永野芽郁主演のドラマ「君が心をくれたから」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系)。本作は、主人公・逢原雨(永野)がかつて心を通わせた男性・朝野太陽(山田裕貴)のために自分の“心”を差し出す宿命を背負うことから始まる、“過酷な奇跡”が引き起こすファンタジーラブストーリー。このたび、WEBザテレビジョンでは、本作のプロデューサー・草ヶ谷大輔氏にインタビューを実施。本作を企画し制作していく流れや、永野や山田の撮影の様子、後半の見どころなどについて話を聞いた。

【写真】五感を失う宿命を背負った雨(永野芽郁)

■「想像以上に応援する声が多かった」視聴者からの反響

――既に第8話まで放送されていますが、作品の反響をどのように感じていますか。

放送を見て涙してくださる視聴者の皆様が多く、それと同時に、過酷な宿命を背負った雨と太陽に対する応援の声や、幸せになってほしいという声が非常に多い印象を受けました。視聴者も雨ちゃんに感情移入して涙したり笑ったりする方が多いのかなと思っていましたが、視聴者の方がこの過酷な宿命を深く重く受け止めてくれているからなのか、我々の想像以上に応援する声が多かったのは少し意外でもありました。

今回、長崎での撮影もさせていただいて、エキストラなどで地元の方々に集まっていただき、長崎の反響の大きさも感じています。長崎の方からのお手紙が会社に届くこともありましたし、長崎の洋菓子屋さんがケーキをスタジオに差し入れてくれることもありました。長崎の皆さんは本当に優しい方が多くて協力的で、長崎の方々に受け入れてもらえているのを直接感じられたのもうれしい経験でした。

■企画の始まりは「永野芽郁さんでラブストーリーをやりたい」

――本作を企画した経緯について教えてください。

永野芽郁さんでラブストーリーをやりたいというところが始まりでした。ラブストーリーといってもいろんな形があると思いますが、僕自身がミステリーやサスペンスというジャンルのドラマを作ることが多かったので、僕らしいラブストーリーを作りたいという思いになりました。その中に、ファンタジーもあって。日本だとファンタジーのラブストーリーの数も多くないから、チャレンジする価値があるんじゃないかと思いました。その中で、ファンタジーラブストーリーの名手で、ずっとご一緒したかった宇山佳佑さんに依頼して、宇山佳佑×ファンタジーラブストーリーという座組が出来上がって進んでいきました。宇山さんは「桜のような僕の恋人」や「今夜、ロマンス劇場で」などの小説も書かれていますが、元々は脚本も書かれていたのでドラマでご一緒したかったです。

――スタートは、永野芽郁さんが主演というところからだったんですね。

はい。朝ドラを経て、誰もが知ってる国民的な若手の女優さんであり、お芝居の幅がすごく広がってきているところに魅力を感じました。永野さん自身、ピュアな一直線のラブストーリーをあまりやっていないというのもあったので、永野さんでラブストーリーをしたいと思いました。

――実際に永野さんの演技をご覧になっていかがですか?

この作品の企画が出来上がって、第1~3話までの脚本を持って、一回打ち合わせをさせていただいたことがあったのですが、その時に永野さんは「自分の全てを懸けて挑みたい役」と言ってくださったんです。今回の役が、五感を失うという非常に難しい役であって、誰も経験したことがないものをドラマの中で体現していかないといけない。それに対して、彼女は自分の中でどう表現すればいいかということを日々模索されています。雨ちゃんとしてせりふを喋るから、自然と涙が溢れてきちゃうみたいなことが多いんですよね。それは、全てを懸けて挑む彼女の姿勢の表れのように感じています。

山田裕貴の印象は「太陽とすごく近い」

――永野さんの相手役として山田裕貴さんをキャスティングした理由についても教えてください。

この物語の太陽くんは、自己肯定感が低い雨ちゃんの希望となっていく存在で、まさに太陽のように照らしてくれる人で、本当に純粋な心の持ち主だと思うんです。僕が山田さんに抱く印象っていうのが、映像作品やバラエティー番組を見ていても、ものすごく熱い方で、本当に全力投球でやられている印象で、それが太陽くんとすごく近いと感じたんです。だからこの太陽役には山田裕貴くんしかいないと思いオファーしました。

――第1話で雨ちゃんが心を差し出すことを決めますが、太陽くんの存在がどれだけ雨ちゃんにとって大事で、心を差し出したい存在かというのを1話の中で表現しなきゃいけないというのも難しいところだったかと思います。実際に第1話が映像になってみていかがでしたか。

少なくとも僕が見た限りは、雨ちゃんと太陽くんが、お互いに心の支えになっている感じを脚本以上に膨らませてお芝居してくれたと思います。もしかすると強引だったかなって思うような脚本の部分も、彼らが演じることによって、それが自然とお互いの心に届くような会話になっていますし、行間を埋めてくれるようなお芝居をしてくださっているから、この二人だからこそ、ちゃんと「心を差し出す」ということに対して、納得のいく雨と太陽という関係性ができたのかなと思いますし、本当に感謝をしています。

■失う五感は「宇山さんの中で計算された順番」

――雨ちゃんは五感を味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚の順で失っていきますが、失う五感の順番はどのように決められたのですか。

脚本の宇山さんに決めていただきました。最初に、宇山さんが第1話から最終話までの全話のプロットを100ページぐらいに渡って作ってくれて。そこに五感を失う順番も、その通りに書いてあって、僕もそれを読んで「素晴らしい。これで行きましょう」と納得して進めることになりました。全ては宇山さんの中で計算された順番になっています。今作の脚本づくりに関しては、この宇山さんのプロットに対して、我々が意見を重ねて、あとはそれを一つ一つ、台本に落としこんでいくという作業だったので、宇山さんが作ってくれたベースの世界を我々が具現化していくような作業に近かったかもしれないですね。

――長崎県を舞台にするというところも、最初の段階で決まっていたことですか?

最初から決まっていたことではなかったです。ファンタジーは映像の世界観が非常に大事なので、ファンタジーという要素が浮かずに馴染む異国情緒が必要だと考えた時に、長崎はどうだろうと宇山さんと話しました。長崎のローカルの物語とか、長崎の人たちを描こうということよりも、ファンタジーという要素を長崎の土地をお借りして、補っていってもらいたいと思ったので、あえて長崎の方言の要素は入れずに標準語で物語を作っています。

■千秋の正体について「早く言いたい気持ちでした(笑)」

――後半に行くにつれて、つらいシーンが増えてくると思いますが、撮影現場で永野さん、山田さんはどういう様子で撮影に臨まれているのですか。

台本を読むだけでも、心が痛くなるような切ないシーンが多いので、当然それを演じている人はそれ以上にエネルギーを使うし疲れてしまうと思いますが、そんな中でも、毎朝元気にスタッフみんなに話しかけてくれています。お芝居で涙を流してくださりカットがかかった後も、「切ない」って言って涙が止まらなかったりする場面もあり、本当にエネルギーを使う現場だとは思うんですけど、雨と太陽の人生に永野さんも山田さんも寄り添って、走り続けてくれている印象です。

――2月26日に放送された第8話の最後では、松本若菜さん演じる案内人の千秋が、太陽のお母さんであることが明らかになりましたね。

きっと「何で案内人が2人もいるんだ」とか「2人いる必要はあるのか」という声もあったと思うんですけど、密かに「いやいや、理由があるんだよ」と早く言いたい気持ちでした(笑)。第8話が放送されて、ようやくそれを言えることは、我々としては一個肩の荷が降りたような気持ちです。もちろん松本若菜さんも最初から知っていたので、今振り返って第1話から見直してもらうと、「だからこの時こういう表情をしてたんだ」とか「こういうこと言っていたのか」とか、新たな発見として見つけられると思います。

――最後に後半の見どころをお願いします。

太陽が作った花火を雨に見せるという「十年後の約束」に向かって、雨と太陽が動き出します。そして、いま雨ちゃんが触覚まで失っている状況で、残りが視覚と聴覚になります。それがこの二人の人生にとってどういうふうに影響していくのか、二人の関係性がどう変わっていくのか。二人の恋や人間関係にも注目していただきたいですし、最後にどんなハッピーエンドが待っているのかも楽しみにしていただければと思います。

◆取材・文=水沢あすみ

「君が心をくれたから」場面写真/(C)フジテレビ