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アフリカ・エコレースを完走し、表彰台を降りる田中愛生さん(写真提供:田中愛生さん)

「本当につらくて、何度もやめようかなと思った時もあったけど、最後まで頑張れたのは、応援している人のことを思って120%以上の力が出たから。応援してくれた人には感謝の気持ちしかない。いろいろな人との出会いがあったから完走できた。それが、私が砂漠で見つけた答えです。

菅原義正さんに会って、『準備としてこんなレースに出ておいた方がいい』とか、『砂丘を走っておいた方がいいよ』とかさまざまな体験談とアドバイスをお聞きできたことが、本番のレースで役に立ち、完走することができました。菅原さんに会えたからこそ、自分も後進に教えたいと思いました。ありがとうございました」

そう語ったのは、アフリカ・エコレースに参加した女性ライダーの田中愛生さん(群馬県館林市出身)だ。

アフリカ・エコレースはダカール・ラリー(通称パリダカ)チャンピオンであり、F1出場歴もあるジャン=ルイ・シュレッサー(仏)らが主催する、かつてのパリダカをオマージュした国際クロスカントリーラリー。

これまでで最も過酷なコースと言われた2024年は、1994年や95年のパリダカに似たルートで開催された。

※今年のダカール・ラリーは今週末に開幕するF1グランプリに参戦中のカルロス・サインツJr.フェラーリ)の父、カルロス・サインツが4度目の優勝を飾った。

12月30日モナコをスタートし、フランスのセット港からアフリカ大陸モロッコのナドールへ移動して、1月2日から競技を開始。西サハラ、モーリタニアを通過し、1月14日にパリダカでおなじみのラック・ローズ海岸(セネガル共和国の首都ダカール)にゴール。全走行距離5,902km、SS(競技ステージ)数12、競技区間走行距離3,951km。

田中さんはクラウドファンディングなども活用しながら体制を整え、2輪マレモトクラスにハスクバーナのバイクで参戦。

日本人としては、4輪部門に参加した「砂漠の鉄人」と称される菅原義正(82歳)/コドライバー松本尚子組(エキップ・スガワラ)とともに、見事完走を果たした。

冒頭の発言は、先だって都内で行われた打ち上げでのもの。以下、参戦報告会でのやりとりを掲載する。

■参戦報告会 LIVE配信での発言

A:田中愛生
H:HARRY(MC)

H:田中さんはハスクバーナの500ccのバイクで、マレモトクラスで参戦されました。完走はされたのですが、順位はついていないということでなぜでしょうか?

A:理由はですね、ラリーの前半に私が毎日道に迷ってしまい、チェックポイントを通らなかったりなど多くペナルティーがついてしまい、ランク外となってしまいました。すごく迷いました。夜中も迷って、迷ってしまいました。

H:ですから今回は、順位はつかなかったけども主催者からは完走ということになったんですね。マレモトクラスで出場されたわけですが、これはどういうクラスなんですか?

A:マレモトクラスはメカニックのサポートがつかないクラスなので、毎日ゴールすると自分自身で車両の整備をするというクラスです。

H:初めての海外ラリーで何をどう準備していいというのはお分かりになっていたんですか?

A:いちばん最初はゼロのゼロで、何の情報もなかったですし、ライディング技術もないですし、車両の整備も知識もまったくゼロですし、コマ図も読めないですし、ゼロのゼロでした。何をどう準備していいか分からなかったです。

H:きつかったこと、大変だったことは?

A:山ほどあるんですけど、夜間のナビゲーションが難しかったことと、いちばんは初めての海外ラリーだったんですけれど、ほぼすべての路面が初めてで未知の世界だったんですね。すごく難しいサラサラでフカフカの砂丘が何度も何度も出てきて、その中で転倒とスタックを繰り返したことが一番キツかったです。

(写真を見ながら)全然休むところがないんですけど、たまたま休むところがあって休んでいるところです。ずーっと延々と続いているような砂丘が何度も何度も出てきて、体力もだんだん奪われていき、最後の方にどんどん転ぶ回数も増えて、幻聴まで最後には聞こえるようになりましたw日没後に走ることもあって、ライトだけで走っていた。障害物があってもいいような(速度を抑えた)走りをしていました。

H:時には転倒もあったってことですよね。オートバイ大きいですよね。

A:車両トラブルとか大きい問題はなかったので、よかったなと思います。なかでも大変だった事のひとつとして、毎日キャンプ地に帰って整備をするという1日のサイクルに慣れるのがとても大変でした。1秒でも早く睡眠にあてたいと思いながらも整備をして、ひどい時は朝の4時に帰った時があって、その時も身支度と次のステージ準備と整備を1時間ぐらいして、1時間仮眠してキャンプ地を出るという時がありました。

H:ライダーの方は、走っている最中のお昼はどうされているんですか?

A:たいていの方は途中で休む時になんらか食べられていましたが、私は全然休まなかったので、食べない日が多かったです。自分の貯蓄を使うだけでw ただモーリタニアのステージで、休憩ポイントで必ず15分休まないといけない場合があったのですが、そういう時は食べたりトイレ行ったりしていました。

終盤体力的に厳しくなる時もありましたが、休憩の時に取る以外でわざわざ止まることはしなかったです。朝と晩にしっかり食べるというのを意識していました。朝晩をしっかり必ず食べる。

H:レース中いちばん嬉しかったことは?

A:つらさの中にも、つらさ以上に嬉しさの方がずっとずっと勝っていて。見たこともない広大な砂漠、走ると本当に大変なんですけど、見ている分にはすごく美しくて、その広大な景色を見ることができたのが嬉しかったです。

H:バイクの参加者では一番小さかったのではないですか?

A:他のライダーの方と身長差がすごかったです。女性の参加者もレース部門に一人いましたけど、私との差はありました。(大きい人が)いっぱいいて、最初はちょっと怖かったです。周りからは何だコイツって思われていたと思います。(菅原さんとナビゲーターの尚子さんの子供だと思われていて)みんなにパパとママはどこだとよく言われました。

H:友達できましたか?

A:たくさんできました、世界中にたくさんできました!

H:13日間6000km走行。単純に1日500km走る。平均何時間ぐらい走っていましたか?

A:12時間ぐらい。7時~19時。21時に過ぎに戻ってきたこともありました。オイル漏れをせっけんで埋めたりしもました。みなさんに事前に教えていただいた方法で、(次のビバークまで)行けました。

本当転ぶとバイクが重くて、フロント燃料が18Lもあるんで。重いです。経験者の方に「1転倒は100km走行するのと同じだと思え」と言われたんですけど、本当に100km以上に相当するんですよ。1回バイクを起こすのにダート走行100km以上の体力を要します。1日何回もそれをやるので、(倍以上も走ってる)気持ちになるんです。

H:今後はどうされますか?

A:私は今回ずっと夢であったラリーに参加することができて、それには本当に多くの方のご協力と応援があったからこの夢を実現することができました。なので、すごく感謝しています。ありがとうございます。

私が本当にゼロのゼロからスタートした人間なので、自分はまだ1回しか海外ラリー経験がないんですけど、すべてのステップをこれまで踏んできたので、もし今後自分の様にゼロベースからでもラリーに出たいという方がいたら、その人を応援できるような存在になりたいなと思っています。

H:応援してくれた方へのお礼とメッセージをどうぞ。

A:本当に私はまったく経験もない中多くの方に応援ご協力をいただいて、夢をかなえることができました。クラウドファンディングもそうですし、クラウドファンディング以外の応援者の方もそうですし、チャレンジすることを許してくださった皆さんに本当に感謝しています。どうもありがとうございます。

私が体感したことをすべてお伝えすることは、今回はできなかったんですが、これからもいろいろな報告会であったりとか、このあと自分がスタートからゴールまで走った映像がオフィシャルから届いたので、それもアップしようと思うので。そちらでも自分が感じたことやいろいろなものが伝わるのかなと思うので、そちらも見ていただけると嬉しいです。