラオケをしたり、ルームサービスで好きなものを食べられるので、お互いにWin-Winなのかもしれない。

ラブホの裏話③「初のアメニティはシャワーキャップ

今でこそ女性中心のアメニティだが、当初は男性用しか置かれていなかった。女性のアメニティグッズで最初に受け入れられたのは、シャワーキャップである。1970年代後半から、シャワーキャップ自体は使われていた。これをサービス品としてホテルに持ってきたのは、当時は画期的なアイデアだったらしい。

きっかけは、ホテルの支配人がスナックのママから「シャワーキャップは便利だから、ぜひホテルに置いて欲しい」と頼まれたことだと言われている。ママは美容院に行ってから、お客さんとホテルへ行き、同伴して出勤する。せっかくセットした髪を乱さないようにするために、シャワーキャップはうってつけだったのだ。

スナックだけでなく、キャバクラや風俗でも、同伴日が決められている店もある。「出勤前にホテルに行かないと同伴しない」という客と同伴するために、このシャワーキャップは爆発的にラブホに普及していった。

◆時代と共に変化するラブホテル

時代の変遷とともに、ラブホも変化している。SNSの普及により、情報を集めるのも楽しい。昨今のサウナブームにより、サウナを導入する施設もある。

サウナ好きの筆者はラブホサウナに入りたいあまり、銀行の後輩を誘ったら「貴女があと十年若かったら行ってましたけど」と断られたことがある。仕方なく一人で入ろうとしたところ、受付で断られてしまった。受付女性の顔は曇り越しで確認できなかったが、声色から、憐れむような目つきをしていたことだけは確かだ。

筆者のような残念な例もあるが、行きたいラブホがある方は、ぜひ気軽に足を運んでみて欲しい。本記事の裏話を参考に、楽しい夜を過ごしていただければ幸いだ。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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