映画やドラマの撮影が行われる際に、ロケ地などの案内をし、撮影の調整も行うフィルムコミッション。その活動内容や撮影された場所の魅力を紹介し、関連作品のポスターやパネル、美術小道具といったものが展示される企画展「映画・ドラマの都~東京(関東)ロケツーリズムの祭典!!」が新宿駅西口広場イベントコーナーにて、3月2日(土)~8日(金)に開催される。そこで今回、ブースを出展する区市町村のフィルムコミッションへのアンケート企画を実施。届いたコメントとあわせて、イベントの見どころに迫っていきたい。

【写真を見る】ディープな下町の風情にも触れられる『こんにちは、母さん』が撮られた墨田区

まずは都内の団体から。日野映像支援隊、すみだフィルムコミッション、新宿観光振興協会、台東区フィルム・コミッション、デイ・ナイトロケーションサービスの5団体を紹介したい。

■日野映像支援隊

日野市からの委託を受け、映画、ドラマ、CMなどの撮影に関する総合窓口として、ロケ地情報の提供と案内、エキストラやロケ弁の紹介を担当している日野映像支援隊。活動内容のなかで感じられるおもしろさ、やりがいは?という質問には、「難しい条件の調整など、苦労して撮影に漕ぎつけた作品が、実際に映像として流れるのを目にする時は感無量になります。撮影を受け入れてくださった関係者の方が喜んでくださったり、キャストのファンの方がロケ地巡りで日野市を訪れてくださったり、市内で撮影が行われていることを市民の方が喜んでくださったり、そんな時にやりがいを感じます」との回答があった。

今回のイベントでも、実際にロケ地を案内した作品がパネル展示などで紹介されている。「2017年から毎年発行している『日野市ロケ地マップ』の2023年版表紙の映画『PLAN 75』、TBS『妻、小学生になる。』、2024年版表紙のNetflix御手洗家、炎上する』、フジテレビ『いちばんすきな花』をメインに、日野市で受け入れた映画やドラマの撮影風景写真やロケ地情報などを展示します」。

日野市を訪れるとこれら関連作品のロケ地が迎えてくれる。さらに、ロケ地マップを見て回ることで、新選組に縁のある場所も巡ることができるという。「日野市には土方歳三の菩提寺である高幡不動尊、歳三の墓がある石田寺、新選組のふるさと歴史館、都内で唯一残る江戸時代に建てられた日野宿本陣など様々な新選組関連施設があります」。

■すみだフィルムコミッション

続いては、墨田区での撮影を紹介するすみだフィルムコミッション。「墨田区東京スカイツリーを背景にした風景の撮影が多いですが、区に伝わる伝承(本所七不思議)や、昭和の街並みが残る商店街などに焦点を当てた作品も増えており、観光PRの幅が広がっています」という説明どおり、昭和の懐かしい香りが感じられるのも同地の魅力だ。

展示の見どころについては、「2022年に撮影支援を行い、2023年9月に公開された山田洋次監督の映画『こんにちは、母さん』の撮影舞台を中心に、墨田区がどのような場所で、どんな魅力があるのかお伝えしたいと思います」と回答している。

また、『こんにちは、母さん』に登場したディープな街並みにも触れてほしいとのこと。「墨田区は、“東京スカイツリーがある街”、あるいは“相撲の街、両国”といったイメージを持たれる方が多いと思います。それ以外にも、いまもなお続く花街文化を継承する向島(『こんにちは、母さん』の舞台)や、街のなかに数多くある銭湯、浮世絵師・葛飾北斎が描いた風景など、魅力がたくさんある街です。墨田区を知り、行ってみたいと思うきっかけになったらうれしいです」。

■新宿観光振興協会

ビジネス、レジャー、カルチャーの面でも大勢の人が集まる新宿。そこで撮影支援を行う新宿観光振興協会も、「できあがった作品のなかで新宿の街並みが見られると、普段目にしている風景とはまた違った見え方をしていて新たな発見にもつながりますし、SNSなどで『この場面は新宿の○○だよね』という投稿が盛り上がっているのを見つけるととてもうれしいです」と活動の醍醐味を語る。

「当協会で過去にロケ支援を行った作品の紹介や、新宿の観光情報のご紹介などを行います。新宿は多様な作品で取り上げられる機会がありますので、作品を通じて新宿に興味を持っていただいた方が、実際に新宿を訪れて楽しんでいただけるような情報をお届けできるとうれしいです」ともコメント。今回の展示を見たうえで新宿を訪れると、また違った見方ができるかもしれない。

台東区フィルム・コミッション

「“歴史と文化のまち”台東区の魅力を映画やテレビを通じて多くの方に知ってもらうため、撮影のサポートを行っています」という台東区フィルム・コミッション。「撮影後に、おつなぎしたロケ地の方に『フィルム・コミッションさんがいてくれてわかりやすかった』、『撮影終わってからお客さんが増えた』など、満足のお声をいただきます。制作担当者とシナリオハンティングから進めてきた案件などで、普段対応が難しいロケ地でもフィルム・コミッションが入ったことにより信頼をいただけて実際に撮影へと結びついた時などは充足感を感じます」との言葉から、地域と製作陣の橋渡し役を務める楽しさ、喜びなどが伝わってくる。

今回の展示では、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞にもノミネートされているヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の『PERFECT DAYS』(公開中)が紹介されている。「ヴィム・ヴェンダースの選んだ東京の対比(スカイツリーと下町、二律背反)の美しさをロケ地に実際に訪れて感じてほしい」と、その見どころを語っている。主人公の平山が暮らす街の空気感をぜひ現地で体感してほしい。

■デイ・ナイトロケーションサービス

デイ・ナイト株式会社が昭島市狛江市稲城市武蔵村山市の各自治体と連携し、ロケ誘致、撮影立会い、市内外への展示やSNSでの広報活動、市民エキストラ手配、ロケ弁手配、ロケ地登録などを行っている事業。この事業の多岐にわたる活動のおもしろさ、やりがいについて質問したところ、「各自治体で特色が違い、またロケ地も様々です。公園一つ取ってもすべて雰囲気が違い、台本を片手に皆でコーディネートしています」と回答してくれた。

「自治体と都心のビルなどの撮影実績や、撮影裏話、ここがこんなロケ地に!のような、あっと驚く仕掛けなどを紹介します。また、各自治体の観光マップやロケ地マップを配布予定です!」という今回の見どころ解説に続き、「自治体での活動や取り組み、市×民間、市民参加型ロケなど10年の実績をご覧いただきたいです!」と意気込みも語ってくれた。

昭島市のコーナーでは、レギュラー撮影の場所となった廃校、市内公園(エコパーク)で撮影されたドラマ「なれの果ての僕ら」、フォレスト・イン昭和館で撮影され、市民エキストラも参加した『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人おっさんと住む選択をした』(23)、市民交流センター(※現在取り壊し済み)でレギュラー撮影されたほか、くじら運動公園もロケ地となり、同じく市民エキストラ参加のドラマ「しずかちゃんとパパ」が紹介されている。

このほか、藤塚第三児童公園でレギュラー撮影され、河川敷、和泉多摩川商店街などもロケ地になったドラマ「帰らないおじさん」、老人ホームこまえ荘にて撮影されたドラマ「ラストマン―全盲の捜査官―」の狛江市(「帰らないおじさん」では等身大パネルや美術品などを提供してもらい大々的に宣伝協力を受けた)。さらに、レギュラー撮影された若葉台公園、ほか市内道などがロケ地のドラマ「おっさんずラブ-リターンズ-」の稲城市エリアも。

東京都内に続いて、千葉県栃木県群馬県の活動も押さえておきたい。

千葉県フィルムコミッション

「撮影を受け入れてくれた施設の方が、自分たちの施設が作品のなかに登場することを喜んでくれたり、撮影を受け入れることの効果や可能性を実感してくれたりしている場面に遭遇した時、やりがいを感じる」と活動の意義に言及するのは千葉県フィルムコミッション

東京都心からアクセス抜群な“船橋市”に焦点を当て、市での撮影実績や、とっておきのグルメ、観光情報など、多彩な船橋市の魅力を展示しています」と船橋市が厚く取り上げられているようで、パネル展示には市船吹奏楽部が舞台となった『20歳のソウル』(22)や、ドラマ「風間公親‐教場0‐」など、船橋市で撮影された話題の作品もラインナップされているそう。

続けて、千葉県ならではの特徴にも言及。「東京のお隣、千葉県で行われている撮影は、年間1800件以上。ただ、“千葉”として登場している作品は意外と少ないので、『え?これも千葉で撮影されていたの?』という驚きをお持ち帰りいただきたい。いわゆる、“観光地”ではないからこそ、まだまだ知られていない魅力がいっぱい」。

栃木県フィルムコミッション

「撮影に結びつかないことも多いですが、制作会社の方のイメージと職員の紹介したロケ地が合致した時はとてもやりがいを感じます」と回答してくれたのは、栃木県フィルムコミッション

「県内で撮影され、昨年度公開された映像作品のロケ地のうち、実際に現地を見ることができる場所を紹介したロケ地マップなどを展示します。また、ロケ地巡りの際に一緒に訪れてほしい県内の観光地パンフレットも展示します。」。

上記で言及されたロケ地マップとは、栃木県内で撮影された映画、ドラマの撮影情報等をまとめた「とちぎ県ロケ地マップ」のこと。今回配布される「Vol.12」には、わたらせ渓谷鐵道足尾駅で撮影された二宮和也&北川景子共演の感動作『ラーゲリより愛を込めて』(22)のほか、旧須賀川小学校がロケ地のNHK連続ドラマ小説「ちむどんどん」、栃木県庁本館が登場するNetflixドラマ「First Love 初恋」などが紹介されている。

■ぐんまフィルムコミッション

群馬県がクリエイティブの拠点となることを目指し、県内での映像制作を様々な角度からサポートしています。フィルムコミッション活動をはじめ、クリエイターの育成・集積事業なども行っています」。

このように、映像作品に携わる熱い想いを語ってくれたのはぐんまフィルムコミッション。2024年放送予定のテレビアニメ「菜なれ花なれ」が群馬県を舞台にしているということで、展示では本作をピックアップしている。

群馬県内が舞台であり、今年放送予定の、P.A.WORKS×DMM.comオリジナルテレビアニメーション『菜なれ花なれ』(通称「なれなれ」)の特別展示を行います。『なれなれ』と『群馬県』を知ってもらい、ぜひアニメをご覧になったうえで、舞台である群馬県に遊びに来てください!」。

映画やドラマ、アニメを観て感動するだけでなく、その舞台になった場所を実際に訪れてみるのも作品の楽しみ方の一つ。春の観光シーズンがやってくるタイミングで、大好きな“あの映画のロケ地”を巡ってみてはいかがだろうか?そのためにも、まずは「映画・ドラマの都~東京(関東)ロケツーリズムの祭典!!」に参加して、ロケ地となった場所をチェックしてみてほしい。

構成・文/平尾嘉浩

山田洋次監督作『こんにちは、母さん』などのロケ地案内に尽力したフィルムコミッションの活躍を紹介!/[c]2023「こんにちは、母さん」製作委員会