1月から放送中の連続ドラマ「消せない「私」ー復讐の連鎖ー」(毎週金曜夜0:30-0:59、日本テレビほか)と、「こんなところで裏切り飯」(毎週木曜夜1:04-1:34、中京テレビほか)の2本で連ドラ初主演を飾っている俳優・志田彩良。今年で役者デビュー10年の節目にめざましい活躍を見せる彼女の役者としての魅力にフォーカスする。

【写真】志田彩良が劇中の食事シーンで見せる最高の笑顔にファンも釘付け

■デビュー10周年、志田彩良の2020年以降の活躍を振り返る

ファッション誌「ピチレモン」の専属モデルとして活躍中に短編映画「サルビア」のオーディションで見事主演を射止め、2014年に役者デビューを果たした志田。以降、数多くの映画やドラマに出演してきた彼女だが、ここ5年ほどで一気に注目を浴びている。

2020年には、キャンプを楽しむ女子高生5人の日常を描いた人気コミック「ゆるキャン△」の実写ドラマ(テレビ東京系)に出演。福原遥大原優乃田辺桃子箭内夢菜ら今をときめく若手キャストが名を連ねたこのドラマは原作ファンから好評で、自由人ながら、さりげない気遣いができる斉藤恵那を演じた志田に対しても“ハマり役”との声が挙がった。

翌年放送された日曜劇場ドラゴン桜 シーズン2 」(TBS系)では、真逆とも言える役に挑戦。志田が演じた小杉麻里は偏差値70の秀才で、主人公の桜木建二(阿部寛)率いる“東大専科”の生徒の中でも異彩を放っていた。「ゆるキャン△」での終始ほんわかとした雰囲気はどこへやら。何か心に重たいものを抱えているであろうミステリアスな雰囲気を醸した志田。父親への思いを吐露する場面では感情を爆発させ、視聴者の心を震わせた。

2022年に出演した「君の花になる」(TBS系)では、また印象をガラリと変え、劇中に登場する7人組ボーイズグループ「8LOOM(ブルーム)」のメンバーたちが通う銭湯の看板娘・池岡奈緒役に。メンバーの1人である佐神弾(高橋文哉)に思いを寄せており、ヒロイン・仲町あす花(本田翼)の恋のライバル的な立ち位置でありながら、カラッとした性格が気持ちの良いキャラクターを好演した。

その演技力の高さが広く世に知られるきっかけとなったのが、昨年末に放送された「大奥 Season2」(NHK総合)だ。男女逆転の大奥を描く同作で、志田は幕末を生きた女将軍・徳川家茂を演じた。公武合体政策のために朝廷から降嫁してきた和宮(岸井ゆきの)を気遣う姿は天女のよう。家茂の思いやりと優しさに満ちた普段の顔と、倒幕派との戦を回避するために心血をそそぐ聡明かつ勇ましい将軍としての顔を使い分ける志田の演技に誰もが魅了された。そんな志田が今期、2本の主演ドラマで俳優としてさらなるステップアップを遂げている。

■復讐に命を賭けるヒロイン役で新境地を開拓

「消せない「私」ー復讐の連鎖ー」は、人生を台無しにされたヒロインが、数年の時を経て復讐を遂げる“濃密な”リベンジ・エンターテインメントだ。

志田演じる灰原硝子は平凡な女子高生だったが、偶然知り合ったカリスマ的人気の美容系配信者・徳道仁(本郷奏多)の動画にモデルとして出演するようになり、一躍有名人に。そのことでクラスのカースト上位に君臨する藍里(吉本実憂)の反感を買い、壮絶ないじめに遭う。藍里の仲間だったクラスメイトの武(芳村宗治郎)に暴行され、さらにはその動画が拡散されたことでネットが炎上。その直後に不審火で自宅が燃え、両親は亡くなってしまう。

何もかも失った硝子が10年後、自らの命を絶とうと自室で首をくくるショッキングなシーンから始まった第1話。だが、その瞬間、かつて自分をどん底に落とした同級生3人が楽しげにインタビューを受ける姿がテレビで流れる。硝子の生気のない瞳に復讐の炎が灯ったのを確かに感じる志田の“目”の演技にゾクッとさせられた。

2話以降、硝子は藍里と武、みちる(小日向ゆか)に一人ずつ復讐を遂げていく。彼らに近づくため、ある時は地味な婚活中の女性、またある時は親しみのあるバーの店員と別人になりきる硝子。その度に表情や雰囲気、声色などを様変わりさせる志田の演技の振り幅に改めて驚かされる。

硝子は復讐という狂気に取り憑かれながらも、復讐に協力してくれている徳道の前では時折人間味あふれる一面をのぞかせることも。10年間の役者人生で培ってきたものをフル稼働させ、この役に挑んでいるように見える志田。本作を経て、俳優としてさらに一段階ステップアップしたことは間違いないだろう。

■年齢差50歳のベテラン俳優・伊武雅刀とのコンビネーションに注目!

上記の作品とは対照的に、ハートフルなグルメコメディー「こんなところで裏切り飯」でも志田は俳優歴50年以上のベテラン・伊武雅刀とW主演を務めている。

本作は、全国各地にある地元名物の影に隠れた一見どこでも食べられるような料理だが、期待を超える美味しさの“裏切り飯”がテーマ。全国にホテルを展開する「榊原ホテルグループ」を一代で築いた豪腕社長・榊原総一朗(伊武)と、その秘書である小野寺真理子(志田)が出張先で、素朴な見た目だけど驚くほど美味しい愛媛松山のグラタンや、諏訪湖の近くで茹で野菜と一緒に食べる絶品ジンギスカン、水戸にいながら異国情緒を味わえる本場のガパオライスなどを食す。

二人の顔が本当に美味しそうで、見ているだけでお腹が空いてくるドラマだ。劇中に登場するお店はどれも実在するため、“食べに行きたい”が実現するのもいい。

また本作はただのグルメドラマではなく、人間にもしっかりとフォーカスしているところが魅力。特に、社員から恐れられる強面で堅物な榊原が回を追うごとに人として成長を遂げていく姿が見どころとなっている。

一方、多種多様な“裏切り飯”で榊原のチャーミングな一面を引き出していく真理子もまた無表情で何を考えているかわからないが、真面目すぎる彼女の一挙一動が滑稽に見えてくすりと笑える瞬間が多々あり、志田のコメディエンヌさながらの才能が光る。そんな真理子が毎回、裏切り飯を食した時に「たまらんっちゃけど!」というお決まりのセリフと共に見せるとびっきりの笑顔もこのドラマのハイライトだ。ここでも志田の色んな表情を楽しむことができる。

年齢や性別、立場の違いなど、あらゆる壁を取っ払ってくれる“食”の豊かさを改めて感じる本作。年齢差50歳の志田と伊武のコンビネーションも抜群で、互いの演技に良い意味で影響を及ぼしながら榊原と真理子の唯一無二の関係を構築していっている。ベテランとも対等に渡り合えるレベルに達した志田はここからさらに飛躍していくことだろう。

なお、「消せない「私」―復讐の連鎖―」と「こんなところで裏切り飯」は、TVerHuluでも配信中だ。

■文/苫とり子

ドラマ「こんなところで裏切り飯」より/(C)中京テレビ