「大家業」と聞くと、不労所得で高収入を得られるイメージを持つ人は多いでしょう。退職後の資産形成として、専業大家を目指している人もいるかも知れません。しかし実際は、羨ましがられるような生活からは程遠いようで……。本記事では、恵比寿吉之助氏の著書『50代から年収100万円アップできる老後資産構築法』(ごきげんビジネス出版)から、専業大家の実態について解説します。

専業大家の悲しい実態

不動産投資の世界では、たくさん物件を保有する専業大家に憧れる方もいるでしょう。ここからは、専業大家になった後はどのような暮らしが待っているのか、「専業大家の実態」をリアルに語ります。

専業大家のメリットは、家賃収入だけで生活できることです。労働収入が不労所得に変わるので、会社に行く必要はありません。毎日が日曜日。自由な時間がたっぷり。何もしなくてもお金が入ってきます。

「うらやましい!」と思いましたか? でも、実際はそうではないのです。例をあげます。

・毎日ヒマで死にそう。遊ぶのも飽きた。ヒマつぶしのような人生。 ・自分はヒマだけど、周りは忙しいので遊び相手がいない。社会との関わりがなく常に孤独。心を病む。 ・多額の借金と家賃収入だけで生活するプレッシャーで、ケチケチ節約生活。 ・お金が最大の関心事。お金の増減に一喜一憂する。 ・リフォーム屋にお金を払うのがもったいないので、DIY(自ら労働)をする。 ・お金持ちになったのに、怖くてお金が使えない。 ・「贅沢は敵」と思っているので、他人の贅沢が許せない。 ・ヒマなので、SNSで愚痴や文句の投稿を連発。人間が腐っていく。 ・大家以外の仕事をしたくなっても、引きこもり生活が長すぎて、世の中に順応できない。

あなたは、このような人になりたいですか? ですが、これが専業大家の現実なのです。

不幸な専業大家が続出する理由

当たり前ですが、家賃収入は満室時がMAX。そこから減ることはあっても、決して増えはしません。退去になれば収入が減り、修繕があればお金が出ていきます。そこそこ家賃収入があっても、突然の退去や修繕を恐れるので、お金が使えなくなるでしょう。

家賃収入の額面は大きいのに、生活レベルは会社員以下。はた目には裕福そうに見えるので、うらやましがられますが、多額の借金で家計は火の車のこともあります。

そして何より収入源が1つしかないので、お金の不安は消えることがありません。物件を売れば、借金返済のプレッシャーはなくなりますが、物件を売ると収入が激減しますので、専業大家は物件を売ることに恐怖を感じます。

会社員のときは会社に縛られていたのが、専業大家になったら今度は、「物件や借金に縛られる状態」になるということです。それって自由ではないですよね。

物件の修繕をDIYしている人も多いですが、自らせっせと労働しているので、不労所得ではないです。これでは会社員がリフォーム屋に変わっただけですね。

専業大家はファストフードのバイト面接にも落ちるような生活

お金と時間がたくさんあるのですから、自由になれそうなものですが、お金の不安からお金は使いたくても使えない。時間だけが余る。

でも、誰も相手をしてくれないから、家でひとりゲーム三昧の日々。ファストフードのアルバイトの面接に行って落ちた、という話も聞いたことがあります。

専業大家の暮らしは、「時間もお金もたっぷりあって遊んで暮らせる」イメージがあるかもしれませんが、社会に適応できず、誰からも尊敬されないどころか、「あんな大人になりたくない」という反面教師になりかねません。

お金と自由時間だけにフォーカスすると、方向性を間違えます。

不動産投資は「手段」にすぎません。方向性が変われば、取るべき手段が変わります。大事なのは、「どんな生き方をしたいか」です。

まず、自分にとって理想のライフスタイルをイメージし、そのためにお金はいくら必要なのか、時間はどのように使うのかを明確にしてから不動産投資をはじめましょう。

恵比寿 吉之助

中高年の資産所得倍増アドバイザー

※本記事は『50代から年収100万円アップできる老後資産構築法』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。