Instagramやライブドアブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」で、実話をもとにしたエッセイ漫画を描く漫画家のゆっぺさん。ブログは2021年には月間3000万PVを記録し「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」最優秀グランプリを受賞。2021年12月から執筆してきた「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」では、戦前から生きる“祖母・キヨさん”の幼少期からの実体験を漫画化し、コメント欄を解放した最終話には500件以上の熱い応援コメントが寄せられた。

【漫画】本編を読む(318枚)

92歳になる現在のキヨさんはとても活発かつ、やさしい人で、過去の出来事を感じさせることはまったくなかったという。今回は話を聞き続けてきた孫のゆっぺさんを通して、キヨさんの思いを探る。

■キヨさんを捨てた実母と、キヨさんをいじめ抜いた養母への思い

――漫画では養母の意地悪が際立ちますが、タイトルにある通り、実母に捨てられているんですよね。キヨさんは実母について、どうお話されていたのですか?

本当の母親に対しても、“自分を捨てた人”という気持ちがあったので、最初は恨みの気持ちが強かったそうです。しかし、数年前に実母は本当は子どもを手放したくなかったという話が遠い親戚から伝わってきたそうで、そこから恨んでいた気持ちが薄まったと言っていました。ただ、それまではずっと恨んでいたそうので、それはそれでつらかったのではないかと思います。

――ちなみに養母に対しては、どんな感情を持っていたのでしょうか?

あそこまで意地の悪い人には会ったことがない」と言っていましたが、それでも育ててもらい、ご飯を食べさせてもらったことは感謝しているそうです。「ひどい仕打ちを受けたけど、ご飯を食べさせてもらえたことはありがたかった」と。でも、本当に意地の悪い人だったみたいで、まだ私に伝えていない意地悪がいっぱいあるみたいです。

■やっと養母の家から離れられたのに戻った理由とは

――漫画でも描かれていますが、19歳になったキヨさんが都会の工場で働くことになり、ずっと出たかった養母の家からようやく脱出します。しかし、義理のお姉さんが養母から意地悪されていることを知って戻ったことが、とても印象的だったのですが、ご本人はどう話されていたのですか?

それは私も同じように思ったので、「せっかく家から出られたのにどうして戻ったの?」と聞いたら、「自分が家を出ると、今度は義理の姉(養母の実の娘)が虐待されてしまう。お姉さん1人に負担させるのは、かわいそう」と思ったそうなのです。何かあるとかばってくれていたお姉さんのことは大好きだったそうなので、つらい思いをさせたくないと思ったそうです。

――キヨさんは養母に虐げられてきたのに、決して心が濁らなかったんですね?

そうなんです!祖母は本当にやさしい人で、“自分がされたことを絶対に人にはしない!”と誓いながら生きてきたみたいです。普段から自分のことよりも他人のことが第一なので、そこは見習わないと!と、小さい頃から思っていました。

■一番印象に残っているのは大好きなお兄さんとのエピソード

――養母の行いは理解不能のことが多いですが、なかでも生理になったことを義姉の夫であるお兄さんの前で茶化したことが理解できませんでした。著者のゆっぺさんご自身の中で、最も印象に残っているエピソードは何ですか?

確かに同じ女性として、お兄さんの前で生理になったことを茶化される話も記憶に残りました。恥をかかせていて、本当にひどいですよね。私が一番印象に残ったのは、その大好きなお兄さんに嘘をつかねばならなかったシーンです。学校のノートを買ってもらうことができなかったので“書いては消す”を繰り返していたのですが、そのことを正直に告白できず、お兄さんに誤解されたままになってしまった。好きな人にさえ本当のことが言えないというのは、とてもつらいことだと思いました。

戦争をきっかけに義理の姉一家が一緒に住むようになっても、養母の意地悪は終わらなかった/(C)ゆっぺ/KADOKAWA