元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。

◆元セクシー女優キャバクラ嬢に転身したワケ

 セクシー女優セカンドキャリアとして、もっとも多いのが水商売。女優から夜のお店の女の子へ……といった流れは王道中の王道。今も昔も変わらない文化の一つ(?)といえよう。

 女優は引退後、クラブ、キャバクラ、ガールズバー、コンカフェなどの“飲み屋”へ移るパターンもそこそこ多い。今回は繁華街のキャバクラ嬢になった元女優のかすみさん(仮名)にジョブチェンジの裏側やぶっちゃけ話を伺った。

◆女優として失速した頃に新型コロナが襲来

 かすみさんは単体女優としてデビューし、とある大手メーカーの専属を数年務めた人物である。のちに企画単体女優となり、数百本にも及ぶ作品へと出演。そんな売れっ子が引退を意識したのは、業界歴が6年目に差し掛かる頃だった。

「ずっと順調に仕事をこなしていましたが、年々仕事が減ってきたな……という感じがあって。企画女優に降りたての時は単体作品しか出ていなかったけど、だんだん芸名のクレジットがないものも増え始めました。ギャラの安い案件も断らずに引き受けましたが、最初に比べて勢いが落ちていたのは否めなかったです」

 元単体の肩書きがあっても、売れ行きが悪ければオファーがあっという間に減る。ハイペースで現場をこなすかすみさんも徐々に伸び悩み、失速しかけた頃に新型コロナが襲来。思うように身動きが取れなくなった。

「どの女優さんも現場の本数が減り、今まで回って(※)いた子たちも仕事に困ったのが2020年〜です。ひたすら現状が回復するのを待ちましたが、落ち着いても現場数が完全に復活することはなかったので……引退を決意しました」

 なぜキャバクラの仕事を選んだかというと「女優になる前は夜職だったし、お昼の仕事の経験がなかったから」とのこと。昼職への道も考えなかったわけではないが、引退時の年齢は30歳。今から昼の世界へ飛び込む勇気が出なかったと語る。

(※)業界ではオファーが多くバリバリ現場をこなす女優たちを「回っている」と表現する。

◆女優時代の月収と今の給料、どっちが上?

 かすみさんは現在週5〜6日出勤し、お店にいるのは夜21〜22時から深夜1時まで。しかし、同伴やアフターを含めると前後にプラス1〜4時間程度となるため、稼働時間は日によって変動する。

 1週間単位で考えると労働量は結構多いが、女優時代の月収と現在のお給料はどちらが高いのだろうか?

「うーん、女優時代も専属を離れたら完全歩合制になるので波はありましたけど……。でも自分の全盛期に比べると今のお給料の方が若干低いかな。専属時代は月の契約金が80万円でしたが、企画になった後は100万円超えも普通でしたから」

 キャバ嬢は座ってお酒を飲んでいるだけでお金が稼げると思っている人もいるだろうが、高い時給の裏にはワナがある。売り上げ・指名・イベントノルマが課せられていたり、遅刻や欠勤による罰金、そして「厚生費」という名目で給料から約10~20%が天引きされるため、爆発的な売り上げがなければ手元に残る金額はあまり多くない。

 現在の平均月収は70万円前後とのこと。筆者が「ぶっちゃけ、この金額で満足していますか?」と尋ねると「うーん、ちょっと微妙。本当はもっとほしい(笑)」と彼女は苦笑いしながら話した。

◆「元女優」、キャバクラでバレてもダメージは少ないが……

 単体はメーカーの看板であるため、メディアの露出制限をしなければ大々的に宣伝されるし、ユーザーの注目度も高い。知名度を上げるにはうってつけな専属女優なものの、その分“身バレ”のリスクは高い。

「専属を張ってましたし、SNSもバリバリやってました。だから私の顔を見たら『あれっ?』となる人はいるでしょうね。現役時代、一瞬だけ麻布のラウンジでバイトしていたんですがお客さんに気づかれちゃいました。でも、だからって大きなダメージはなかったですよ。一緒に働く女の子もセクシー女優の子がいても差別するとかはあまりないと思います」

 元女優である経歴を隠したがる女性も多いが、今の時代はセクシー女優に対する見方がずいぶんと変わっている。たとえビデオに出演していた件が知られても、お店に居場所がなくなるとか、クビになるとか、そういったことは起きないらしい。

◆「元セクシー女優」を隠したい理由

 ただ「元女優」というと、別の問題が発生するデメリットが……。

「やっぱり、枕営業してくれるんじゃないか? とお客さんに期待されがちですね。あとは簡単に連れ出せそう、とか……。体の関係をすぐ持てると思われたら困るから、私も顔バレしてない限りは過去を絶対に明かしません。キャバクラで元女優の肩書きは、そんなに有利な方向に働かない気がするので」

◆キャバ嬢も女優も楽じゃない仕事

 セクシー女優を引退し、キャバクラ一本となったかすみさん。今の生活や自分自身の在り方に満足しているかを尋ねると、彼女は自分なりの考えを語ってくれた。

「月収は全体的に下がっちゃったし、キャバはお酒を飲むだけではなくLINEや電話などの“時間外営業”も多いので大変です。ドレスやヘアメイクの経費もかかるし……思ったより稼げませんよ。全然ラクな仕事じゃないです!

でも、それは女優も同じことですよね。人前に出る仕事だから気を遣う部分はまったく変わりません。今はSNSをやらないとセクシー女優も生き残れないから、こっちもこっちで大変。

ただ私は今の生活も嫌いじゃありません。頑張れば飲み屋は稼ぎが青天井だし、何だかんだ忙しくしているのが好きなんです。自分でお客さんに営業をかけるから全ての責任は自分だし……。女優時代はマネージャーに営業もプロデュースもお任せするでしょ? それでイライラすることもあったから、今は全て自己責任っていうのも面白いポイントだと思ってますね。

セクシー業界に未練がないわけではないです。だってやり切って辞めたんじゃなくて、致し方なく身を引いたので。華々しく引退したかったけどそれが叶わなかった分、今のフィールドで精一杯頑張ろうと思います」

 月収が減っても、引退を余儀なくされた過去があっても、今の生活への不満が少ないのは良いことだ。もしかすると“大好き”や“大嫌い”よりも、“嫌いじゃない”くらいの方が程よく肩の力が抜け、その仕事を長く続けられるのかもしれない。

 物事を全力で頑張り、成果を出すのは理想的だけれども、全員が全員思う通りにいくとは限らない。早めに方向性を変え、今置かれた状況で戦う覚悟を決めたかすみさんは、とても力強い女性だった。

取材・文/たかなし亜妖

【たかなし亜妖】
セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。

―[元セクシー女優のよもやま話]―


元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」