【家電コンサルのお得な話・171カスタマーハラスメント、通称「カスハラ」は消費者がサービス提供者に対して行う不当な要求や精神的圧力、暴言などを指す。この問題は特に都市部の企業などにとって深刻な悩みの種となっている。こうした状況を受けて2月20日小池百合子東京都知事はカスハラ対策条例の制定を検討していることを明らかにした。

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●罰則に頼らず社会全体でカスハラを許さない



 小池都知事は「カスタマーハラスメントが都内企業においても深刻化している」ことを指摘し、罰則を設けずにカスハラをなくすべきだという考えの啓発と浸透を目指す方針を示した。このアプローチは、罰則に頼ることなく社会全体でカスハラを許さない文化を築くことを意図している。

 東京都の第3回カスタマーハラスメント防止対策検討部会(2月6日)では、消費者への啓発を都の重要な役割として、企業の規模や業種を問わず「カスハラはよくないという制限が必要」との意見も出されている。

 また、ガイドラインを通じてカスハラがどの犯罪に該当するかを明確に示すことや、中小事業者に負担のかかる録音機能や防犯カメラ設置などへの支援も求められている。

 これらの提案は、カスハラ問題への実践的なアプローチと、社会全体での意識改革の重要性を強調している。この取り組みが成功すれば、カスハラが「あってはならない」という共通の認識が社会に根付くことになる。


●「お客様は神様」の古い感覚に縛られない



 また、カスハラに対して企業側も意識を変える必要がある。経営層や幹部職がカスハラに対して真摯に取り組み、現場の実態を深く理解することは、企業文化の根本からの変革を促し、働く人々の尊厳を守ることに直結する。

 従業員に「毅然とした態度を取れば評価が下がる」という恐れを抱かせないためには、「お客様は神様」という古い感覚に縛られず、ビジネスの基本である「企業と顧客は対等な関係」という企業文化の再構築が求められている。

 この変化は、経営層の一層の現場理解と、カスハラに対する適切な対応策の実施を通じて、企業全体のサービス品質の向上、そして社会全体へのポジティブな影響をもたらすだろう。

 東京都が全国で初めてカスハラ対策条例を制定することにより、他の道府県への波及効果が期待される。このような取り組みが企業の意識改革を促し、従業員の心理的・精神的な負担を減らし、安心して働ける環境が実現されることを願っている。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

■Profile

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。

東京都は2月6日、「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会(第3回)」を開催した