YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月16日から2月22日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
【動画はこちら】圧倒的なダンススキルのMAZZEL「Waterfall」、「ハイキュー!!」ファンの目頭を熱くさせたSPYAIR「オレンジ」など
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、「THE FIRST TAKE」にて一発撮りで披露した「Kawasaki Drift」が12位に入ったのをはじめ、
4位には
31位に“伝説のポケモン”と言われているルギアをテーマに制作されたOrangestarの「Encounter」、73位に水の都の護神・ラティアスとラティオスへの思いを詰め込んだ
54位にランクインしたのは、
62位はMARETUの「いのちのおどり」。この曲を聴いた人たちの間で「曲中に何度も出てくる『踊ろう』は性行為を示しているのではないか?」と、歌詞に込めた意味についての考察が盛り上がっている。口ずさみたくなるキャッチーなメロディに対して、ヘビーなワードを合わせているところも面白い。
ヒップホップ、アイドルソング、ボカロ曲と幅広いジャンルの楽曲がランクインした今週は、下記の4曲をピックアップ。
MAZZEL「Waterfall」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場16位
3月20日発売の1stアルバム「Parade」から先行配信された「Waterfall」のMVが16位に登場。重たいビートにアジアンテイストな楽器を重ねたサウンドの上で、メンバー8人のキレのあるラップが炸裂する。
個人的には歌唱力だけでなく、ハイクオリティなダンスパフォーマンスに心を奪われた。振付を担当したのはSHINee「Heart Attack」、ITZY「WANNABE」、NCT 127「Fact Check」などK-POPを中心に数々のヒット曲を手がけているYUMEKI。繊細な首や足の動きまで全員のダンスがそろっているところや、フォメーションが激しく変わるところは見応えがあり、それだけでなくソロでも1人ひとりの見せ場がある。
「Waterfall」の配信記念YouTube Liveで、NAOYAは「ダンスにすごくこだわった」と言っていて、RYUKIは「今までの
SPYAIR「オレンジ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場20位
現在公開中の映画「
「すべり出す汗と 響いた声 叩き合えた肩」は第1期「ハイキュー!!」の初代OPテーマ「イマジネーション」の「滑り出す汗 響きあう声 叩き合う肩」のフレーズを引用しており、「息を切らし ただ走り続け追いかけてたのは胸の熱さだろう」は「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2期OPテーマ「アイム・ア・ビリーバー」の「息を切らしながら走り続けて 追いかける日々と胸の熱さ」とリンクさせている。
ほかにも「ハイキュー!! TO THE TOP」第2クールEDテーマ「One Day」の「確かなことはいつか わかる時が来るから 間違ったっていいさ いま想いを止めないで」を元ネタにした「確かな事だっていつか分かるから 間違っても良いよ怖がらないで」という歌詞も。歴代テーマ曲からそのまま引用したフレーズや対になっている言葉が盛り込まれた歌詞が、楽曲をよりドラマチックにしている。
83位にはTHE FIRST TAKEで披露した一発撮りの「オレンジ」も公開されているので、MVと合わせてチェックいただきたい。
HoneyWorks「同担☆拒否 feat. ちゅーたん(CV:早見沙織)」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場23位
「同担拒否」とは、自分が推している対象を応援するほかのファン(同担)を嫌悪し、交流を拒否すること。この曲はもともと2021年に頒布された同人アルバム「告白実行委員会 -FLYING SONGS- 愛してる」に「同担☆拒否(feat. かぴ)」として収録され、ちゅーたん(CV:
曲中に「リアコ拗らせて」というフレーズがある。リアコとは「リアルに恋してる」の略で、推しへの思いが強いあまり、単なるファンではなく恋人として付き合うことや結婚を望んでいる状態を指す。この曲においても、主人公が男性アイドルを本気で好きになり、リアコになっていく姿や感情が鮮明に描かれている。推しが自分以外の人に向けるファンサ(ファンサービス)に嫉妬し落ち込んで、人気が出てさらに遠い存在になっていくことに、しんどさを覚える場面もリアルだ。
そもそも、人はなぜ気持ちの浮き沈みを繰り返しながらも、推し活を続けるのか? それは推しこそが生きる理由だから。そんな強い思いを歌ったこの曲は、推し活をしたことがある人なら「わかるわかる」と深く頷くこと間違いなしの強烈な共感ソングなのだ。
乃紫「全方向美少女」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場85位
昨年末頃から、10代や20代を中心にTikTokで大ブームとなっているのが「全方向美少女」だ。aespaのカリナ、MISAMOの3人、NiziUのRIKUとRIMA、あの、AKB48の柏木由紀など、日韓のさまざまな著名人がこの曲を使用した動画を投稿して、ネットミーム化した。TikTok内での楽曲総再生回数は14億回を突破し、Billboard Japan TikTok Weekly Chartでは3週連続1位となった。
何がヒットの要因かと言えば、サビの「正面で見ても 横から見ても 下から見てもいい女」という歌詞の、TikTokとの相性のよさだろう。投稿者は自撮りのカメラのアングルや顔の向きを曲に合わせて変えるだけで真似することができるし、その映像は観ている側にとっても病みつきになるようなキャッチーさがある。それに加えて、同じくTikTokを中心に大ヒットした
そんな盛り上がりの中、バレンタインデーの2月14日にMVが公開されると、こちらも再生数が急上昇。MVは
アジア各国のバイラルチャートをこの曲が席巻する中、2月28日には韓国語バージョンもリリースされており、今後ますます海外でのブームも拡大していくことになりそうだ。
コメント